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ランプの魔人と真実の愛  作者: 礼三


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第一夜 「ルゥルゥと魔法のランプ」1

 昔々…。

 この世の中心に偉大な魔法使いが集う魔塔が存在しました。

 あるとき、女の子がその魔塔の近くで両親に置き去りにされて、独りぼっちになってしまいました。

 女の子を哀れに思った魔法使いの一人が、その女の子へ魔法のランプを授けてくれます。

 魔法のランプを摩るとランプの中から魔人が現れて願い事を三つ叶えてくれると教えてくれました。

 早速、女の子は魔人を呼び出して願いを唱えます。

「一人は寂しい…。家族なって私を愛してほしい」

「友達もたくさんほしいわ…。ずっともっと、寂しくなくなるでしょう?」

 魔人は女の子の願いを聞きいれてくれました。

「ご主人様…。最後の願いは何にいたしますか?」

「…」

 最後の一つを願うと魔人が消えてしまうと察した女の子は黙ってしまいました。

 結局、女の子は最後の願いを伝えることはありませんでした。魔人は女の子の願いどおり、家族として不自由のない生活を提供し、一緒に暮らしました。

 女の子はとても幸せな毎日を過ごしました。




 大陸のどこかへ聳え立つ魔塔。

 その存在は確かではない。

 広大な砂漠、砂嵐が吹き荒れる中心に隠されており、その魔塔には偉大なる魔法使いたちが集い、日々、魔法の研究をしているという。

 ある日の夕方、魔塔の近くで一人の女の子が両親に捨てられた。

 彼女の名はルゥルゥ…。

 真珠という意味を持つ。

 長年、子宝に恵まれなかった夫妻の間に生まれた子供だった。天からの授かり物として両親は命名して愛した。

 紺碧の夜空へ紫の星雲が宿ったような輝きを放つ瞳は神秘的で、闇のように深い漆黒の髪。珠のような肌へほんのりと赤い膨よかな唇。誰もが認める美しい少女であった。

 しかし、今はその見る影もない。艶やかだった髪は乾燥してボロボロに痛み、日に焼け肌は枯れ、痩せこけてしまっていた。

「ごめんね…。最後まで一緒にいてあげれなくて…」

「お前だけでも生き延びてほしいんだよ…」

 ルゥルゥは中流階級の家庭に育ったが、住み慣れた国で内乱が起き、その国の役職へ就いていた父親は政敵へ追われて、家族と共に命からがら国を逃げだした。

「嫌だ…。お父様とお母様と一緒に行く…」

 小さなルゥルゥを抱きしめ、母親は嗚咽したが乾いて涙もでなかった。

 すでに金銭も底をつき、手持ちの食料はない。このままでは親子共々行き倒れるだけだ。

 父親はルゥルゥの頭の上へ大きな手のひらを置く。温かな父の手で髪を撫でられるのがルゥルゥは大好きだった。

「そうだ…。なら、少しだけ、ここに居なさい。あとで迎えに来てあげるから…」

 歯茎を見せて大きく口を広げた父親は最後の力を振り絞り満面の笑顔を作った。

 守れない約束だと父親は重々承知していた。砂漠の山を何度も越え、親子を乗せて共に旅をしていた駱駝は途中で力尽きて死んでしまった。両親は町へ戻ることすら出来ない。



 ここは魔塔があるとされている場所だ。

 家族が最後に泊まった宿屋で、ある髭面の男が昼間から酒を呷り顔を真っ赤にして叫んでいた。

「オレは魔塔に住んでいたんだ!あそこは成人して一度でると普通の人は戻っていけない!何故っ!オレはあの場所を離れてしまったんだろうっ!」

 その男の話では魔塔には結界が張っており、通れるのは子供と魔法使いだけだそうだ。

 子供の頃、魔塔に拾われそこで成長した男は外の世界を見たいと飛び出した。育ての親だった魔法使いに言われたそうだ。

「お前は魔力を持っていない…。故に大人になったお前は二度とここへは戻れはしないだろう…」

 半笑いで皆が男を馬鹿にしながら話を聞き流していた。だが、ルゥルゥの父親は違った。

 国からの追手、残党狩りは未だ続いており、捕まるのも時間の問題だ。なけなしの金を男へ与えて、一縷の望みに縋った。せめて、ルゥルゥだけは銀色に鈍く光る新月刀タルワールの餌食になってほしくはない。

 男は魔塔での経験の一部始終を父親へ話した。

 魔塔には砂漠を放浪してきた子供が、時折漂着することがあるらしい。

 どうやら、魔塔は魔法の素質ある子供を受容れるようだ。見極めるため、子供は辿り着くことができるのだろう。

 魔法使いは魔法のことにしか興味がない。

 それでも時折、魔力のない子供も雑用係として雇われることもある。

 男はその例のようだった。

 また、魔法使いの中には流れ着いた子供を不憫に思うような奇特なものもおり、魔塔に入れなかった子供へは日除けのための粗末な天幕や食事の残飯が用意されるそうだ。魔法使いの少しばかり残った良心からだろう。

 残飯といえども大切な食事であり、男はそれで子供の頃しばらく食い繋いだらしい…。



 魔塔の魔法使いたちは各国の王から一目を置かれた集団で中立を保っており、どの国も手出しができなかった。父親は魔塔にルゥルゥの命を賭けた。そして、父親はその賭けに勝つことが出来たのだった。



 見渡す限り夕焼けで染まった黄金砂漠の海原へ放りだされたルゥルゥは呆然と赤く滲む空を眺めていた。すでに両親の姿はルゥルゥの視界から消えていた。

 ルゥルゥはいつしか約束通り両親が帰ってくると信じている。父親は約束を違えたことない人だった。

 背中へ落ちる影にルゥルゥは天を仰いだ。巨大な陰影がルゥルゥへ落ちる。

 振り返ると何もなかった場所へ巨塔が現れていた…。

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