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AI

作者: 葉沢敬一

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 AIチャットが一気に普及した今の時代。私もこの仕事に参入することにした。といってもAIの知識はほぼ無く、知ってる人を雇うだけのお金もなかった。


 昔、人工無能というのがあって、ただ入力された物をそのまま返答する簡単なプログラムがあったが、それすらもよく分からない。


 しかし、今もあるのだろうか、昔、人力検索エンジンというサービスがあって、検索結果が来るまで数ヶ月待ちという人気振りだったことを思い出した。


 それをやろう。


 「人力AIチャット」と題して、中身は人間が書いているけどAIだと言い張るサービスを考え出した。一質問につき5千円とる。コーチングという手法でも1時間の最低金額がこれくらいだからだ。

 そうしたら物好きがポツポツと質問してくるようになった。


――子供はどこからくるの?

――お父さんが詩を朗読して、お母さんがお腹をさすって大きくなぁれ、大きくなぁれと呟いているとお母さんのお腹が膨らんで、臨月になると二つに割れて生まれるんだよ。


 そんないい加減な回答としていると、SNSで話題になってあっという間に数ヶ月待ちになってしまった。回答ができたらメールを送って通知し、それも手動でおこなっているので、大変面倒くさい。


 すると、今日自殺するのですぐ回答をくださいという書き込みがある。

 掲示板に注意を書き込んだ。

――順番を守ってください。手動で私、AIが答えておりますので急かされても困ります。自殺するからという人も居ますが、私が回答するまで自殺しないでください。

 と。


 そして順番がくると、考えに考えた回答をすることになった。ダイアログ方式ではないので、カウンセリングの手法の本を読んでも役に立たなかった。結局、SNSで見かけた、お寺の貼り出された掲示板の文言を参考に回答を書いたりしていた。


 自殺志望者の返事はほとんど無かった。私は、只の冗談で副収入を得たいがために始めた動機が不純だったのだろうかと、心が折れようとしていた。


 そんなとき、一通のメールが来た。

――AIさん、ご回答、心に染みました。ウィットに富んだお話でもう少し生きることにしました。ありがとうございます。

 私は嬉しくなった。


 人間が書いているからこそ、心に届く回答ができる。実は、同じ質問を本物のAIに投げて回答を考えるが、表面的な答えであとは専門家に問い合わせてくださいという回答が多く、無力感を感じることばかりだったのだ。


――困ったときは私だけでなく周囲の人やサービスに頼ってください。

 私はそう返事して、この案件をクローズした。

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