訪問
私達は、ベルト夫婦が暮らしているであろう母屋に向かう。別れ際に頼むと言われたのもある為、もしかしたら家で待っているかもしれないと思った。作業に出てしまっていれば、もう諦めてベルネストに一旦帰り、日を改めるしか無いが。
私は母屋の出入り口の前に立つ。中から人の気配を感じて、ひとまず安心する。
「ベルト様、ご在宅でしょうか」
声を掛けると、足音が近づいてくるのが聞こえる。やはり心配して待ってくれていたのかもしれない。
「戻ってきたんじゃな」
ドアが開け放たれて、中からベルトが出てくる。嬉しそうに笑った顔をしていた。
「家内もおるでの、さっき紹介できなかったし、入れ入れ」
ドアから少し遠ざかり、私達を招き入れる仕草をする。
「おぉ、一人増えてるのぉ、上手くいったんじゃな、良かった良かった」
私達が家の中に入ると、安心したようにベルトが笑う。やはりこの人は良い人である。心配していたのだ。
「お陰様で、うまくいきました……キリュナ様」
紹介するために声を掛けると、キリュナが一度だけ体を強張らせる。そうして身につけている認識阻害のマントに手をかけた。手をかけたが、マントをつかんだ手にギュッと力が入るだけで、そこから全く動かない。一度姿を見られた時に、恐れられている。まだ出会ったばかりの私たちの、言葉の真偽を測りかねている。そんな感じだろうか。
「マント着てると羽を伸ばせないから疲れるわぁ」
アレクシアが間延びした声を上げると、マントを脱いで思いっきり羽根を伸ばす。家具や調度品に当たって壊してしまわないか、一瞬ヒヤリとしたが、大丈夫だった。
「綺麗な羽だわ」
ベルトの背後からそんな声がして覗き込むと、一人のお婆様が微笑んでいた。ベルトの奥様だろう。
「失礼いたしました、玄関の前で長く立ち止まってしまって」
「そうじゃそうじゃ、狭いが奥に進んでくれ」
ベルトは嬉しそうに奥様の方に並ぶと、部屋の奥へと私達を誘導する。アレクシアはきれいな羽といってもらえたのが嬉しかったのか、奥様の隣について奥に進んだ。私もオリーもマントを脱ぐと、その誘導に従ってすすむ。
キリュナだけがその場に立ち尽くしていた。信じられないという感じで。
「お前さんもそんな所に突っ立ってないで、中においで」
ベルトがキリュナに笑いかける。ここまでのやり取りを見ていれば、自ずと分かるだろう。ベルトは礼節と敬意を払うべき人間だ。
「……謝らなきゃいけないことがあるんだ」
マントを脱いだキリュナが、そう声を上げた。




