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13:恋人(仮)とドキドキ温泉旅行 後編


 一時のドキドキと沈黙が落ち着いた私と颯人。気を取り直して『リクエストデート』を再開する。


 着物姿に着替えた私達は、颯人が予約した人力車で京都の街並みを散策したり、鴨川や渡月橋の景色を写真に収めたりとのんびりとした時間を楽しみ、あっという間に日が暮れてしまった…。





 夕方タクシーで今日泊まる高級ホテルに着いた。以前見た旅行雑誌の特集に載るだけあって、外観も内装もとても立派だ。こんなすごいホテルにタダ同然に泊まれるなんて贅沢だと思った。

 「月島様2名様、お待ちしておりました。お部屋にご案内します」

 年配の仲居さんに案内された部屋は、2人で泊まるには持て余す程広くて豪華な造りで、中庭庭園を一望できる縁側や個室露天風呂が付いたVIPな部屋だ。

 部屋に入ると、自分達のキャリーケースが既に置いてある。先ほどの着物レンタル店で先にホテルに届けてもらったのだ。


 「あ゙ー。やっぱり着物って歩くの疲れるね」

 部屋に入るなり、畳の上に座り込む。慣れない格好をしたから余計に疲れた。足を大の字に開いたら颯人に、「はしたないぞ」って怒られてしまった。まったく、旅行に来てまでオカンにならなくてもいいのに。


 「夕飯まで時間あるけど、どうする?温泉入りに行くか?」

 「そうだね。部屋のお風呂はあとで入るとして、先大浴場のお風呂入ろうかな。もうそろそろ着物脱ぎたいし」

 半日も着物を着ていたんだ。一刻も早く窮屈な格好から解放されたかった。

 着物の帯を緩めようとした時、まだ部屋に颯人がいるのを思い出した。

 

 「…ねぇ、ちょっと部屋出てもいいかな?」

 「なんで?」

 「なんでって……私、着物脱ぎたいんだけど…」

 「いいじゃん、今さら。この前風呂入ってて電話鳴ったからってバスタオル1枚で出てきたくせに(笑)」

 「なっ………とにかく今は出て!!」

 私は茶化す颯人を足蹴りして部屋から追い出した。

 

 確かに前にお風呂入ってたら電話鳴って急いでたから慌ててバスタオル1枚でお風呂から出てきたけど、あの時颯人顔真っ赤にしてコーヒー噴き出したっけ…。


 「まったく、何考えてんだか…」

 とは言いつつ、さすがに長時間部屋の外に待たせるのは申し分ないから、脱いだ着物を畳む暇なく超高速で着替えた。




 浴衣に着替え終わった私達は大浴場に向かい、休憩所で待ち合わせる約束をしてそれぞれお風呂に入った。


 「あ〜〜〜。極楽極楽」

 大浴場には熱湯や温湯、薬湯など色んな種類のお風呂があり、露天風呂やサウナが完備されたいる。

 夕方ということもあり、自分と同じように着いてすぐお風呂に入るという考えのお客さんで賑わっていた。

 かけ湯を済ませて最初に入ったのは熱湯だ。普段のお風呂より少し熱めのお湯が、日頃の疲れを癒やしてくれる。その後薬湯や露天風呂を堪能し、ゆっくり温泉を満喫した。

 お風呂から上がると、休憩所には既に颯人が待っていた。テレビを見ながらコーヒー牛乳を飲んでいた。

 

 「颯人お待たせー」

 「おう。瑠衣、コーヒー牛乳買っておいたよ」

 

 自分が飲んでいたのとは別にもう1本コーヒー牛乳を私に渡した。もらったコーヒー牛乳はキンキンに冷えていた。


 「わーありがとう!ちょうど飲みたかったんだ」

 ビニールを取って紙の蓋を取るとキュポッと音が鳴る。小学校の頃の給食の牛乳を思い出す。

 私は立ったまま腰に手を当てる定番スタイルでコーヒー牛乳を一気に飲む。冷たいコーヒー牛乳が火照った体に潤いを与えたくれる。


 「あ゙ー!やっぱお風呂上がりのコーヒー牛乳は格別だね!」

 「だな。…さて、そろそろ部屋戻るか。夕飯部屋で食べるらしいから」

 「あ、そうなんだ。じゃあ、そろそろ行こうか」

 コーヒー牛乳の瓶をゴミ箱に捨てる。すると、颯人が手の平を出す。

 「どうした?」

 「戻るまで、手ぇ繋ご?」

 「…もしかして、これも『リクエスト』?」

 正解と言わんばかりのご満悦の表情をする颯人。部屋に着くまでの我慢と思ってしぶしぶ応える私。はたから見たら普通のラブラブカップルに見えるんだろうなぁ…。


 

