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猫紳士たるもの、猫じゃらしで遊ばれるなどありえません。  作者: 高岩 唯丑
1巻エピローグ

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猫じゃらしで遊ばれるなど、ありえません!

「いえ、そんなつもりは」


 少し忘れていたが、しかし。


「ベルト夫妻の元へ戻らないと決めたのですか?」


 その問いかけで、キリュナは少し悩む素振りを見せる。決めたわけではなさそうだが。


「まだ決めたわけじゃない……大事なものが増えるっていうのは、大変だな」


 キリュナは少し顔を背けて、そんな風に呟いた。大事な物。私達を仲間と認識してくれているのであれば嬉しい。


「ミケ、浮気は許しませんからね」


 突然の背後からのオリーの怒気が含まれた声に、体が強張る。いきなりどうして。よく分からないが、振り向くことを拒否する本能を押しのけて、オリーの方に身体を向けた。


「浮気? 私はそんな事いたしませんよ」


「そうですか? よかった」


 オリーは満面の笑みを浮かべる。浮かべているはずなのに、何処かまだ怒っているように感じるのは、私の心が弱いからか。


「なぁ、僕にもプレゼントしてくれよ」


 キリュナの声とともに、不意に腕へと暖かくて柔らかい何かが触れる。そちらを見ると、キリュナが私の腕に自らの腕を絡ませていた。


「プレゼント?」


 再びのオリーの怒気が含まれた声。私は悪くないのでは。そう思いつつ、訂正するように声を上げる。


「クランの制服を支給しましょう……マーク様」


 別に逃げるつもりではないのだが、キリュナの拘束から抜け出て、マークの前まで移動する。


「キリュナ、どういう……」


「僕にもまだ芽はある……」


 なんだかオリーとキリュナの刺々しい会話が聞こえてくるが、シビリティパーソンとして、乙女の秘め事に聞き耳を立てるなど、あってはならない。ダカラキカナイ。


「キリュナ様、というお名前でよろしかったでしょうか、あの方の仕立てもご依頼していただけるという事でしょうか?」


「はい、お願いします」


 ちょっと振り返るのが怖いが、勇気を出して振り返り、キリュナに声をかける。


「なにか希望はありますか? キリュナ様」


 オリーとキリュナは、もう仲よさげに並んで立っていたのを見て少し安心する。何を話していたか分からないが、仲がいいのは良いことだ。


「希望かぁ……すぐには……でもその帽子と羽飾りは、必須って感じだよな」


 キリュナの言葉で、ふとオリーの頭に目が行く。そういえば、オリーとおそろいの羽飾り。ジェームズの粋なはからいなのだろう。これは。


「ん? どうした?」


「ミケ?」


 オリーとキリュナに問いかけられて、思考をまとめる。これが良いのでは。


「思いつきました、カフェの名前と、クラン名を」


 私は背筋を伸ばし、腰に両手を当てる。


「カフェの名前を、カフェ羽飾りと致しましょう、そして!」


 私は帽子のツバに右手をかけて、目を隠すように少し下げる。


「我らのクラン名は」


 大事な所。少し言葉をためて、可能な限り良い声を出すように努める。


「フェザーオーナメント」


 そして、口の端をあげるように、ちょっとニヒルに笑う。決まった。カッコイイ。


 あれ? 左手に持っていた傘の感触が……。


「うにゃうにゃうにゃ!」


 ににゅあ、にゃあ、にゃああああん


「はっ、失礼、取り乱しました」


 また、良い所を邪魔された。猫の習性に。私は自分を惑わせた物に視線を向ける。転がっている猫じゃらし。柄の部分に見覚えがある。またか。


「ふふふ、やっぱりミケはそうじゃなきゃです」


「そのギャップも、まぁ……僕は」


 それぞれがそれぞれの思惑の表情を浮かべて、私に視線を向けていた。少なくともカッコイイシビリティパーソンに向けるものではない。


 めげないぞ。私は猫の習性に打ち勝って、立派なシビリティパーソンになる。


 猫じゃらしで遊ばれるなど、ありえません!

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