聖女
その人物は、目が覚めるような美しさを持った女性だった。そして白い装束、ヒューマギオン教の信徒が着ていた装束に似た系統のシスター服。
その女性が「あっ、失礼しました」と笑顔になると、姿勢を正し綺麗なお辞儀をこちらにしてくる。
「申し遅れました、私はクラリティア・マギオン……ヒューマギオン教の聖女をさせて頂いております……あっ、聖女だと分かりづらいか、最高指導者という方がわかりやすいでしょうか」
失敗しちゃった。そんな風に微笑むクラリティア。一瞬何がなんだか分からず、立ち尽くしてしまった。しかし、すぐに身構えて襲撃に備える。全員がその様に反応した。
「あぁっ、待ってください! 私は非礼をお詫びしに来たのですよ」
驚いた様子でクラリティアが両手を胸の前で振る。一つ一つの動作が、芝居がかっているというか、何とも信用しづらいが。とりあえず、戦う意志がない様なので、警戒しつつ構えを解く。
「お詫びとは、なんだ」
代表するようにロラン公が一歩前に出て、硬い声で問いかけた。クラリティアがそれに頷くと口を開く。
「私の信徒がご迷惑をかけてしまったようで、一部の血気盛んな子たちが、暴走してしまったのです……お許しください」
明らかに謝る気のない笑顔での言葉だった。襲撃を計画的に実行し、失敗したからそういう事にしてしまおうという腹なのかもしれない。もちろんロラン公は納得していなかった。
「な、んだと……白々しい!」
頭に血が上っていることを自覚したのか、ロラン公が一度そこで言葉を切ると、一度深呼吸してもう一度声を上げる。
「……では何のために、軍隊を率いてこちらに?」
「軍隊だなんて……お忍びで遊びに来てたのですが、その護衛です、物騒ですから」
ニッコリとクラリティアが返してくる。ロラン公がそれに対して、食い気味に問いかける。
「遊びでこんな辺境にか?! ありえない」
ロラン公の領地は栄えているが、遊びに行くなら王都とかの方が明らかに利便性は高いだろう。しかも、ロラン公の領地にヒューマギオン教の最高指導者がやってくるなんて。ただ遊びに行くつもりなら、立場上避けるべき土地だ。明らかな嘘としか思えない。
「気分ですよ……でも驚きました、偶然来たらロラン様がこんな事に」
不意にクラリティアが口の端を吊り上げる。何かを企んでいる表情。そして言葉を続ける。
「ロラン・ティーベル公、貴方はモンスター……そこの恐ろしいドラゴニュートに人質を取られて、抵抗できず領地をモンスターに占拠されている」
クラリティアが言葉を切る。一瞬何かわからない空気が身体にまとわりついた気がする。そしてクラリティアが、確認するように丁寧に問いかけた。
「そうですね?」




