貴女が泣いている
掲載日:2026/08/03
貴女が泣いている。私のことが怖いと言って。
おそらく、貴女が泣き顔を見せるなんてことは、そう滅多にあることではないだろう。貴女は強い。少なくとも私はそう思っている。だから貴女の泣き顔が見たかった。
そのために私は、あらゆる手段を使った。学校で、インターネットで、貴女を孤立させた。貴女は貴女の家族にも相談したみたいだけれど、結果はそんなことで悩んでいるのかと笑われただけ。私は貴女の家族がそう判断するギリギリのラインを狙ったのだから当たり前だ。
そして今、貴女は私の前で泣いている。そう簡単には見られない光景に、私は満足感を得て無意識的に笑みを浮かべた。ありきたりな表現だけど、貴重なものを見せてもらって嬉しくて、背筋にゾクゾクする感覚がのぼってくる。
きっと、私にとってこんなに幸福な光景はもう一生見られないに違いない。私は生きながらにして天国を知ってしまった。
この後どうなるのか、私はこれから何を糧にして生きていけばいいのか。頂点を知ってしまった人生で。
未来のことは何も浮かびはしないけれど、ただ今は私は貴女を見つめ、貴女の美しくはなく、それでも私にとっての最上である泣き顔をただ見ていた。




