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軌跡  作者: alice
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第1章

振り返ってみるとそれは本当に偶然で…必然で…キセキのようだった…私は父がイギリス人母が東洋人と言うこのご時勢では珍しいハーフ…父はロンドンではちょっと有名な貿易商を営んでいて一代限りの準男爵、母と私達姉妹は上流お貴族様ではないが裕福な家庭に属しておりそこそこ平和で幸せな日々を送っていた。


 私は当時17歳…1年前に社交界にデビューしたが今だ貰い手は決まっていなかった…両親や周りは心配していたと思う…私は気ままな独身としての人生を楽しんでいた。6匹の猫1匹の犬そして父が世界中から集めてくれる本に囲まれいつか父と一緒に船に乗り世界中を廻って見たいと夢を見ていた。


 そんな私、セリーナ・サクラ・ヴィォレットのお話…物語の始まりは4年前私が17の誕生日を迎える1ヶ月前1月の雪の降らない刺すように冷たい空気に包まれた日の朝から始まる…








 眩しい朝日にカーテンの隙間から照らされ目を細めながら私は目が覚めた。冬は大好き。寒い中暖かく過ごす幸せ…でも寒さにめっきり弱い私はベットの中で寝返りをうち朝日から顔を背けるともう少し暖かなベットの中で過ごせないかとウトウトと考えていた。


 「お嬢様お目覚めですか?本日は珍しいいいお天気ですよ」鼻歌交じりに侍女のマージが起こしに来た。


 「う~んあと少しだけ~」暖かい布団の中に身を沈め私はマージの起きなさい攻撃から身を守ろうと布団を強く握り締めた。


 「なにおっしゃってるんですか!もう皆様起きて身支度をされてらっしゃいますよ!セリーナ様はほっておくと何時までも寝ていらっしゃるんですからね!!」


 言うとマージはいつもの様にセリーナの布団を剥ごうと力いっぱい引っ張った。セリーナも負けじと引っ張ろうと思ったがどうせ抗ったところでまた眠りの世界に戻れるはずも無く観念してベットから這い出てきた。


 「まったく、いつもいつも往生際が悪いですよ!お湯を入れたポットを用意してありますから顔を洗って来て下さい。お召替えを用意しておきますから。」マージはぷりぷりと指図をすると侍女とは思えない手荒さでベットを整えて隣の部屋へと行ってしまった…


 欠伸を手で隠しながらセリーナは寒いと言って身震いすると温かいお湯を使って洗顔を済ませ暖かい部屋へと急いで戻った…






 朝食の席に下りていくと珍しく家族全員がダイニングに揃っていた。3歳年上の姉ビビアンは3年前に恋愛結婚をしている。旦那様のオルソンはとても優しく我儘で気性の激しい姉をとても大切にしてくれている。2年前の秋に長男を授かっておりその子リンディーは今や我が家のアイドル的存在だ。


 オルソンは国の役職に就いており裕福とは言えないが我が家の自由な気質の中姉の恋愛結婚は許された。私も当初は反対したが可愛いリンディーと一緒にいるとなんて浅はかだったのかと後悔することも多い。


 夫婦はロンドン郊外に住んでおり会えるのは月に1,2回程度だ。私としてはもっとリンディーに会いたいのだが馬車で片道2時間の距離を考えると我儘は言えない。




 「あらセリーナおはよう。今日は早いのね?雨が降らなきゃいいけど」ニヤリと貴婦人らしからぬ笑みを向けながらビビアンが膝にリンディーを抱きながら挨拶をしてくる。


 「おはようお姉さま、寒かったからもう少しベットに居たかったけれどこんなサプライズがあるなら起きて来て正解だったわ。」セリーナは嬉しそうにリンディーを自分の下に呼び抱きしめて頬擦りした。


 「おはようセリー、君が喜ぶだろうと思って内緒で馬車を飛ばしてきたんだよ。」オルソンは2人の様子を嬉しそうに眺めている。


 「おはようお義兄様朝からとても幸せな気分よ、」セリーナは嬉しそうに義理の兄に挨拶した。セリーナは子供の頃から兄が欲しかったので義理の兄の事は本当の兄の様に慕っている。


 セリーナはリンディーと遊びながらチラリと父を見た、いつもは仕事に忙しく家を開けがちなのに今日は本当に珍しく家族が揃っている。


 「さあ、セリーが起きて来たから朝食にしましょ、」母の雪が嬉しそうに立ち上がった。


 母の雪は東洋人だ。遠い異国のお嬢様だった。父と同じ貿易商の親を持ち異国の地でも有数の名家の娘だったと言う。背は低く髪も瞳も真っ黒で肌は名前の通り真っ白で此方ではエキゾチックビューティーと言われている。


 私の髪は母にそっくりで真っ黒。しかし瞳の色は父に似て明るいグリーンだ。子供の頃に金髪に憧れて母に何度と無く何故自分の髪はこんなに黒いのかと愚図った事がある…それだけ私の髪の色は此方では珍しい色とされている。





 久しぶりに家族揃った朝食はとても楽しくリンディーが何を食べれる様になったのを見届けるだけで楽しい。可愛い甥っ子の口の周りに付いた汚れを拭き取っているとリンディーの乳母が後ろでオロオロしているのが見えた。


 「セリー…そんなに子供が好きなら貴女も早くお嫁に行って自分の子供の世話を焼きなさい、乳母が困ってるわ…自分の子供ならリンディーなんて目に入らないほど可愛く感じるものよ。」ビビアンが困ったようにセリーナを咎める。


 「結婚なんて…まだまだ考えていないわ。子供は欲しいけど今は可愛いリンディーのお口の周りを拭いてあげる幸せをかみ締めているの。」


 娘の結婚願望の薄さに母雪はそっと溜息を付き夫を見てみると夫は何も気にならないのか朝刊を広げて目の前のやり取りには気付く様子も無い。


 そんな様子に気付いたビビアンが母の方を見て困ったように首を傾げ2人だけで深く溜息を付きリンディーの食事の様子を微笑んで見つめているセリーナを見やった。





 朝食後男達は新聞片手に話し込んでしまったので今日は天気も良いしリンディーを乳母と侍女達に任せ女達は社交場に出かけることにした。


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