2-6 殴られたかビンタされたかが問題
次はどこに行こうかな、なんて思ってたけど、行きたいところは特になかった。
一番行ってみたかったのが、魔法実践クラブと、攻撃突出クラブ。
二番目に行ってみたかったのが、魔法研究クラブ、武器制作クラブ。
けど、普通に考えて、四つも兼部するって大変じゃない? って思ったから、魔法実践クラブと攻撃突出クラブだけに入ることにした。
つまり、今、ものすごく暇!
やることないし、学校の庭のベンチに座って、何か考えようかな。
…………何について考えよう……。
※※※※※※※※※※
そういえば、らとちゃんとりたちゃんは、どこにいるんだろう?
学校の中を探検するのは楽しかったみたいで、すごくうれしそうに出かけて行ったんだよね。
確かに、こんなに広かったら、出かけてみたくなるよね。
「………た」
この学校、庭も広くて、最初びっくりした。
「……そこのあなた」
しかも、なんか果物が植えてあって、管理人さんに許可をもらったら、食べていいんだって!
すごいよね。
「ねぇ、聞いてるの?!」
急に怒った声が聞こえたと思ったら、ほっぺがひりひりした。
もしかして、殴られたの?
それとも、ビンタされたの?
どっちだ??
「あなた、確か明水だったわよね。ちょっと、あなたに話があるの」
左のほっぺが痛いってことは、右手で殴ったか、ビンタしたはず。
殴る場合は、手をグーにするから、ほっぺに当たるのは第二関節のところらへん。
ビンタの場合は、手をパーにするから、手のひらか、指。
手のひらで叩かれるか、指で叩かれるか、どっちの方が痛いんだろう…‥。
「あなた、第二皇子の秋月様に対して、失礼すぎじゃない?」
指で叩く方が、遠心力はあるはず。
でも、手のひらの方で叩くときには空洞ができるから、痛さ的には結構痛いと思う。
そもそも、ビンタなのかな?
殴っている可能性もあるはず。
殴るときには、空洞はできるのかな?
「秋月様と接するなら、もっと上品で、美しくならねばならないのよ」
叩かれたりした場合は、叩かれた場所が赤くなるから、まだ今ならあとが残っているかも!
「秋月様の横に並ぶのに、あなたはふさわしくないのよ!」
「あの」
「な、何かしら?」
「わたし、急いで寮に戻りたいんですけど」
「そんなこと言っても、戻らせないわよ」
はやく寮に戻って、鏡で確認したいのに。
こうなったら、魔法を使うか。
「"我の命に従い、現れよ。花魔法、薫香!"」
途端に、周囲に花の香りが立ちこめた。
この香りは相手の気を紛らわすもので、夢を見るような感じらしい。
その間に逃げると言うわけ。
※※※※※※※※※※
結局、鏡で見たけど、あとはもう消えていた。
うーん、どっちだったんだろう?
『明水。ただいま』
【ただいま〜】
「あ、らとちゃんとりたちゃん! おかえり。今日はどこに行ってたの?」
『ちょっと、庭を見に行ってた』
「庭? 何で?」
実は、らとちゃんに勝手に魔法を使うなって言われてたんだよね。
ばれたら、めっちゃ怒られる気がする。
【何でって、散歩してただけだよ?】
りたちゃんはいつもは可愛いのに、今はオーラが怖い。
『明水』
「………はい」
『何で、勝手に魔法を使ったの?』
「あの人たちから、逃げたかったから」
『でも、魔法を使う理由は、ないよね?』
「うん…………」
やっぱり、魔法使うべきじゃなかったな。
【らと。明水もしょんぼりしてるし、許してあげたら?】
『まあ、逃げようとしたならいいけど』
【どういうこと?】
『明水、最後にもう一回聞かせて。何で、魔法を使ったの?』
ここで、嘘ついたらばれる気がする。
正直に言わないと。
「あのね、らとちゃん。わたしね、秋月様大好き組の一人に叩かれたの」
『待って。……秋月様大好き組って何?』
「そのまんま。秋月様のこと大好きな人たちのグループ」
秋月様ってほんとにモテるなあって思った。
クラスの女子の三分の二は、秋月様のこと、好きなんだもん。
『次。叩かれたってどういうこと?』
「なんか、らとちゃんとりたちゃんはどこにいるんだろうって考えてたら、叩かれた」
あれは、びっくりしたなあ。
【……これって、明水が気づかなかっただけじゃない?】
『うん。多分そう』
急に叩いてくるんだもん。
『で、そのあとは?』
「殴られたのか、ビンタされたのか、わからなくて」
『ん?』
「あとが残ってるかもってなって、急いで確認しようと思って、魔法を使ってここに戻ってきた」
『【…………】』
「けど、あとは確認できなくて。どっちだったんだろうと思ってたら、らとちゃんとりたちゃんが帰ってきた」
【あ〜。なるほど】
『叩かれたところは痛い?』
「ううん。全然」
『だったら、特別に魔法でどんなふうに叩かれたか見せてあげるよ』
「え? どうやって?」
『明水、忘れたの? 月魔法のこと』
「月魔法?」
昔らとちゃんが何か言ってたような……。
えーっと、なんだっけ?
確か…………
『それでね、月の魔法っていうのは妖精が編み出した魔法なの』
『月の魔法は時間をあやつれて、時間を戻すことも、進めることも、止めることも、全部できる魔法』
「あー!!」
『思い出した?』
「うん。妖精が編み出した魔法で、時間をあやつれる魔法!!」
『そう、正解!』
思い出せてよかった〜。
「で、何に使うの?」
『明水、どんな魔法かよく考えてみて』
うーん。
妖精が編み出した、は関係ない。
時間をあやつれる、時間を戻せる、進めれる、止めれる、ってことは………。
「もしかして、過去に戻って確認するの?」
『それも、できるんだけど。過去は変えちゃいけないの』
【じゃあ、見つからないようにすればいいんじゃない?】
『けど、危険でしょ? もっといい方法があるよ』
「いい方法?」
『ここで、第二問! 明水、りたと会ったとき、どんな魔法を使った?』
りたちゃんとは、最初画面越しで話したんだよね。
で、そのあと転移で来て……。
「空間魔法の影像!」
『うん、正解』
【あー。そういえば、使ってたね】
「つまり、空間魔法の影像で画面出しながら、過去に戻るの?」
『惜しい! けど、もっと安全に、確実にするには?』
これ以上、安全な方法?
【あっ! わかった!】
「えっ?! どんな方法?」
【えっと、多分だけど、まず、空間魔法の影像で画面を出す】
『それで?』
【そのあとに、影像の中の時間だけ、戻す】
「おー!」
【あと、画面は両方が見える形じゃなくて、こちらから一方的に見えるようにしておく】
『大正解!』
けど、影像の中の時間だけ戻すって、めっちゃ難しい気がする。
らとちゃんが言ってるから、できるんだろうけど。




