さみしくなる
ロラン公の事やベルネストについて話して聞かせると、キリュナは少し脱力するように背もたれに体を預けた。
「いかがいたしましたか」
その問いかけに、キリュナは顔を天井に向けたまま答える。
「仕方がないことなんだけど……今までの僕のキツイ思いは何だったんだろうって、もっと早くその場所のこと知ってたらさ」
辛かったのだろう。詳細を聞いたわけではないが、キリュナの言動から何となく予想はできる。鬼人族なのにと言われ、追放されたか、飛び出したかして、今度は肉を好まないのに人を食べる危険なモンスターとして、追いかけ回される。その日食べるものを手に入れるのも苦労して、森の中の草をむしって飢えをしのいでいたのかもしれない。
「まぁ、本当に今さらだしな」
脱力するのをやめて勢い良く身体を戻したキリュナが、苦笑気味に笑った。
隣りに座っていたマルタが、何も言わずに優しくキリュナの肩に触れる。少し驚いたようにしたキリュナが、もう一度「本当に今さらだしな」と笑った。苦笑気味ではなく屈託のない笑顔。
「でも、寂しくなるわ……なんだか娘みたいな感覚になっちゃったから」
マルタがそう言うと、ベルトが「そうじゃなぁ」と同意した。キリュナも恥ずかしそうに身じろぎをする。
すぐに会いに来れる距離ではない。とはいえ会いに来れない距離ではない。幸い農場は街の中ではないから、正体もバレづらいだろう。たまに会いに来るぐらいなら、問題ないのではないか。
もしくはここに残るという選択肢も、無い訳ではないと思う。常に警戒して気が休まらないかもしれないが、街に住む訳ではないから正体がバレる危険は高くはない。
「分かっていただけていると思いますが、私達はキリュナ様を絶対連れて帰らなければならない訳ではありません、キリュナ様の意思を尊重いたします」
「討伐依頼が出てますから、ほとぼりが冷めるまではロラン様の所にいたほうがいいと思いますけど、私もミケに賛成です」
補足するようにオリーが言葉を付け加える。
「そうか、ワシがやらかしたせいで」
顔を青くしたベルトが、そう呟いた。過ぎたことは仕方がない。マルタが「ウジウジしないの」と優しく声をかけると、ベルトが「いつもありがとな」と小さく笑う。良い夫婦である。
「……とりあえず、お前たちについていくよ、今の状態で僕がここに居ると二人に迷惑かけるかもしれないし」
「そうですね」
話はまとまった。今後どうするかは、ロラン公も交えて話したほうが意外な解決策が出るかもしれない。
しかしこれだけでは終わらない。先程アレクシアが、気になる呟きをした。それに関して、聞かねばならない。
「では、アレクシア様……先程の話を」




