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猫紳士たるもの、猫じゃらしで遊ばれるなどありえません。  作者: 高岩 唯丑
第二話

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訪問者の要件

「来客ですね」


 助かったとは思わないが、少しホッとしてしまう。ソファーから立ち上がり、一階の方へ移動する。後ろから、オリーが「もう」と呆れるような声を、小さく発したのが聞こえた。なんと情けない猫なのだ、私は。


 気持ちが沈みながらも、見せ部分の入口にたどり着く。カーテンを閉めているので、誰が来たか分からない。しかし、店をオープンさせたわけでもないし、ここに人がいる事を知っている人物となると、ロラン公の使いの者の可能性が高い。


「何でしょうか」


 襲撃の話も聞いていたので、一応傘を片手にドアを開ける。


「朝早くに失礼いたします、ミケ様でいらっしゃいますか」


 開けたドアの前にいたのは、鎧をまとった兵士。いかにも大量生産され支給された感じの鎧を着た彼は、敬礼なのか右の握り拳を左胸に軽くぶつける。


「我が主、ロラン・ティベールより、至急依頼したい事があるということでお邪魔いたしました!」


「……依頼」


 少し遅れてやってきたオリーが、背後からそんなつぶやきを上げる。お金を稼がなければという話をしていた所で、ちょうどいい話が舞い込んできた。断るつもりはなかったが、一応オリーの方に振り向く。


「丁度良いですね、報酬が出るってロラン公は言ってましたし、タイミングはバッチリですね」


 オリーが右手でオッケーサインをした。少しくらいは街を見て回りつつ、冒険者ギルドに向かうつもりだったが、しょうがない。


 兵士の方に再度身体を向け直して、恭しく頭を下げる。


「ロラン公に、今から向かいますと、お伝えください」


「ありがとうございます、早速戻ってお伝えいたします」


 ほとんど走り出しながら、兵士はそう声を上げる。最後の方の言葉は、遠くから聞こえてきていた。頭を上げた頃には、兵士の背中が小さくなっているのが見える。


「忙しいお方だ、それともそれだけ緊急の事だったのか」


 私は振り返ると、そう口にしながらオリーに微笑む。オリーもそう思ったのか「そうですね」と微笑んだ。


「では出かける準備をいたしましょうか」


「はい、と言っても身支度はすでに済ませていますが」


 あとは残っている薬膳ティーを、飲んでしまうだけだ。開け放たれていたドアを閉めて施錠し、二階へ向かうために歩き始める。


「すぐ行かないんですか?」


 オリーが不思議そうに首を傾げた。歩を進めながら、微笑んで見せる。


「せっかくオリーが美味しく入れてくれたティーを残すなど、あってはなりません、私にとってはマイレディのティーの方が重要ですから……行かないという訳でもないですし」


 顔は見ていないので分からないが、オリーが一瞬の間を開けてから「はい」と嬉しそうな返事を返してきた。

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