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猫紳士たるもの、猫じゃらしで遊ばれるなどありえません。  作者: 高岩 唯丑
第二話

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ロラン・ティベール公

 街ですれ違う人は、ほとんど人間だった。その中にたまにモンスターといわれる人がいる。それぐらいの割合だ。流石に積極的に迎え入れているといっても、数は多くないらしい。


「あなた方も領主様に迎えられましたか」


 道を聞いた所で、そう問われる。相手は獣人……ライオンに見える獣人だ。


「はい、そうです」


 オリーがにこやかに返す。街に入ってすぐに、シスターのベールを外していた。ここでは嫌な視線も、嘲笑もない。


「良い方ですよ、私も差別に苦しんでいる所にここの噂を聞いて、やってきたら快く迎え入れてもらえて」


「そういう話を聞けて、安心しました」


 私が頭を下げると、ライオン獣人も頭を下げて返してくれる。そして最後に、あっ領主館はあっちです、と言い残して去って行った。


 ライオン獣人の指さした方向に歩き始めつつ、オリーが嬉しそうに笑う。


「本当に安心して暮らせそうです、もっと早く知りたかったですよ」


 二百年は長かっただろう、でもこれからはここで穏やかに暮らせる。私は頷いて返した。


「楽しみですね、どういう方でしょう、領主様は」


 ジェームズの昔なじみだから、やっぱりシビリティパーソンなのだろう。スーツに身を包み、恭しく頭を下げる姿を思い浮かべる。私も楽しみだ。



「がははははっ、お前らがジェームズの友達か」


 領主館に到着し、紹介状を見せると応接室に通され待っていると、マッチョさんが部屋に現れた。


 このお方がロラン・ティベール公らしい。想像よりだいぶ差異があった。もっとこう、細身のスマートな感じを想像していたのだが。


「ジェームズには振られちまったが、お前が代わりになってくれると聞いて、助かるよ」


 振られたというのは、ジェームズを自分の街に連れてくることだろう。


「代わりにというのが良く分かりませんが」


 さすがに、代わりという言葉に引っかかりを覚えて、問い返す。ロラン公はそれに対して、一度頷いてから口を開いた。


「順を追って話そうか……実はこの街ではな、最近ちょくちょく暴力沙汰が起きてんだ、しかも犯人は分からない」


「暴力沙汰、ですか」


「あぁ……あまりこの言葉は好きじゃねぇが、便宜上仕方ねぇから使わせてもらう……街で迎え入れたモンスターが何者かに襲撃されてるんだ」


 襲撃と聞いて、オリーが身体をビクリと強張らせる。平穏に暮らしたいと思っているのに。私はオリーのきつく握りしめられた両手に手を重ねる。ハッしてこちらに顔を向けたオリーに微笑みかけた。


「あいつらは弱くねぇ、だから怪我人も出てねぇから、大事になってねぇが、犯人側からすればだんだんヤケになってくるだろう……近い内に何かが起こりそうな気がしてな……荒くれ者の感ってやつさ、犯人側の思考が分かっちまう」


 ますますシビリティパーソンのイメージからかけ離れていく。この人とジェームズが親しいイメージが湧いてこない。すこし苦笑いをしてしまったが、すぐに顔を引き締める。

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