復習
オリビアから受け取ったマントを羽織ってみる。体は隠してフードは被らず、顔だけ出した状態にしてみた。顔を隠すようにするのはやましい事をしているようで、気が引けたのだ。
「どうでしょう? 獣人に見えますか?」
「はい、少なくともモンスターには見えません」
しっかりとした表情でオリビアが言葉を返してくる。自信がないという感じではない。
「ありがとうございます」
このお礼は何とか返したいが、当分先になってしまうだろう。悔しいが。服を手に入れ、冒険者になり、資金を手にしてこの恩を返すのだ。
「早速参りましょうか、オリビア嬢」
私は恭しく頭を下げる。格好のせいであまり締まらないな。
「はい」
オリビアが嬉しそうに頷いた。それを確認したあと、私は門の方に向かって歩き始める。オリビアも少し遅れて歩き始めて、すぐに隣に並んだ。
「ところでモンスターについて、復習をさせて頂きたいのですがよろしいですか?」
「はい、わかる範囲でお答えします」
聞いた話から私自身で考えて補完した内容もあるため、門にたどり着くまでにハッキリさせておきたい。
「ありがとうございます……まずはモンスターと言われるものは、人間に敵対するもの、人間を食料として見ているもの、ですね」
「はい、その認識で間違いありません」
「分類として人間では無いものの、友好関係で人間という扱いを受けているのが、エルフとドワーフ、そして獣人」
「はい」
私はケットシー。モンスターに分類される。人間を食料としてみているから。もちろん、私は人間を食べたいとは思わない。
「獣人の中で人間を食べるのが好きな人もいます、そのせいで獣人は差別を受けやすいです……その他の亜人も様々な理由で差別を受けやすいんですが」
オリビアが視線を前に向けたまま、そんな事を言う。自分の事、なんだろう。
「実は話していませんでしたが、モンスターの中にも稀に人間へ有効的な個体もいるんです、ミケさんみたいな」
こちらに顔を向けてオリビアが一度笑顔を見せる。それから視線を前方に戻すと、話を続けた。
「その様な多様性があるおかげで、法整備が進んでいないのが現状です」
「つまり、私はやはり獣人のフリをすべきという事ですね」
「はい、自分から正体を明かすとしても、バレてしまうとしても、その時までに信頼を獲得しておいたほうがいいです……なので冒険者は良い選択だと思います」
「わかりました、ありがとうございます、何から何まで本当に、この恩は必ずお返しいたしますので」
「……なら、これからも一緒に」
逡巡したかのように、一瞬だけ無言になり、オリビアは何かを言いかけた。しかし、門へとたどり着いてしまい、門番に声をかけられ、言葉は遮られてしまった。




