何をやろうか
とりあえず、長旅だったんだゆっくり休みな、とロラン公に言われ物件の場所を教わった。そこに向かってオリーと二人で街を歩いていく。
「やっぱり宿じゃなくて、ロラン様の所に先に行ってよかったですね」
そういえば、そういう話をしていた。今日の宿だけじゃなく、今後の住処まで手に入ってしまった。
「住み続けるには、依頼をこなしていかなければいけませんが」
「その件は申し訳ありません、私は弱くて何もできないのに……ミケにだけ負担がかかって、私は住まわせてもらうだけになってしまう」
嫌味を言ったつもりはないが、オリーの謝罪を聞いてそういうふうにも聞こえてしまうかと思い至る。
「そんなつもりで言ったわけでは、この街を助けたいと思ってるので負担なんて」
「ありがとう……でも、何かしたいとは思ってるんです、せっかく店ができる物件らしいですし」
こちらに顔を向けて、オリーが微笑む。何かしたい、そう言うオリーを見て、出会った時の事が蘇ってくる。ランクの低い薬草の採取は華やかさがない為誰もやりたがらない。しかも、病気で困っていたりするから、それを達成するのはまさに人助けになる。そういう理由で薬草採取をしていたから、自分のやりたい事をやっていたかと言うと微妙な所だ。
「なにか考えましょうか、すぐに決めないといけない訳ではないですし、まずはこの街で過ごしながら」
冒険者ギルドはこの街にもあるらしい。とりあえずの仕事なら、困る事もないだろう。それにロラン公からの依頼もある。どれくらいの頻度であるのか分からないが、これも収入になる。オリーにやりたい事をのんびり考えてもらって、のんびりやってもらうための生活は出来るはず。
「あっ」
オリーが突然声を上げた。何かを思い出したような表情。それからお腹を押さえてこちらに顔を向ける。その表情は少し赤くなっていた。
「聞こえました?」
その態度と仕草で、何があったのか分かってしまった。しかしここはシビリティパーソンとして、レディに恥をかかせる訳にはいかない。
「なにがでしょう? それよりお腹が減りました、お腹が鳴ってしまいましたよ、何か買って食べながら行きましょう」
「ふふふっ、ありがとうございます、そうですね何か食べましょう」
オリーが一瞬驚いた表情を浮かべてから、少しイタズラっぽく微笑む。それから私の手を握ると、少し駆け足で進み始める。なんだかオリーが活発になった気がした。この街があるおかげなのだろう。ロラン公は立派なシビリティパーソンなのだ。




