表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫紳士たるもの、猫じゃらしで遊ばれるなどありえません。  作者: 高岩 唯丑
第一話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/73

一悶着

 冒険者ギルドの中。少し酒場らしさのある、机や椅子が乱雑に置かれている。そこにはガラの悪そうな冒険者たちが、いくつかのグループに分かれてたむろっていた。手には例に漏れずお酒の入っているであろう木製のジョッキ。そして、入ってきた私たちをギロリと睨む。オリビアが緊張した意味が少しわかった気がした。


 とりあえず、目を合わせないようにする為に、ギルドの奥に目を向ける。そこには受付があり、受付嬢が座ってこちらの様子をうかがっていた。


「あちら……です……か」


 わざわざ目を合わせないように受付の方に目を向けたのに、一つの冒険者のグループが私の視界にわざわざ入ってくる。コメディ映画のようなフレームインの仕方だ。


「おぉい! 新人がよぉ! 俺様にガンつけやがったぜぇ!」


 いや、そっちから私の視界に入ってきたのだろう。もうちょっとマトモなイチャモンの付け方はできないのだろうか。コメディ映画の登場人物なのか?


「そ、そんなっ、睨んでなんて」


 オリビアが慌てて、声を上げる。正論ではあるが、コイツらに通用するわけがない。


「俺様が間違ってたって言いたいのかぁ?!」


 冒険者のグループのリーダーらしき男がヒートアップする。というかオリビアは、こんな所でよく今まで無事だったな。


 すぐにオリビアが何かを言い返そうとしたが、それを制して一歩前に出る。


「失礼いたしました、その様なつもりはありませんでしたが、不快な思いをさせてしまったのであれば、謝罪いたしましょう」


 私は恭しく、頭を下げる。これで引いてくれればいいが。


「謝ったぜぇ、非を認めるってこったなぁ!」


「何卒、ご容赦を」


 私は頭を上げずに言葉を重ねる。


「じゃあ、詫びの印にこのシスターのねぇちゃんに一晩相手をしてもらおうかぁ、ずっと味わってみたかったんだ、グヘヘッ」


 リーダー男が私の脇をすり抜けて、オリビアに近づく。しまった。そう思い頭を上げて振り返ると、オリビアの腕を掴み上げているところだった。


「きゃっ……やめてください! ミケさん」


 涙を浮かべた目で、オリビアが私を見つめてくる。遅かった。紳士としてもっと早く行動すべきだった。オリビア嬢に怖い思いをさせてしまった。悔やむ思いを胸に抱きながら、床を蹴り動き出す。


 素早く男の側に移動して飛び上がり、頭を猫パンチで下方向に押し付ける。情で爪を立てないでおいた。肉球でそれほどダメージはないだろう。


「うおぉ」


 男は声を上げて、前のめりによろけた。人間は倒れそうになると防御行動として、床に手をつこうとする。男も当然、その反応を示して床に手をつこうと、オリビアを放した。すかさず、オリビアの腰に手を当てる。


「失礼、オリビア嬢、こちらへどうぞ」


 オリビア嬢を、男とその一味から離すように、私の背後にエスコートする。オリビアは少し驚いた表情をするが、安心させるために私は微笑んでみせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