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番外編:君と出会った日 君と付き合った日

初めての番外編です。

本編では語られない颯人目線の瑠衣との出会いから『休日限定交際』に至るまでのお話です。


 『ポカモン好きなの?』

 

 それが瑠衣と初めて話した会話だった。





 

 小学2年の秋。父親の仕事の都合でこんな中途半端な時期に転校してきた俺、月島颯人。


 クラスメイト達は季節外れの転校生に興味本意で話しかけてくる。でもこの頃の俺は人見知りが激しくて、なかなか喋れなかった。

 俺の反応がイマイチだったせいか、クラスメイト達が話しかけることはほとんどなくなり、いつの間にか1人で机の前で座っているだけだった。

 もうこの学校で友達が出来ることはないだろうなぁと半分諦めてた時、

 「ねぇ」

 隣りの席の子に話しかけられた。ショートヘアに大きなシュシュを付けた明るい女の子。それが、花崎瑠衣の第一印象だった。

 

 「な…なに?」

 緊張でそっけない返事しか出来なかった。嫌な奴って思われてないか心配だったが、俺の予想とは裏腹に瑠衣は俺の筆箱を指差した。

 

 「ポカモン好きなの?」

 ポカモンとはこの時流行ってたアニメのことだ。俺は特に好きだったわけじゃない。筆箱を買う時たまたま選んだものだ。でも瑠衣は筆箱をキラキラした目で見ている。


 「私ポカモン大好きなんだ。特にココッチとクリンボーがお気に入りでね」

 瑠衣は自分の筆箱からポカモンの鉛筆を何本も出して、1本1本描かれたポカモンのキャラクターを見せてくる。よくわからなかったけど、瑠衣はキラキラした目でポカモンについて語っていた。


 この子、アニメとか好きなんだなぁ…


 「俺ん家ポカモンのビデオあるんだけど、見に来る?」

 ポカモンのビデオがあるのは本当だった。でも、転校して間もないクラスメイトになんで急にこんなことを言ったのかわからなかった。でも、

 「本当!?行く行く!私ん家ポカモンのビデオ持ってないんだ。ありがとう!」

 

 その時の瑠衣の笑顔、太陽みたいにキラキラしていたのを今でも覚えている。

 この時からだった。俺が……………













 瑠衣を好きになったのは、初恋だった。



 それから学校で瑠衣と話すようになって、少しずつ人見知りすることが減って、クラスに溶け込めるようになった。友達も出来て、瑠衣のおかげで学校生活が楽しくなった。席が替わってもクラスが替わっても瑠衣は毎日俺のところへ来て話をする。って言ってもアニメや漫画の話ばかりだけど、瑠衣が楽しそうに話しているから俺はその時間が楽しかった。


 それから中学、高校と同じ所に入っても俺と瑠衣の関係は変わらないままだった。

 ある日の放課後、俺は聞いてしまった。

 瑠衣と女子数人が教室の隅でヒソヒソ話をしていたのだ。俺は見つからないようにこっそり盗み聞きした。


 『ねぇ、瑠衣って颯人君とよく一緒にいるよね』

 『もしかして、颯人君のこと好きなの?』


 会話の内容が自分のことでドキッとした。しかし、


 『違うよ。前にも言ったけど、颯人は小学校の頃からの幼馴染みだから仲がいいの』


 笑顔でそう断言する瑠衣。俺の初恋はあっけなく終わってしまった。

 次の日も瑠衣は相変わらず俺に話しかける。

 俺の気持ちも知らず、ただの『幼馴染み』として話す瑠衣に腹ただしさもあったけど、俺はこの関係を壊したくなかった。

 『恋人』にはなれなくても、せめて『仲の良い幼馴染み』として瑠衣の隣りに居れることができる。余計な感情さえなければ、瑠衣と一緒に居ることができるんだ。そう自分に言い聞かせ続けた。


 俺の気持ちとは裏腹に、瑠衣は彼氏を作ったり振られたりを繰り返していた。そして振られる度、俺に泣きついていた。

 悲しんでいる瑠衣を慰める傍ら、俺は優越感に浸っていた。この間だけ瑠衣を独占できる。俺だけが瑠衣のことを理解できる奴だと。


 大学卒業して、社会人になっても俺達の関係は相変わらずだった。この頃から瑠衣の推し活は勢いを増し、グッズ収集やライブイベントには俺も同伴で参加させられた。その間も彼氏出来たり振られたりの繰り返し。このまま瑠衣との関係は変わらないと半分諦めてた時、転機は突然訪れた。


 『颯人みたいな奴が彼氏だったら良かったのに』


 瑠衣が失恋して何度目かの憂さ晴らしの飲みの席で瑠衣が言ったこの一言。


 それって俺が彼氏でもいいって意味か…?

 俺と付き合ってもいいってことなのか…?


 千載一遇のチャンスとは、まさにこのことを言うんだと思った。今なら告白しても大丈夫じゃないのか?

 いや、落ち着け。瑠衣は俺のこと『ただの幼馴染み』としか見てないんだ。ここで下手に告白して今までの関係に戻れなくなってしまったら…。

 何かいい方法は……………あっ!


 『俺と付き合わない……()()()()で』


 今考えても何でこんなことを言ったのかわからない。瑠衣は『?』だが、俺も『?』だった。

 でも後悔しても仕方ない。不動産投資して所有してたマンションを有効活用できるし、なにより念願だった瑠衣と付き合えるチャンスを逃したくなかった…。


 それから俺の生活は一変した。平日はいつもどおりアプリ開発の仕事に忙殺し、金曜日の夜からは瑠衣と一緒に過ごす。休日限定ではあるが、短い間だけでも瑠衣と恋人としていられる時間が幸せだった。

 


 いつまでこの生活が続くかわからない。もしまた瑠衣にちゃんとした恋人が出来たら、この生活は終わってしまうだろう……。

 でも、せめてその時がくるまで……








 瑠衣の笑顔を1番近くで見ていたいんだ…。

 

 

 

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