助けたい
鬼人族なのに肉食を嫌がり、草食を貫いていたのであれば気味悪がられ、もしくはらしくない、弱々しいと言うような理由で、追放されたかもしれない。鬼人族の勝手なイメージで言っているが、それらしい感じにはなっていそうである。
「草食の鬼人族なら、人間と共存できるかもしれねぇ……俺は助けたいんだ、だが行けない」
理由は先程聞いた。だから私に頼んできたということだ。ロラン公の表情に、凄みが増す。本当に助けたいという気持ちが、溢れ出ている。
草食の鬼人族。人間を食料として見ていない。にも関わらず、人間に危険と判断されてその辺の突進してくる動物と同じ様に討伐される。生まれた場所からも、人間からも拒絶されているという事だ。味方になってあげたい。私もそう思う。
「……分かりました、助けに行きましょう」
「ありがとう、依頼料ははずむ、準備に必要な金も物も用意してある」
お金のためではありません、とかっこよく言いたいところだが、そういうわけにもいかない。そう考えてしまい、情けなさが心に広がってしまった。そんなふうになっていると、肩に温かみを感じる。そちらを見ると、オリーが私の肩に手を置いて微笑んでいた。
「ミケ、カッコイイですよ」
何でもお見通しのようだ。嬉しくなって顔が緩む。いけない。
「うおほんっ、準備の件助かります、それでは急ぎましょう」
討伐の依頼を誰かが受けてしまったら、討伐が開始されてしまう。時間はあまりないだろう。私が立ち上がってそう口にすると、ロラン公が何故かニヤニヤしていた。
「タジタジだな」
今は、そんな事を言っている場合ではないだろう。そして、タジタジなどではない。いつだってスマートである。シビリティパーソンである。
「そんな事を言っている場合ではありません、他領という事は移動だけでかなり時間がかかるでしょう、それに顔は緩んでいませんが」
私の言葉を聞いたからなのかは分からないが、ロラン公の表情に凄みが戻り、ソファから立ち上がった。
「移動に関しては、助っ人を頼んである……街に住むドラゴニュートの人が居てな」
「ドラゴニュートさんですか、初めてお会いするかも」
オリーがゆっくりと立ち上がりながら、そんな事を呟く。二百年の人生で一度もあったことがないのか。ドラゴニュートはかなりレアな種族なのだろうか。
ロラン公が外に控えていたであろう兵士に声をかけ「アレクシアさんに例の件を伝えてこい」と指示を飛ばす。
「ですがドラゴニュートの方に移動を手伝ってもらうというのはどうやって?」
単純な疑問だった。ドラゴンにでも変身できるのだろうか。
「抱えて飛ぶんだ、一人とミケぐらいなら問題ないだろう」




