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猫紳士たるもの、猫じゃらしで遊ばれるなどありえません。  作者: 高岩 唯丑
1巻第3話

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信じています

「お待ちなさい!」


 すぐさま声を上げて静止するが、アレクシアは全く聞かずに飛び上がってしまう。


 建物の高さと同じくらいまで飛び上がったアレクシアは、炎を頭の上に形成する。少しづつ大きくなっているようだ。しかも周辺が昼間のように明るくなる。アレでヒューマギオン教の信徒を焼き尽くす気らしい。しかし、あんな規模の魔法を使えば、巻き添えを食うだろう。


「マズイですよ」


 トニーの治療をしながらも、オリーがそう叫んだ。キリュナも「マジかよ」と目を見開いてアレクシアを見つめていた。


 無闇に命を奪うのは良くない。例えヒューマギオン教が相手だとしても。誠実に接したうえで、誠実を返してこないなら、こちらもそれ相応の態度で臨めば良いが。しかし、命を奪うのはよろしくない。それは知性ある者だから取れる選択だ。覚悟を持って向かってくる者以外の命を奪わない、という選択をとれなければ、誰彼構わず殺していては、それは野獣と同じだ。特に私達のようなものは特に忌避しなければならない。


「止めなければ」


 幸い建物の屋上まで登れば、声も届くし顔を見れる高さだ。


「オリーはそのまま治療を続けてください、キリュナ様はオリーを守ってほしいです」


「守れって言ったって」


 キリュナがそんな文句を言うが、今は対話している余裕はない。オリーの方に視線を向けると「信じてます、ミケ」と微笑む姿が見える。それだけで勇気が湧く。


「行ってまいります」


 自分のケットシーとしての能力を信じて、駆け出す。屋敷を囲む塀を飛び上がり、建物を何個か飛び移り、順番に高いところへ登っていく。アレクシアに一番近づける建物を目で捉えて、そこに飛び移った。


 その建物の屋上。そこの端まで来ると、アレクシアにかなり近くなる。しかし、声をかけようとした所で、アレクシアの咆哮のような叫び声にかき消される。


「害虫ども! 私の大切な人を傷つけた報いを受けろ! 思い知れ! ドラゴニュートの力を! その汚れた魂に焼印によって刻みつけてくれる!」


 ふわふわとしたいつもの声ではない。ドシンとくるような低い声。いつもの雰囲気が、もしかして演技なのではと感じるほど、すべてをかき消してしまう様な強烈な声。無意識に後ろへ後退してしまいそうになる。種族としての圧倒的な差。個人の戦闘スキルやテクニックなど、そんなものでは到底埋められない差があると理解してしまう。


「逃げ惑え、少しくらいは後悔する時間をくれてやる、愚かな人間」


 アレクシアがそんな言葉を口にする。下では人々が逃げ惑う声が聞こえてくる。魔法を打ち込むのを少し待ち、恐怖を味合わせる腹づもりらしい。よろしくない。すべてが。


 私は心を奮い立たせて、声を上げた。


「アレクシア様!」

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