騎士道を歩む者として守るべき矜持がある
「ヒューマギオン教は確かに憎い、腸が煮えくり返るほど頭にきている! ……だが戦う意志がない者を殺すのはダメだ! 俺達には誇りと信念がある! 騎士道を歩む者として守るべき矜持がある! 腹が立つから殺す何ていうのは、そこら辺の野獣と変わらん! あんたは野獣になるのが夢じゃないだろう! 思い出せ!」
ロラン公の言葉に、アレクシアの身体が反応したのがわかる。動きが硬くなった。心を揺さぶられたのがわかる。
「初めて会った時、あんた言ってただろう、可愛いお嫁さんになるって! トニーさんと、はにかみながら、そんな夢を語ってくれたじゃないか!」
そんな事を言っていたのか。とても幸せなワンシーン。簡単に想像できる。
「アレクシア様! 今怒りに身を任せて憎悪と殺意を振りまいて、その夢から遠ざかっています、冷静になってください!」
「うるさい! 離して!」
アレクシアが一際大きく、羽根を羽ばたかせた。なんとかしがみついてはいたが、浮き上がったのがわかる。下に視線をやると、やはり少し浮き上がっていた。こうなると踏ん張りが効かず、止められない。
「アレクシアさん!」
「アレクシア様!」
私とロラン公の声が、重なる。しかし、アレクシアはもう一度羽根を羽ばたかせた。一気に加速をするかと思いきや、ガクッと何かに引っかかるように加速が止まり、その勢いで上方向に振り回される。
「なによ!」
声を上げたアレクシア。その視線の方向に目をやると、足にしがみついているキリュナがいる。
「間に合った!」
飛び上がるアレクシアをキリュナが掴んで止めたのだ。戦えないとはいえ、パワーは鬼人族の物。ドラゴニュートを止める事が出来るのだ。
「もう、なんなのよ! みんなして!」
怒りというか、もう呆れた声をしているアレクシア。もしかしたら、もう怒りは収まっているかもしれない。振り上げた拳を、下ろすに下ろせなくなっている、そんな風にも見える。
「アレクシア!」
聞き慣れない声が聞こえる。しかし聞いたことがある声。これは。
「トニー!」
声の主の姿を確認する前に、私もロラン公も簡単に払いのけられる。転がった先から見えたのは、逆さまに見える景色。オリーに支えられながら立っているトニーと、その前に泣きながら座り込んでいるアレクシアだった。
よかった。トニーは無事だったらしい。オリーが回復させてくれた様だ。これでなんとかなるだろう。痛む身体を気遣いながら起き上がると、オリーのそばに歩み寄る。
「アレクシア……」
トニーが辛そうに口を開く。




