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猫紳士たるもの、猫じゃらしで遊ばれるなどありえません。  作者: 高岩 唯丑
1巻第3話

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マイレディ

 胸に耳を当てる。心臓は鼓動している。意識を取り戻してくれ。呼吸さえしてくれれば。


「オリー! オリー! 戻ってきなさい!」


 少しづつ、鼓動が弱まっている。もう時間がない。


「オリー、申し訳ありません」


 人工呼吸をするしかない。猫の口で何処まで正しく出来るか分からないが、やらないよりマシだ。


 オリーの鼻を摘み、大きく息を吸うと唇を合わせる。こんなロマンチックでも何でもない形で、すまない。もっと早く言っていれば。きちんとしていれば。


「はっ」


 すべて息を吐き出したあと、口を離しもう一度息を吸い込む。そして、また唇を重ねた。戻ってきてくれ。頼む。オリー。


「オリー……」


 酸欠になりかけて、うまく声が出ない。頭がクラクラする。それでも、もう一度。


「けほっ! ごほっ! はぁっ……はぁはぁ」


「オリー!」


「……ミケ」


 弱々しい声と、今にもまた閉じてしまいそうなまぶた。意識を取り戻した。私はほとんど咄嗟に、オリーを抱きしめる。


「よかった……オリー、戻ってきてくれて」


 呼吸停止から意識を取り戻したばかりだ。オリーが何かを言おうとしても、むせてしまう。


「今は何も言わなくてよいのです」


 顔を見るとオリーは目をうるませて、顔を赤らめている。生命が繋ぎ止められて、体温が上がってきたのだろうか。


「い、え……今、なら、今だから」


 オリーが苦しそうにしながら、何かを伝えようとしている。苦しそうに、それでも強い意志を持って。


「なんでしょう、マイレディ」


「今、のはノーカウント……感動的、な再、会……言葉、にできな、いの、なら……初めてをするなら……ね?」


 潤んだ瞳。そして、弱々しくも蠱惑的な微笑み。私はつい呆れて小さく笑ってしまう。


「オリー……貴方は本当に強かな女性だ」


「……きらいですか」


 オリーの腕が私の首に回される。選択肢は無いじゃないか。いや、逃げる気はないのだが。


 オリーの言葉には、返答しない。言葉は不要だ。私はオリーの腰に手を回す。少し力を込めて。


 唇を重ねる。


 これから苦難が待ち受けている。クラリティアという狂気を止められなかった。これで終わりなわけがない。でも二人で、皆で乗り越えられる。


 不意に唇が離れた。オリーが少し不満そうに眉をひそめる。


「今、一瞬、他の女のこと、考えましたね」


 何でもお見通しらしい。オリーはまた、蠱惑的な笑みを浮かべる。今度は弱々しくない。強い、女性だ。


「やり直し」


「……仰せのままに、マイレディ」

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