 部屋に着いてしばらくすると、仲居さん数人が料理を持って来た。

 「うわー。どれも美味しそう♪」 

 「すごい豪華だなー!」

 テーブルには2人分には多すぎほどの料理が並ぶ。

 地元野菜を使った前菜にお造り、山菜の天ぷらに鴨肉ステーキに炊き込みご飯とお吸い物。どれも美味しそうでどれから食べようか迷うくらいだ。

 「じゃあ、食べますか」

 「うん、乾杯♪」


 料理を持ってきてもらう前に注文したシャンパンで乾杯し、豪華な夕食とお酒を心ゆくまで堪能した。




 夕食の後、酔い冷ましに縁側のベンチに座り、デザートのイチゴジェラートを食べながら庭園と夜桜を観賞する。…っていうわけにはいかなかった。


 「颯人ーまだー?そろそろ太もも痛いんだけどー」

 「う〜ん。もうちょっと…」

 「それ何回目よ…」

 

 今私はシャンパン飲みまくって酔っ払った颯人を介抱中だ。「膝枕して」と甘える颯人のリクエストに応え、かれこれ1時間この状態だ。さすがに太ももが痺れてきた。


 「颯人ー、眠いなら部屋で寝なー。風邪引くよ」

 「風邪なんて引かないよ〜」

 「前風邪引いたくせに…」


 あーやばい。足がもう限界だ…。


 私は颯人に気づかれないようにそ~っと颯人の頭から離れた。でも…

 「あ~まだ膝枕してよ〜」

 すぐにバレた。

 この酔っ払っいが…仕方ない…。


 埒が明かないから、颯人を抱えて寝室に移動することにした。さっき夕食を食べた部屋の隣りに寝室があり、既に布団が2つ横並びに敷いてあった。


 「あ゙ー重い…重いわー…」

 自分よりひと回り大きい男を1人で抱えて運ぶのは一苦労だ。酔っ払って足元がおぼつかない颯人の歩くペースに合わせてゆっくり歩く。

 やっと布団に到着し、颯人を布団に寝かせてメガネを外して端に畳んで置く。颯人は真っ赤な顔して既にイビキをかいて眠っている。

 向こうの部屋で『かんさい男子』のYouTube見ながらビールでも飲もうかな…。


 颯人を起こさないようにゆっくり隣りの部屋に移動しようとした時、  

 ぐいっ!!


 「うわっ!?」

 

 ボスっ!!


 急に後ろに引っ張られるように布団に倒れた。引っ張ったのは寝ていたはずの颯人だった。

 

 「ん~~瑠衣〜〜♪」

 「ちょっと颯人…ってシャンパン臭っ!」

 まだ酔っ払っいモードの颯人が抱きついてきて身動きがとれない。シャンパン臭さと颯人に抱き潰される圧迫感で息ができない。


 「もぉー!苦しいから離れてー!」

 颯人に離れるよう肩をバシバシ叩くが全く効果がない。


 「瑠衣〜〜♪可愛いな〜〜〜瑠衣〜〜」

 「はいはい、お世辞はいいから早く離れ……って、あれ?」


 気づいたら視界に白い天井と…さっきまで抱きついていた颯人がいる。

 酔っ払って火照った顔、目がトロンとした熱い視線、浴衣が乱れてはだけた胸元、私の上に覆いかぶさっている颯人、背中に伝わる布団の熱――




 えっ…えっ……何、この状況?


 今どういう状況になの?


 目の前に颯人が覆いかぶさっていて、その下に私がいる―――


  

 これって私…押し倒されてる!?


 状況を理解し、全身の熱が一気に上がって心臓がバクバク音を立てる。今まで何人も彼氏がいて、そういうこともしてきたから、この後起こる展開も想像がつく。


 どどどどうしよ!!!

 一応この作品全年齢向けだよね!?どう見てもこれ18禁のムードじゃん!

 作者この後の展開ちゃんと考えてる!?


