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猫紳士たるもの、猫じゃらしで遊ばれるなどありえません。  作者: 高岩 唯丑
第二話

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トマトときゅうり

「こちらのきゅうりも、不自然に数が減ってますね」


 オリーの声がして、畑の中を少し進む。


「確かに、きゅうりも同じですね」


 トマトと同じ様に、きゅうりも不自然に無くなっている場所がある。これは確実に誰かが食べてしまったのだろう。


「おい! そこに誰かおるのか! 誰じゃ!」


 しわがれた声が、畑の中にある道の方から聞こえてくる。私は身長が足らず見えないが、アレクシアとオリーは誰かの姿を見つけたように視線を動かした。


「ハゲ頭が喋ってるわねぇ」


 失礼なことを堂々と言うアレクシア。天然なのか。


「おい! こら! 今ハゲっていったじゃろ! わしはまだ禿げておらんわ!」


 聞こえていたらしい。明らかにご立腹の様子であった。とにかく非礼をお詫びしなければ。


「アレクシア様、ちゃんとお詫びしますよ!」


 アレクシアを連れて、とにかく声がする方に進む。


「お待たせしました」


 畑の中にある道まで到達するとオーバーオールを着た、いかにも農作業をしている感じという禿げたジジイがいた。あっ、つい。老年の仕事中のお爺さまがいた。


「連れが大変失礼いたしました、申し訳ありません」


 私が恭しく頭を下げると、お爺さまは何も言えなくなったように声を詰まらせる。それから「うぅん、まぁいいわ」と呟いた。人は良いようだ。頭を下げた相手に、ココぞとばかりに噛みついてこないのがその証拠である。


「ほら、アレクシア様もちゃんと謝罪なさい」


 後ろにオリーと並んでいたアレクシアに振り向いて声をかける。ハゲと言っておいて、悪びれる様子も、逆に憤然とした態度をすることもなく、普段通りのポヤポヤとした雰囲気を出している。微塵も興味がない様な感じがした。


「すみませんでしたぁ、つい、見たそのままを口に出してしまってぇ」


 軽く頭を下げているが、あんまり謝れていないな。結果的にまたハゲって言ってるな。急いでお爺さまの方に振り返ると、抑えているようだが鼻の下を伸ばして顔を赤らめている様だ。どういう事だろうか。


「まぁ良いのじゃ」


 お爺さまは許してくれたようである。何がなんだか分からないが。疑問に思っていると、見かねたらしいオリーが膝を曲げて耳打ちしてきた。


「ミケの角度からは見えないと思いますけど、胸の谷間を開けて見せていたんです」


 そういう人なのか。あざといというか。あまりそういうのは感心しないが、とりあえず仕方がない。


「お爺さま、勝手に畑に入ってしまい、大変申し訳ありません」


 私は誠心誠意を持って、頭を下げる。それから、口を挟まれる前に、続けて事情を説明していく。


「ご依頼を承りました冒険者のミケ・ミャン・キャットフィールドでございます、被害の確認のため、畑を歩いておりました」


 もう一度頭を下げる。今度は恭しくスマートに。

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