8/11
第7話 囁きの正体
御神体の正体が明らかになります。
櫛から溢れる影は、次第に人の形をとり始めた。
長い髪を垂らした女の影。だが顔はなく、髪が顔全体を覆い尽くしている。
女の影はゆっくりと近づき、低く囁いた。
「……返せ……わたしの……」
榊原教授が古文書を読み上げる。
「――この地の女を御神体に封じ、櫛を通して祀りしこと……」
つまり、御神体は「女の怨霊」だった。
木下が膝をつき、頭を抱える。
「知ってたんや……村は代々、この女を神として祀っとったんや……」
川村は声を荒げた。
「神なんかじゃない! ただの化け物だ!」
影の女は櫛を軋ませ、再び囁く。
「……わたしの髪を……返せ……」
その瞬間、美咲の黒髪が櫛に吸い寄せられるように揺れ動いた。
祀られていたのは「神」ではなく――。
次回、社が崩れ落ちます。