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ランプの魔人と真実の愛  作者: 礼三


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3/13

第一夜 「ルゥルゥと魔法のランプ」3

 次の日、ルゥルゥに付いていた汚れを払ってくれた少女がランプを携えルゥルゥの元へ訪れた。

 彼女はルゥルゥへ残飯であるピタパン(中が空洞になっている平たく丸いパン)も持ってきていた。

「中身に具を入れたかったんだけど…。もうなくて…。アイツが怒ってルゥルゥにはご飯を与えるなって…」

 申し訳なさそうに少女は眉を中央に寄せる。

「だから、私が行ったときに全てなかったのね…。良かった…。今日は少なくて食べれていない子がいるのではないかしら?って思っていたのよ」

 孤児のリーダーである少年の目を盗んで、わざわざ食事を運んでくれた少女へルゥルゥは気遣いを示す。

「貴女は食べれたの?」

 少女はお腹をポンポンと叩いた。その姿をみてルゥルゥは無邪気に笑った。

「私のためにありがとう…」

 ルゥルゥは感謝を伝える。鼻をぽりぽりと指で掻きながら、照れて頬がほんのり赤くなった少女は昨日のことを話した。

「あれからアイツがランプを何度も擦っても叩いても蹴っても…。うんともすんとも…。何もなかったんだ…」

 ランプを奪った少年は賢者がルゥルゥへ教えたとおり、何度もランプに触れたが、ランプから何も出てこなかった。そのうち、腹を立てた少年はランプを砂地へ放り投げた。

 自分ならば奇跡が起こるかもしれないと他の子供たちもランプを掴み、それぞれ試してみたが何も起こらなかったという。

「ごめん…。ルゥルゥが貰ったものなのに…。アタイも先に摩ってみたんだよ…」

 孤児たちは皆、好奇心でランプを手にしたのだろう…。ルゥルゥは子供たちを慮った。

「いいのよ。皆んな、誰しも願いごとがあるものだし…」

 少女はお人好しが過ぎるルゥルゥへ、時々憤りを感じることがあった。それでも、ルゥルゥを嫌うことはなかった。

 ランプを奪った少年も同じような感情を抱いており、他の子たちも皆そうだ。

 ルゥルゥはここで生きていくには心根が綺麗だった。この環境に慣れ汚れてしまった自分たちとは違った存在なのだ。

 ルゥルゥの手にランプは戻ってきた。

「ごめんね…。私が手放したばかりに酷い目にあったわね…」

 邪険にされたランプが親に置き捨てられた自分の姿と重なり、ルゥルゥは悲しくなって泣いた。

 もちろん、ルゥルゥの両親は娘の将来を心配して断腸の決断であり行動へ至ったのであったのだろうが…。

 土埃があちらこちらについている。投げ捨てられたときに付着したのだろうか。他にも古くからあるのだろう油汚れも気になる。

 手で袖を引っ張り、ルゥルゥはランプの汚れを拭いてやった。

「あなたはしっかり働いたのね…。油がこびりついているわ。今すぐ綺麗にしてあげるわね…」

 鈍色のランプが黄金へ光り輝く。ルゥルゥが目を開けてられないほどの眩しさを放ち宙へ踊った。

 見る間に美しい金色が蘇り、ランプの先からモクモクと白煙が立ちあがった。そのうち、それは人型になり…。

 褐色肌の体躯のしっかりとした顔立ちの美しい青年が現れた。厚く隆々とした胸板をこれ見よがしに見せつけている。

 涼しげな目元、赤色の眼差しは見るものによっては禍々しい印象を持つかもしれないが、ルゥルゥは紅玉を思い浮かべ鮮やかで綺麗だと感じた。

 薄い唇は同じく鮮血のような生々しい濡れたような赤色をしている。ターバンを巻いているので髪型は分からないが、おそらく全ての髪を刈りあげているようだ。

 身体つきが立派で妖艶な魔人が登場した。

「主人…。貴女の願いを叶えよう…」

 地面へ膝をつき胸へ恭しく手を当てて、小さき主人を見仰ぐ魔人…。

 近くにいた少女は驚いたその光景を見守っていた。

 ルゥルゥは真っ直ぐに魔人を見つめて願いを告げた。

「お父様とお母様に会いたい…」

 魔人は端正な顔を顰めて伝えた。

「主人、貴女のご両親はもうこの世にいない…。既に天へ召されたようだ…。私の管轄を離れており、私は天へは介入できない」

 ルゥルゥの瞳からは大粒の涙が流れ落ちる。魔人はルゥルゥへ穏やかな面持ちで微笑み続けた。

「主人の記憶から探り、ご両親の幻で良ければ具現化できるが…。それでも構わないだろうか?」

 魔人の声は低く耳へ響く。心地のよい声だった。

「必要ないわ…。幻は幻であって…。お父様、お母様ではないもの…。意味がないわ…」

 畏っている魔人を前にルゥルゥは悩んだ。他に願いが思い当たらなかったからだ。

 しばらく腕を組み、真剣に迷っている姿を魔人は見守っていた。

 この娘は世界に嫌気を覚えていた自分へ、三百年引き篭もって以来、初めて労いの言葉をかけてくれたものだ。


 かけられた呪いなどどうでもいい!

 もう人間なんかに仕えるものか!


 そう決めていた魔人が興味を持つ程、純粋な温もりがランプを通して伝わってきた。

「あなたのお名前を教えてくれないかしら?これは願いになるの?」

 ルゥルゥが顔を見上げて尋ねる。

 風塵に晒されて薄汚れているが、愛らしい顔立ちをしているルゥルゥへ既に絆されている魔人は素直に答えた。

「いや…。私の真名を伝えるわけではないので、願いには入らない。私の名前はそうだな…。便宜上、ジンと呼んでいただこう…」

「では…。ジン…。無理なら断ってもらって良いのだけど…。あなた…。私の家族になってもらえないかしら?家族になって愛してほしいの…」


 不思議な願いをするものだ…。


 多くの女性から愛を求められてきたが、今回は意味合いが違う。


 家族のように愛してほしい…。


「それが主人の願いとあらば…」

 魔人がルゥルゥへ首を垂れる。ルゥルゥの一つ目の願いが受け入れられた。

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