絶体絶命?
聖理が食事を終えると、時刻はもう午後の1時になっていた。今食堂には聖理のほかに、引き継ぎ拓実と、先程入室して来た開の2人がいる。
杏奈はどこにいるのかわからないが、彼女はこのメンバーの中では最もここで過ごした時間が長い。おそらく彼女なりのルーティンがあるかもしれないのでそっとしておこう。
外部との連絡を試みて外へ出た2人は今頃どうしているだろうか。そんなことを考えていると、ちょうど玄関から扉を開く音が聞こえた。
食堂にいた3人はほぼ同時に立ち上がり、彼らを出迎えるために玄関へと向かう。この状況がいい方向へと向かうための何かを掴んで戻ってきてくれたことを期待しながらー。
しかし、2人は明らかに困惑した表情を貼り付けて佇んでいて、その様子からはとても成果が得られたようには見えなかった。また、2人とも状況を説明したがっているようだが、何と言えばわからないといった様子だ。
まだ何も言っていないが、聖理たちの目が言いたいことを語っていたようだ。言葉を探しながらといった様子で、2人がやっと言葉を発する。
「駅からこの建物までって、一本道でしたよね?」
奏多がようやく口を開いて出た言葉は報告ではなく、確認のようだ。
「ええ、この辺りはこの別荘以外、これといった建物なんかはないし、私たちも車で来た時は一本道でしたよ」
そんなのはここへ来た人間なら誰だって知っているはずだ。何故今更そんなことを確認する必要があるのだろうと思っていると、すぐに龍之介が頭を掻きながら補足する。
「あれから俺たちは駅に向けて戻ったんだ。お前の言う通り、一本道になってたからそこを通ってな。だけど、いくら歩いても駅らしいもんは見えてこねえし、おかしいなって思ってたら、いつのまにかこの別荘まで戻ってきてたんだよ」
『え、何それ?』という疑問が言葉にはならずに頭の中で発生する。それではまるでゲームの世界のような話だ。けれど実際、2人が外へ出ようと試みたものの、こうして出発地点へと戻ってきてしまったのは、残念ながら真実である。
「それって…」
「嘘だろ?」
「そんなことが…?」
誰もはっきりと言わなかったけれど、この場にいる全員が今の状況を理解したことが場の空気でわかる。
ー自分たちはこの別荘に閉じ込められたー