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ランプの魔人と真実の愛  作者: 礼三


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13/13

物語の後日談

「そうして、人間へと戻ったハリール…。夫婦となったアラーウッディーンとルゥルゥを見守りながら幸せな生涯を過ごし、人間としての生を全うしたのでした…。おしまい…」

 床に敷かれた大きな布団の上で、父親は二人の子供たちへ物語を読み聞かせていた。

 上の娘がシーツを飛び跳ねて父親へ質問を投げかける。

「ねぇ?お父さま…。ジャアファルはどうなったのかしら?」

「うーん…。そうだね…。どうなったんだろう?」

 一向に眠る様子のない子供たちに、父親は苦笑いを返した。下の息子が寝転んだまま頬杖をついて両足をバタバタと交互に動かす。

「ボクは奥さんと一緒に魔法の絨毯に乗って世界へ冒険にでたんだと思うよ!」

 想像した独自の展開を笑顔で弟が告げると、姉は頬を膨らませて反論した。

「えっ?魔塔の賢者の後継者になったんじゃないの?」

 意見の食い違いで姉弟喧嘩が起きないように、父親は話題を変える。

「お前はジャアファルが好きなのかい?」

 娘は誘導されたことに気づかず、父親からの問いかけへ素直に答えた。

「うん!だって、自分がいじめられていたのに、それでもいじめっ子を助けてカッコいいじゃない?」

 目をキラキラさせて話す娘が愛おしい。思わず、父親は抱き寄せた。

「それって、ふところが深いって言うんだよね?でも、ボクはルゥルゥが好きだな…。とても優しいし…。可愛らしい子なんでしょう?会ってみたいなぁ…」

 弟が父親の服の裾を引っ張り抱っこをせがむ。姉を羨ましく思ったからだ。姉は人差し指で右の下まぶたを引きさげた。どうやら、この場所を譲る気はないようだった。

 喧嘩勃発の空気を醸し出している。父親の背中に汗が浮かぶ。

「ふふ…。色々と解釈があって面白いわね…」

 そこへ部屋にやって来た母親が弟の両脇へ腕を滑らせて抱きあげる。

「お母さまはジャアファルがどうなったと思う?」

 息子が可愛らしく微笑むので、母親も釣られて満面の笑みを向けた。

「そうね…。どちらにせよ…。幸せに暮らせてたらいいなぁって思うわ…」

「僕等みたいにね…」

 夫が妻を仰いで伝える。

 夫の優しい言葉を聞き、ヌーラの心の奥底へ不安が過ぎってしまう。


 この世界へ戻って、ヌーラは愛してやまないこの男を探しだし添い遂げた。

 だが、果たしてこの世界は自分が帰りたかった世界なのだろうが…。

『ルゥルゥと魔法のランプ』はヌーラが以前認知していた内容と変わっていたのだ。

 幼いヌーラが読んだ話は、ルゥルゥは三回目のお願いを魔人へ伝えることなく、魔人と幸せに暮らしたという結末であった。

 夫へ尋ねると、昔から先ほど子供たちへ読み聞かせていた話だったと答える。

 この世界が本の中だったとして、戻ってきた場所が本当に以前と同じ物語の世界だという確証はないとヌーラは感じていた。

 物語の数だけ世界が存在するのなら…。結末が変われば、また違う世界が存在すると言えないだろうか?

 少なくとも、この世界では一冊の本のあらすじが変わっている…。


「どうしたんだい?頷いてくれないのか?」

 夫が心配そうにヌーラの腕を引き寄せた。

「いいえ…。私は幸せだわ…」

 ヌーラの言葉に満足して、夫は妻へ口づけた。子供たちは嬉しそうに夫婦を見守り、両親からの接吻をねだった。柔らかな頬にヌーラは唇を寄せた。


 きっと…。これがルゥルゥから愛する魔人の魔力を奪って戻ってきた代償なのだろう。

 この世界へ戻るために他の男にも体を許した…。


 全てはヌーラの行動の結果なのだ。

 ヌーラは一生この違和感に苛まれ続けるだろう…。


 せめて…。

 絵本の内容のとおり、自分が旅していた世界のルゥルゥやハリールが幸せに暮らしてくれてたら心は晴れるのかもしれない。


 そんな気持ちを抱きながら、今夜も愛する男と子供たちに囲まれてヌーラは眠りにつくのだった。

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