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第2話 御札と黒櫛
拝殿に足を踏み入れた一行。
そこには古びた御札と櫛が――。
拝殿の扉を押し開けると、埃に覆われた床に古い御札と折れた櫛が無造作に置かれていた。
空気は瞬時に張り詰め、指先に冷気が走る。五人は恐る恐る足を踏み入れた。
御札は微かに宙に浮き、壁や天井に張り付く。影は揺れながら、仲間の顔や動きを模倣しているように見えた。
床板が軋み、わずかに沈む。天井の梁には黒い影が蠢き、森の外からすすり泣きが響いた。
美咲は御札を握りしめ、声を震わせる。
「やっぱり…ここは…」
悠真は理性で恐怖を抑えようとするが、体は硬直して動かない。
榊原教授は眉間に皺を寄せ、
「この櫛……ただの骨董じゃないな」
と低く呟いた。
櫛の影が床や壁を這い、仲間の顔に変形する。
川村の測定器は異常な数値を示し、木下は背筋を伸ばしたまま動けなくなっていた。
五人の心理はじわじわと追い詰められていった。
不気味な櫛が重要な鍵になります。
次回から本格的に怪異が動き出します。