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猫紳士たるもの、猫じゃらしで遊ばれるなどありえません。  作者: 高岩 唯丑
1巻エピローグ

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本物の仕事

「お久しぶりでございます、ミケ様」


 ドアを開けた先には、シビリティパーソンズ・サロンの見習い、マークが立っていた。思わぬ人物の訪問に、一瞬思考が停止してしまう。


「マーク様……どうして」


 やっとの思いで声を出して、こんな事を聞いてしまった。普通に考えれば、出来上がったスーツを届けに来てくれたのだろう。しかし、早すぎないだろうか。


「もちろんスーツをお届けにまいりました」


 マークはキチンと背筋を伸ばし、そう口にした後、綺麗なお辞儀を見せる。その様にしてもらったのであれば、こちらも礼を尽くすべきだろう。


「驚いてしまい、失礼な態度を……失礼いたしました」


 私もマークに見倣って、お辞儀をする。


「……まずはお入りください」


 何にせよ、入口で立たせたまま話を聞く訳にもいかない。マークを店に招き入れると、カウンター席に案内する。


「ご丁寧にありがとうございます」


 やはり丁寧にお礼をした後、マークは席についた。少し迷いつつ、私もマークの隣に腰掛ける。


「……とても、早いですね、驚いてしまって」


 正直な感想。もっと時間がかかると思っていた。しかし、予想よりかなり早い仕上がり。もしや。


「もしや、私のスーツだけを先に届けに来ていただいたのですか?」


 ジェームズであれば、そういう事もしてくれるかもしれない。どれだけの手間になろうと、一つ一つの仕事に全力で向き合う尊敬すべきシビリティパーソンであるジェームズならば。


「いえ、当店はその様な半端な仕事はいたしません……オリビア様のご注文と合わせてお持ちいたしました」


「本当ですか!」


 珍しく大きい声で、オリーが嬉しそうに声を上げた。余程嬉しかったのだろう。バーカウンター内から小走りで出てきて、マークの前に立つ。


「はしたないですよ」


 一応注意するが、そんなのお構いなしに、オリーがせがむように目を輝かせて前傾姿勢になった。それを見てマークが微笑む。


「こちらです」


 マークが自らのマジックバックから、スーツカバーのかかったスーツを取り出してオリビアに渡す。


「早速袖を通してみますね!」


 返事も聞かずに、オリーは受け取ったスーツを持って奥の部屋へと消えていってしまった。


「申し訳ありません」


「いえ、喜んでいただけるのは仕立て屋冥利につきますから」


 本当にマークが嬉しそうに微笑む。失礼になっていなければ、まぁ良いとしよう。


「それにしても、とても早かったですね……お届けしたオリビアの採寸の情報も素人が測ったもので、無茶な話でしたのに」


 顔も出さず、手紙で送ってしまったので、なかなか無茶振りであったと思う。ジェームズの返事では、問題ないと書かれていたが。


「ミケ様の採寸は正確にさせていただかなければなりませんでしたが、オリビア様はジェームズの目測で、採寸は必要ありませんでした……加えて、ジェームズはオリビア様のスーツも必要になると考えていたようで、ミケ様のご注文と同時に進めておりました」


 おそるべし仕立て屋、ジェームズ。これが本物の仕事。さすがあらゆるシビリティパーソン御用達の店だけある。

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