第1話 霧に隠された参道
いよいよ山奥の神社へ足を踏み入れます。
不気味な雰囲気を感じていただければと思います。
霧が濃く立ち込める山道。高瀬悠真は重い調査道具を肩に背負い、慎重に一歩一歩踏み出した。湿った空気が肌に貼りつき、呼吸はわずかに苦しい。
踏みしめる落ち葉が湿気を含んだ匂いを放ち、木々の間を抜ける光は霧にかき消され、視界は灰色の世界に溶け込む。
祖母の怪談が脳裏をよぎる。
「夜になると神様の怒りを受けた者は姿を消すんや…」
理性で説明できる話だが、心の奥で冷たい震えが全身を包み込む。
霧の奥で、木々の影が微かに揺れ、人型を作っているように見えた。風もないのに落ち葉が舞い、足元に奇妙な足跡が一瞬だけ浮かんでは消える。
立ち止まった悠真の横で、佐伯美咲が御札の束を握りしめ、震える声でつぶやく。
「…誰か、いるの?」
榊原剛教授は古文書の記述を思い返し、背筋を凍らせる。そこには「神社で人が消えた」という記録が残されていた。
木下守は先頭を歩きながら低く呟いた。
「ここを抜けた先に拝殿がある…でも夜になると、何が起こるか分からん」
川村拓也は測定器を肩にかけ、数値の揺れを確認する。針はかすかに震え、心拍数の高まりと共鳴するようだった。
霧に包まれた鳥居の影が、静かに五人の心を締め付けていた。
霧の描写を多めに入れました。
ここから怪異がじわじわと姿を現していきます。