お金の取り分
「さぁ次は何をしますか?」
まだ少し笑っていた余韻を残した口調で問いかけてくるオリビア。それに対して、即座に答える。
「服を、格好を何とかしたいです……自身の毛皮があるにせよ、裸は良くありません」
そう、貸してもらったマントはあるが、獣人として振る舞うなら今の格好はただの痴漢だ。裸にコートを着ているような変態。紳士としてこれはいただけない。
「そうですね、確かにです……それでは素材を換金をして装備を見に行きましょうか」
「あぁっ、失念しておりました、素材の換金……」
服の事で頭が一杯で、素材の事を忘れていた。換金しなければお金もない……お金!
「大事な事を失念しておりました! 私には手持ちが……お金がありません」
先程まで森で暮らしていたモンスターである。お金なんて一銭も、それ以前にどんな通貨が流通しているのかさえ。
私が頭を抱えて悶えていると、オリビアが驚いた表情をしていることに気づく。なんだろう。
「あぁ、すみません、今まで気にしていませんでしたけど、そういえばミケさんはお金を知っているんですね……その、森の中で引きこもっていたのに」
ここでモンスターなのにと言う訳にもいかず、オリビアの語尾がとても小さくなる。そういえば私はモンスターだった。人間として経済活動に参加していたのだから、通貨を知っていて当たり前なのだが。ややこしいが、頭を整理して間違えないようにしなければ。
「それは知る機会が沢山ありましたので、森に入ってきた人が話している内容を聞いたりなどで」
「あぁ、ミケさんは頭が良いですもんね」
私は微笑みだけ返しておく。今後、前世の記憶についてはどう扱うべきか、考えておくだけはしておいたほうが良いのかもしれない。
「ところで、お金はどうすれば、素材はオリビア嬢の成果ですし」
本当にそこは問題だった。私は横から掻っ攫っただけだ。助けたとはいえである。
「何を言っているんですか! 素材の換金はミケさんのお金ですし、毒消しの薬草の報酬だって、一部はミケさんのです」
当たり前だという表情で、オリビアがそんな事を口にする。どこまでお人好しなのだ、このお嬢さんは。
だがしかし、今回に限っては、一度目に関しては、その言葉に甘えてしまって良いものだろうか。スマートにお断り申し上げたいのだが、そうも言ってられない恰好なのだ。
「……素材のお金だけ、今回だけは頂戴させて頂いてもよろしいでしょうか」
「はい、当然の事です、助けてもらったんですからそのお礼としては少ないくらいで」
「ありがとうございます」
私は最大限きれいな姿勢をして、頭を下げる。見せられる最大限の誠意を込める。




