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猫紳士たるもの、猫じゃらしで遊ばれるなどありえません。  作者: 高岩 唯丑
1巻第2話

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訪問

 私達は、ベルト夫婦が暮らしているであろう母屋に向かう。別れ際に頼むと言われたのもある為、もしかしたら家で待っているかもしれないと思った。作業に出てしまっていれば、もう諦めてベルネストに一旦帰り、日を改めるしか無いが。


 私は母屋の出入り口の前に立つ。中から人の気配を感じて、ひとまず安心する。


「ベルト様、ご在宅でしょうか」


 声を掛けると、足音が近づいてくるのが聞こえる。やはり心配して待ってくれていたのかもしれない。


「戻ってきたんじゃな」


 ドアが開け放たれて、中からベルトが出てくる。嬉しそうに笑った顔をしていた。


「家内もおるでの、さっき紹介できなかったし、入れ入れ」


 ドアから少し遠ざかり、私達を招き入れる仕草をする。


「おぉ、一人増えてるのぉ、上手くいったんじゃな、良かった良かった」


 私達が家の中に入ると、安心したようにベルトが笑う。やはりこの人は良い人である。心配していたのだ。


「お陰様で、うまくいきました……キリュナ様」


 紹介するために声を掛けると、キリュナが一度だけ体を強張らせる。そうして身につけている認識阻害のマントに手をかけた。手をかけたが、マントをつかんだ手にギュッと力が入るだけで、そこから全く動かない。一度姿を見られた時に、恐れられている。まだ出会ったばかりの私たちの、言葉の真偽を測りかねている。そんな感じだろうか。


「マント着てると羽を伸ばせないから疲れるわぁ」


 アレクシアが間延びした声を上げると、マントを脱いで思いっきり羽根を伸ばす。家具や調度品に当たって壊してしまわないか、一瞬ヒヤリとしたが、大丈夫だった。


「綺麗な羽だわ」


 ベルトの背後からそんな声がして覗き込むと、一人のお婆様が微笑んでいた。ベルトの奥様だろう。


「失礼いたしました、玄関の前で長く立ち止まってしまって」


「そうじゃそうじゃ、狭いが奥に進んでくれ」


 ベルトは嬉しそうに奥様の方に並ぶと、部屋の奥へと私達を誘導する。アレクシアはきれいな羽といってもらえたのが嬉しかったのか、奥様の隣について奥に進んだ。私もオリーもマントを脱ぐと、その誘導に従ってすすむ。


 キリュナだけがその場に立ち尽くしていた。信じられないという感じで。


「お前さんもそんな所に突っ立ってないで、中においで」


 ベルトがキリュナに笑いかける。ここまでのやり取りを見ていれば、自ずと分かるだろう。ベルトは礼節と敬意を払うべき人間だ。


「……謝らなきゃいけないことがあるんだ」


 マントを脱いだキリュナが、そう声を上げた。

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