 このやばい状況をどうにか回避しようと思考をフル回転して考えていると、颯人の手が私の頬に触れる。


 「瑠衣…」


 あー駄目だ、颯人完全に雄の顔してるよ。目がもう獲物を狙う獣のようだ。

 しかも最悪なことに、こんな展開のときに限って下着の色ベージュだし!知ってたら勝負下着穿いてきたし!!


 「ああああの、颯人っ!?一旦落ち着こうか?いくら一つ屋根の下に男女2人きりだからって、酒の勢いに任せてするのはどうかと…」

 「瑠衣は…十分可愛い…よ」


 えっ…?


 どうやら酔っ払って私の言葉が聞こえないみたいで、うわ言のように話始めた。


 「瑠衣は…可愛いよ、昔から。…周りの…奴の…言葉なんて…気にする必要…ないから」

 途切れ途切れだけど、はっきりと聞こえる颯人の言葉。


 もしかして…昼間のこと言ってるのかな…?


 他人から言われた自分の評価。颯人と並ぶ自分に自信を無くして落ち込んでいた。

 悟られないように隠していたのに、ちょっと悔しい。やっぱり颯人にはお見通しだった…。 


 気づいたら颯人の頭を撫でていた。どうしてだかわからない。真っ直ぐに自分の気持ちを伝える颯人が、可愛くみえたのだ。


 「ありがとう、颯人。その言葉…嬉しいよ」

 「瑠衣……」

 

 ゆっくりと颯人の顔が近づいてくる。もう完全にそういうムードじゃん。


 でも…いいかな。颯人とそういうことしても。

 颯人の顔がもう目と鼻の先まで迫っていた。私はゆっくり目を閉じた。

 颯人優しいし、一応今は恋人なわけだし。今だけでも、このまま………




 ……………………………ん?



 いくら待っても、一向にそういう雰囲気にならない。

 私はゆっくり目を開けると、颯人がうつ伏せのまま動かない。体を仰向けに返すと、いつの間にか寝息を立てて上機嫌に寝ている。




 …………っておいーーーーーっ!!


 さっきまであんな目ギラギラさせてたくせに、何なんの前触れもなく寝てんだよ!!…いや、作品的にも寝て良かったけど……っいや、そうじゃなくて!!人が決心して受け入れようとした純粋な心返しやがれ、この酔っ払っいが!!


 私は呑気に寝ている颯人の頬を引っ張ったり肩パンしたりする。それでも熟睡する酔っ払っい。

 

 私は布団からゆっくり脱出すると、颯人に掛け布団を掛けて寝室から出る。

 縁側のベンチに座って、買っておいたビールを開けて一気に飲む。


 「ぷはー」


 キンキンに冷えたビールが、渇いた喉と火照った体を潤してくれる。雲ひとつない夜空に浮かぶ満月を見上げて夜の風情を楽しむ。


 『瑠衣…』


 ふと、さっきの出来事がフラッシュバックする。

 颯人のあの目、触れる熱、優しい言葉…


 

 「あああーーーーーーーー(小声)!!!」

 

 またあの恥ずかしさが蘇って全身の熱が上がる。

 結局その夜は興奮して眠れなくなり、やけ酒することにした―――

 

 


 


 朝7時。


 「瑠衣、どうした?まだ眠いのか?」

 「……別に」


 朝食はレストランでバイキング。爆睡してスッキリした顔の颯人に対して、やけ酒で二日酔い気味で不機嫌な私。持ってきた料理を無心でバクバク食べる。


 「…ねぇ、颯人」

 「ん、何?」

 「昨日のこと…覚えてる?」

 「昨日?えーと夕飯食べて、シャンパン飲んで……その後は………何だっけ?」


 カッチーーーーーーン!!!


 こいつ…あんなこと言ってあんなことしたくせに…お、覚えてないだと………!!


 頭にきた私は、颯人のおかずを奪って食べる。

 「あ、ちょっと瑠衣!俺のおかず盗るなよ!」

 

 これにはさすがの颯人も怒っていたが、私はそんなのお構いなしに食べ続ける。

 朝からなんとも痴話喧嘩の朝食となった――




 その後京都駅近くでブラブラ散策したりお土産を買ったりし、夕方には家路に着いた。


 こうして1泊2日にわたる、私達のドキドキな温泉旅行は幕を閉じたのだった……。

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