明日への期待
「それでさっきの話ですが」
くつろいでティーを楽しんでいるところに、オリーがそう切り出す。私はカップを机に置いて、軽くオリーの方に体を向ける。
「先にやりたい事でしたか」
「はい」
オリーが頷く。それから、軽く耳に触れてから、口を開いた。
「シスターの格好をしてる理由は話しましたよね」
「はい、ダークエルフというのを隠すのに不自然ではない格好がシスターだったという事でしたね」
贖罪の為という事もあったという事は、あえて口に出さない。罪を犯してもいないのに贖罪なんて必要ない。その事実も、口に出して確認する必要はない。
「この街に来てもうその必要がなくなったと思うので、シスターの格好は辞めようかと」
「あぁ、それはいい考えですね!」
前向きに変わろうとしているという事だ。嬉しい限りである。
「それで、まずはどういう服装にしようか考える事をしたいんです、ミケさんの様なトレードマークの様な服装にしたい」
「なるほど、それが先にやりたい事ですか」
コーディネートというのは考えるのは楽しい事だ。私もジェームズと、あれでもないこれでもないと話し合ったのは楽しい時間だった。なまじ慣れない自分の姿だ。ゲームのキャラクタークリエイトのような感覚がある。オリーにはそんな感覚は、もちろんないのだが。
「ですが、トレードマークですか……なにか思い浮かべている事はあるのですか?」
私で言えば紳士。シビリティパーソン。それをふまえれば、おのずとスーツという選択肢になってくる。オリーにはそういった大事な信念の様な物はあるのだろうか。
オリーは今まで考えたことがないのだろう。少し困ったように「無いんですよね」と笑う。嫌な思いをしてきた時間が長すぎて、変な方向にこじれてしまったのだ。仕方がないと思う。
「この件もゆっくり考えればいいのですよ、カッコイイ、もしくはカワイイ物をじっくりと」
「そうですね……ただ、私もジェームズ様に仕立ててもらいたいなとは思います」
「それはいい考えですね!」
「その為に、お金を貯めなきゃですけど」
オリーが苦笑を浮かべる。そうであった。オリーの仕立ても頼むとなると、さらにお金が必要になる。
「明日からキリキリ働かなければですね」
「はは、まずはそこからですね」
私は机に置いたカップを手に取る。それから、カップを少しだけ持ち上げてみせた。
「今はティータイムです、それを楽しみましょう、明日の事は明日に」
オリーが微笑むと、自分のティーカップを手に取ると、私がしたのと同じように少しだけ持ち上げてみせた。




