世界を良い方向に
ジェームズの顔が浮かぶ。マークの顔が浮かぶ。ロラン公の顔が、ベルネストの街の人達の顔が浮かぶ。彼ら彼女らは、礼節には、礼節を。誠実さには誠実さを返してくれる。
「良き隣人って、結局人間を中心に考えてるって事だろ! お前の言う隣人は、僕達は【外側】だ」
キリュナの言葉に、少し思い当たる節がある。最初は人間の隣に私達のようなものが居るには、そうあるべきと考えていた。でも今は違う。
そこまで考えて少し笑ってしまう。コロコロと考えが変わって情けないが、これが一番だと思う。
「何笑ってるんだ」
キリュナの咎める声に、軽く頭を下げる。
「失礼、自らの不甲斐なさに思わず」
私は一度深呼吸をする。今の考えを、言葉にするために。
「人間を中心に考えていません、隣人とはすべての知性あるものを指します……つまり、人間と人間が隣同士に立っても、隣人です……私達だけを指す言葉ではない、どんな種族同士だろうと、隣り合えば隣人同士、礼節を持って接することで、お互いに良き隣人になれる」
「だけど、知性があろうと、食料としてみてる奴らは居る!」
思いついたようにキリュナが、声を上げた。その事はとても難しい話だ。しかし。
「食べる者と食べられる者……それは自然の摂理として仕方がない」
「やっぱり」
口を挟むキリュナに、右手で制して私は口を開く。
「そこのあたりは、私も納得できる答えを持てていません、しかし、せめて隣に立とうとしてくれる者には、歩み寄ろうとしてくれる者には、礼節を持つべきです、誠実にしてもらったのであれば、誠実に返すべきなのです、それが知性のある者の姿だと思いませんか」
私の言葉を噛み砕くためか、キリュナは少し沈黙する。それから確かめるような口調で問いかけてきた。
「じゃあ、ヒューマギオン教の様な野獣には、礼節を持たなくていいのか」
「いえ、まずはこちらから、キチンと礼節と敬意を持った対応をすべきでしょう、そして、礼節と敬意を返して来なければ……野獣と同じです、それ相応の対応をすればよろしい」
自分でもこれが正しいのかわからない。上手く言語化できていないかもしれない。それでもできうる限り思いは伝えた。
「まずは、野菜を勝手に食べた事を謝罪に参りましょう」
ベルトは礼節には、礼節を、誠実さには誠実さを。そういう方だと、確信している。私はキリュナに手を差し伸べた。
「礼節は、良き隣人を作る……ここから始めていきましょう、私達で実践し、広めて、世界を良い方に導くのです」




