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猫紳士たるもの、猫じゃらしで遊ばれるなどありえません。  作者: 高岩 唯丑
第一話

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二人の思い

「すっかり遅くなってしまいました、申し訳ありません」


 シビリティパーソンズ·サロンを出ると、すぐにオリビアに謝罪する。周りはすっかり暗くなり、街の街灯が灯っているのが見える。松明をつけているようには見えない。おそらくはファンタジー世界らしく、魔法石とかを光らせているのかもしれない。まぁそれは良いとして。


「付き合っていただかなくても、帰って頂いて良かったのに」


 何から何まで付き合わせてしまい、オリビアには感謝している。だからこそ親切心のつもりでそう口にしたのだが。当のオリビアは頬を膨らませて、不機嫌そうになってしまう。


「申し訳ありません、なにか失礼を申しましたでしょうか」


「ミケさん、ヒドイですよ、もう友達、仲間……ごにょごにょ」


 語尾がなにかを誤魔化すように、声が小さくなる。それから元の調子を取り戻してオリビアが続けた。


「先に帰ってよかっただなんて」


 仲間という言葉に、心がじんわりとする感覚を覚える。それから望郷の想いが頭をもたげ、ふと記憶が過ぎる。何匹かの私とは違う毛色のケットシーが、見送るようにこちらを眺めている。私はそこから少しだけ振り向きながら、その場を離れていく。いつの記憶だったか。いや今はそれはいい。


「申し訳ありません……そうですよね、私は何と酷い事を」


 とにかく頭を下げる。きちんと謝罪して、そう……できればこれからも一緒に、パーティーにならないかと、誘いたい。今日会ったばかりで、ナンパな猫だと思われてしまうかもしれないが。なんとなく……いや確かに一緒にいて楽しかった。容易に共に冒険をする未来を想像できたのだ。


「今ハッキリとわかりました、オリビア嬢……オリビア嬢?」


 頭を上げて、意を決して、口を開いたが肝心のオリビアが眼の前から居なくなってしまっていた。


「フラれてしまった……のですね」


 取り返しのつかないことを。オリビアは怒って去ってしまったらしい。


「私は何と愚かな猫なのか」


 遅すぎる。思えばもっと前に、自覚してお誘いするチャンスはあったのだ。


「……なら、これからも一緒に」


 ふとオリビアの言葉を思い出す。門の前。街へ入る前に、オリビアは確かにそう言った。一緒に、その言葉の続きは、私と思いが同じだったのでは。


「オリビア嬢は、私とこれからも行動を共にすることを望んでいた」


 先程怒っていた事も踏まえれば、その可能性は高い。それに。


「音もなく居なくなるなんて」


 あり得ない。だとしたら、私が頭を下げている間に何かあった。


「連れ去られた……ということでしょうか」

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