表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫紳士たるもの、猫じゃらしで遊ばれるなどありえません。  作者: 高岩 唯丑
第一話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/74

お金の取り分

「さぁ次は何をしますか?」


 まだ少し笑っていた余韻を残した口調で問いかけてくるオリビア。それに対して、即座に答える。


「服を、格好を何とかしたいです……自身の毛皮があるにせよ、裸は良くありません」


 そう、貸してもらったマントはあるが、獣人として振る舞うなら今の格好はただの痴漢だ。裸にコートを着ているような変態。紳士としてこれはいただけない。


「そうですね、確かにです……それでは素材を換金をして装備を見に行きましょうか」


「あぁっ、失念しておりました、素材の換金……」


 服の事で頭が一杯で、素材の事を忘れていた。換金しなければお金もない……お金!


「大事な事を失念しておりました! 私には手持ちが……お金がありません」


 先程まで森で暮らしていたモンスターである。お金なんて一銭も、それ以前にどんな通貨が流通しているのかさえ。


 私が頭を抱えて悶えていると、オリビアが驚いた表情をしていることに気づく。なんだろう。


「あぁ、すみません、今まで気にしていませんでしたけど、そういえばミケさんはお金を知っているんですね……その、森の中で引きこもっていたのに」


 ここでモンスターなのにと言う訳にもいかず、オリビアの語尾がとても小さくなる。そういえば私はモンスターだった。人間として経済活動に参加していたのだから、通貨を知っていて当たり前なのだが。ややこしいが、頭を整理して間違えないようにしなければ。


「それは知る機会が沢山ありましたので、森に入ってきた人が話している内容を聞いたりなどで」


「あぁ、ミケさんは頭が良いですもんね」


 私は微笑みだけ返しておく。今後、前世の記憶についてはどう扱うべきか、考えておくだけはしておいたほうが良いのかもしれない。


「ところで、お金はどうすれば、素材はオリビア嬢の成果ですし」


 本当にそこは問題だった。私は横から掻っ攫っただけだ。助けたとはいえである。


「何を言っているんですか! 素材の換金はミケさんのお金ですし、毒消しの薬草の報酬だって、一部はミケさんのです」


 当たり前だという表情で、オリビアがそんな事を口にする。どこまでお人好しなのだ、このお嬢さんは。

だがしかし、今回に限っては、一度目に関しては、その言葉に甘えてしまって良いものだろうか。スマートにお断り申し上げたいのだが、そうも言ってられない恰好なのだ。


「……素材のお金だけ、今回だけは頂戴させて頂いてもよろしいでしょうか」


「はい、当然の事です、助けてもらったんですからそのお礼としては少ないくらいで」


「ありがとうございます」


 私は最大限きれいな姿勢をして、頭を下げる。見せられる最大限の誠意を込める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