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猫紳士たるもの、猫じゃらしで遊ばれるなどありえません。  作者: 高岩 唯丑
第一話

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事情

 二人で並んで席につくと、対面にジェームズとマークが並んで座る。四人がまずはひと口紅茶を傾けた。


「美味しいです」


「ありがとうございます」


 意識せず自然に出た私のつぶやきに近い言葉に対して、マークが返事をくれる。仕立ての腕以外にも、こういうスキルを身に着けないといけないとは大変である。


「さて、改めてご無事で何よりです、オリビア様」


 ジェームズがオリーに向けて微笑みを向ける。


「ご心配ありがとうございます」


 オリーがジェームズの言葉に、一度頭を下げて返した。


「それで、早速で申し訳ありませんがお話が」


 話を先送りにしても仕方がない。私がそう切り出すと、ジェームズがこちらに身体を向ける。


「本当に急で申し訳ないのですが、この街を離れる事にしました」


「……なるほど、ご依頼の仕立ての件ですね」


 ジェームズが深く思考するように、視線を落とした。もしかして、仕立てをしてくれる方向で考えてくれているのだろうか。お金の件や、受け渡しのこともあるだろう。私を信用してくれるのであれば、仕立ててもらっておいて、この街に取りに来るという様な事は出来るの思うが。


「……街を離れるのはご旅行の様な一時的な物でしょうか? それとも永久的にという事でしょうか? 仕立てのスケジュールやお渡しの日取りを調整する為、可能であれば教えていただければ」


 ジェームズの質問に迷ってしまい、オリーに視線を向ける。永久的にだが、その結論に至った事情を話したほうが良いのか。そもそも、何処に行くのかも決めていない。もしかしたら、放浪の旅になるかもしれない。


 何も話さない、行く場所も伝えられないが、作ってほしいなんてワガママすぎる。それに相談するなら、その事情をジェームズも把握しなければ、最適な答えは出せない。


「行く場所はまだ決めていなくて」


 オリーがそう切り出す。それから言葉を切って、耳を隠すためのシスターベールに手をかけた。


「オリー」


 咄嗟に静止する声をあげてしまう。それに対してオリーは微笑みを浮かべた。諦めとか力無い笑みではないが。


「大丈夫です、遅かれ早かれこの事はこの街で広まるでしょうし、ミケが信頼している相手なら、問題ありません」


 少し頷いたオリーが、ゆっくりとベールを外す。それからジェームズの方に向き直った。


「私はダークエルフです、今まで隠していましたが、それを暴漢に知られました」


 それだけ知れば、色々と合点がいくだろう。ジェームズが頷いた。


「なるほど……お辛いご決断でしたでしょう、お二人は何も悪くないというのに」


 ジェームズは、小さくため息をついた。オリーの為に怒ってくれているのだ。差別意識も無さそうである。やはりこの人に仕立てを任せたい。

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