1:幼馴染みから恋人(仮)に
私達がこんな関係になったは1ヶ月前。本当に些細なきっかけだった。
私と颯人は元々幼馴染み。小学生の頃からずっと一緒、就職してからは時々飲みに行く程だ。私が彼氏に振られる度、颯人は必ず私の愚痴に付き合ってくれた。
その日も、何度目かの失恋で私は仕事終わりに颯人を飲みに誘った。お洒落なバーとかではなくて、よくある大衆居酒屋だ。
「........それでさ、『俺と推し活、どっちが大事なんだよ』っていうから迷わず『推し活』って答えたら家から追い出されて、次の日から音信不通で自然消滅だよ!?『好きなことにイキイキしている瑠衣が好き』ってそいつが言ったくせに比べるとか意味わかんないのだけど!!」
カウンター席で生ビールを一気飲みし、ジョッキを勢い良くテーブルに叩きつけて元カレの不満をぶつける。隣りに座っている颯人もハイボールを飲みながら、私の愚痴を黙って聞いてくれた。
振られる原因はわかってる。私の『推し活』だ。
私は昔から好きなことになると周りが見えなくなるタイプだ。
学生の時は勉強そっちのけでアニメや漫画に夢中になって親に怒られて、就職してからはお給料の半分以上を推し活に使って、月末に金欠になることがしばしば。
でも、推し活があるからこそきつい仕事も頑張れるし、生きる楽しみがあることは大事だと思う。
「確かに比べるのはどうかと思うけど、瑠衣が全然構ってあげないのも問題じゃないのか?推し活が大事なのも分かるが、記念日そっちので限定グッズを買いに行くのは俺でも怒るよ」
決して責めたりせず、冷静な口調でアドバイスをする颯人にぐうの音も出ない。
颯人の言っていることは正しい。ケンカになったきっかけは、付き合って1年記念日の日に私は『かんさい男子』の限定グッズを買いに遠征していたのだ。さすがにまずかったと落ち込む。
「まぁ、これに反省して次はもう少し相手の立場になって考えるんだな。まだ若いし瑠衣見た目は良いからすぐにいい奴見つかるよ」
そう言うと颯人はグラスに水を注いで私の前に置いた。
颯人の優しい気づかいに涙が出そうになるのを誤魔化すために、水を一気飲みした。
「はぁ、颯人みたいな奴が彼氏だったら良かったなぁ」
私は頬杖をついてなんとなしに言った。
昔から自分の趣味を理解して優しくて、大人になってからは背が伸びて男前になってそれなりにイケボで、いい会社に勤めて高収入で料理上手で家事もできて急な飲みにも付き合ってくれる。彼氏にするなら申し分ないに…
「……じゃあ、付き合うか?」
「………へっ?」
今なんて言った……?
『付き合うか?』って……?
酔っ払った頭ではついてこれなくて呆然としていると、颯人はさっきの言葉に少し付け足してもう1回言った。
「だから…俺と、付き合わない?……休日限定で」
「休日……限定……?」
これがすべての始まりだった…。




