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猫紳士たるもの、猫じゃらしで遊ばれるなどありえません。  作者: 高岩 唯丑
第一話

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イタズラ

「ちょ、ちょっと、おまえ……モンスターじゃないよな?」


 予想通り、私を見た門番が駆け寄ってくる。怪訝そうな表情だ。仕方がない。実際はモンスターだが、それを獣人と偽って街に入るのだから。


「私ですか? 獣人です……少し毛深いのがコンプレックスですが」


 少しジョークを交えて微笑んだあと、少し大げさに演技かかった素振りで頭を下げる。こんな事ができるモンスターはいないであろう。


 頭を上げてみると、門番の表情は少し戸惑った物だった。判断に迷っている、という感じだろうか。


「あぁ……そ、うか」


 門番はもう一人居るが、偶然人通りが多いタイミングだ。二人で怪しい者の確認をしなければいけないのだろう。門番はすこし周りと私を見比べて、迷っている。


「門番さん、私がこの方の事を保証します」


 オリビアがそう口にすると、門番が「あぁ、よく見かけるシスターの」と呟いた。何度も門を使っているおかげで、顔を覚えられていたようだ。


「……通っていいぞ」


 門番が口にして、早足で持ち場に戻っていた。


「ありがとうございます」


 聞こえないと思うが、きちんと頭を下げてお礼を言うのが紳士というものだ。


「さぁ、通り抜けてしまいましょう」


 安心した声色をしたオリビア。表情は何でもないようにしているが、内心は違うのかもしれない。私のせいで、余計な気苦労をかけてしまったな。


 二人して、何でもないようにしながら、門を通り抜けた。


「ふぅー」


 門から離れてから、オリビアが大きく息を吐きだした。


「余計な気苦労をかけて、申し訳ありません」


 私が頭を下げると、オリビアが「気にしないでください!」と即座に否定する。もう定番のやりとりといった感じになってきた気がする。そのおかげで、その言葉の一往復だけで、話題が先ほどの門でのことに戻っていく。


「ちょっと疑われていましたねぇ」


 なんだろう。オリビアの顔が少し楽しそうな表情に見えなくもない。意外とこのような事を楽しめるタイプだったのだろうか。


「そうですね、本当に」


 そう口にしたあと、少し笑いが漏れてしまう。私も少し楽しかった。不謹慎かもしれないが。

 私のそれを見て、オリビアも少しだけ笑った。そうして二人してイタズラを成功させた時のように、密やかに笑い合う。

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