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第4話 影の囁き
ついに「影」が姿を現します。
拝殿の梁の上から、黒い影が垂れ下がった。
影はゆらゆらと揺れ、やがて人の形をとる。顔はなく、ただ口のような裂け目だけが開いた。
「……かえせ……」
耳ではなく、脳に直接響くような声が全員の頭を打った。
美咲は悲鳴を上げて御札を投げた。紙は光を放ち、影を一瞬だけ後退させる。
悠真は震える手で美咲の腕を掴み、必死に言う。
「落ち着け! ここで逃げたら、余計にやられる!」
榊原教授は古文書をめくり、震える声で読み上げる。
「……影の神は櫛に宿り、女の髪を求む……」
川村は床に落ちていた櫛を見て、青ざめる。
「これが…御神体か……?」
木下は顔を歪め、背後を見た。
「誰か…いる……!」
拝殿の奥、暗闇の中に、白い顔だけが浮かんでいた。
影の正体が徐々に明らかになっていきます。
次回は封じられた部屋へ――。