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猫紳士たるもの、猫じゃらしで遊ばれるなどありえません。  作者: 高岩 唯丑
1巻第2話

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男女の心理

「失礼、お待たせいたしました」


 私は振り返ると、シャツの襟を引っ張るように整える。それから、オリーから傘を返してもらい、立てるようにして柄を両手で上から押さえるように持つ。


「お嬢さん、名前をお伺いしても?」


「今さら取り繕っても、女の尻に敷かれる情けない姿を見たからな」


 鬼人のお嬢さんは、哀れなものを見る目をこちらに向ける。この子はまだ幼い。男女というものを分かっていないようだ。時間がないが、心理を教えてあげよう。大人として。


「分かっておられないようだ」


 私は一度そこで言葉を切り、息を大きく吸い込む。


「女性のお尻の下に、入らせていただいておるのですよ!」


 これこそ男女の心理である。アレクシアが背後から「よくわかってるわぁ」と同意の声を上げてくれている。


「何キメ顔で余計情けない事言ってんの?」


 鬼人のお嬢さんの冷めた顔が目に入らないように、ツンと顔を少し上げる。誰がなんと言おうと、シビリティパーソンとはそういう物なのだ。


「それより」


 色々あって寄り道をしてしまったが、話を戻すため声を上げる。


「時間があまりないのです、話を……まずは名前を伺いたい、それこそが話し合いの第一歩です」


 もう嘆願に近い言い方になってしまったのを見て、一度呆れた目をこちらに向けた鬼人のお嬢さんが、ため息を付いて口を開く。


「抵抗するのが馬鹿らしくなった、悪い奴らじゃなさそうだし……キリュナ、僕はキリュナだ」


「キリュナ様ですね、ありがとうございます、ティーでも楽しみながらと言いたい所なのですが、本当に時間がな」


「まて」


 私の言葉を遮るようにキリュナが声を上げる。キリュナが、不思議そうな顔を浮かべて言葉を続けた。


「さっきから、時間がないってなんだよ……というか、お前らの都合なんて、僕の知ったことじゃない」


 そこまで言って、キリュナが腕を組み少し身体を背ける。抵抗のつもりというか、話を優位に進めるために、主導権を握ろうとしているような印象を受ける。幼さを感じる方法だが。


 それより、やはり自分の状況が分かっていないようだ。なかなかまずい状況なのだ。それを伝えるため、一度伝えるべき内容を整理してから、口を開く。


「簡潔にお伝えします……キリュナ様は現在冒険者から命を狙われています、先程我々はその冒険者を見かけました、すぐそこまで来ています」


 キリュナの身体がビクンと強張った。


「加えて、ヒューマギオン教という方々が軍隊を率いてこの辺りを通過するらしく……そんなのに遭遇したらひとたまりもありません」


 軍隊に囲まれたら、たとえ最強だったとしても、どうすることもできないだろう。


 今の状況を理解したらしいキリュナが、強がってポーズを維持してはいるが、ガタガタと震えだした。

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