事情
二人で並んで席につくと、対面にジェームズとマークが並んで座る。四人がまずはひと口紅茶を傾けた。
「美味しいです」
「ありがとうございます」
意識せず自然に出た私のつぶやきに近い言葉に対して、マークが返事をくれる。仕立ての腕以外にも、こういうスキルを身に着けないといけないとは大変である。
「さて、改めてご無事で何よりです、オリビア様」
ジェームズがオリーに向けて微笑みを向ける。
「ご心配ありがとうございます」
オリーがジェームズの言葉に、一度頭を下げて返した。
「それで、早速で申し訳ありませんがお話が」
話を先送りにしても仕方がない。私がそう切り出すと、ジェームズがこちらに身体を向ける。
「本当に急で申し訳ないのですが、この街を離れる事にしました」
「……なるほど、ご依頼の仕立ての件ですね」
ジェームズが深く思考するように、視線を落とした。もしかして、仕立てをしてくれる方向で考えてくれているのだろうか。お金の件や、受け渡しのこともあるだろう。私を信用してくれるのであれば、仕立ててもらっておいて、この街に取りに来るという様な事は出来るの思うが。
「……街を離れるのはご旅行の様な一時的な物でしょうか? それとも永久的にという事でしょうか? 仕立てのスケジュールやお渡しの日取りを調整する為、可能であれば教えていただければ」
ジェームズの質問に迷ってしまい、オリーに視線を向ける。永久的にだが、その結論に至った事情を話したほうが良いのか。そもそも、何処に行くのかも決めていない。もしかしたら、放浪の旅になるかもしれない。
何も話さない、行く場所も伝えられないが、作ってほしいなんてワガママすぎる。それに相談するなら、その事情をジェームズも把握しなければ、最適な答えは出せない。
「行く場所はまだ決めていなくて」
オリーがそう切り出す。それから言葉を切って、耳を隠すためのシスターベールに手をかけた。
「オリー」
咄嗟に静止する声をあげてしまう。それに対してオリーは微笑みを浮かべた。諦めとか力無い笑みではないが。
「大丈夫です、遅かれ早かれこの事はこの街で広まるでしょうし、ミケが信頼している相手なら、問題ありません」
少し頷いたオリーが、ゆっくりとベールを外す。それからジェームズの方に向き直った。
「私はダークエルフです、今まで隠していましたが、それを暴漢に知られました」
それだけ知れば、色々と合点がいくだろう。ジェームズが頷いた。
「なるほど……お辛いご決断でしたでしょう、お二人は何も悪くないというのに」
ジェームズは、小さくため息をついた。オリーの為に怒ってくれているのだ。差別意識も無さそうである。やはりこの人に仕立てを任せたい。




