3日目の朝
翌朝、食堂へ行くと既に朝食の準備がされていた。案の定、誰が用意したものかはわからない。しかし、危険がないことは昨日のうちに証明されているため、全員が何も言わずに完食していた。
聖理も同じように完食すると、昨夜みた夢に出てきた庭へと向かってみた。
夢の中でみたものと比べると、庭の手入れが行き届いていないようだが、たしかに同じ場所だ。
なんとなく、夢の中で彼らが歩いていた場所を、同じくらいの速度で歩いてみる。当然、それで何かがわかるなんて都合のいい話はない。
何でもいいから手がかりが欲しい状況だが、これといって何も無さそうだ。1人落胆していると、向こうー壁のように茂っている身長の低い木々の先ーから、水の音がした。その先に川か何かがあるようだ。
それだけのことなのに、頭の中が、「それだ」と忠告するように騒がしくなる。思えば、ここに来た初日に夢でみた少年に、いつかの学校帰りに絵で見かけた不可解な水の跡。気のせいと言ってしまえばそれまでだが、どうも水が関係しているような気がする。
(行ってみたい)
今自分が聞いている、水のある場所へ行ってみたい。何故かとてもそうしたくなった。幸い、壁としての役割を担っている木々は、苦労せずに間を抜けられそうだ。普段ならこんな思いつきのままに行動することはないが、旅先での隔離という、非日常が度重なった状況がそうさせたのか、迷いはなかった。
しかし、聖理がそれを実行することはできなかった。一歩前に踏み出そうとした時、屋敷内から大声がしたのだ。
『みんなー‼︎来てくれ!』
声の主は龍之介だ。一体何があったのかと、急いで玄関まで行くと、食堂から出てきた開と鉢合わせた。慌てている様子からして、他のメンバーを呼びに行こうとしていたようだ。
『何があったの?』
先ほどの声の主は龍之介だったが、この様子だと、開も何があったのか知っているようだ。すると開は一瞬間を置いてから答えた。
『…地下室の鍵らしいものが見つかったんだ』