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謎の地下室と消えた案内人

 杏奈により案内され、6人は地下室の扉の前までやってきていた。


 地下室へと続く階段は、一階の廊下の突き当たりにある、よく見なければただの壁に見える回転扉の裏側に隠されていた。そこを降りていくと、木でできた古い扉がある。  

 

 見たところそれほど昔に作られたものではなさそうだが、どこか昭和を感じるようなデザインの扉だ。


 この中に柳田がいるかもしれないと仮定して来訪したため、代表して龍之介が扉をノックする。けれど返事はなく、物音ひとつしない。


 今度は中に入ろうと試みるが、鍵がかかっているようで、入室を扉に拒まれてしまう。


 押しても引いても反応しない扉との抗戦に全員が疲れ始めた頃、「一度上に戻ろう」と提案した奏多の意見に、他の5人も同意した。


 そして地上へと上がり、再び食堂へと入ると、全員がその場の異変に驚愕した。

 先程、この場所を離れた時には確かに何もなかったテーブルの上に、出来立ての朝食が6人分しっかり用意されていた。


 「おい、こんなのさっきまでなかったのに、俺たちが地下室に行ってる間に柳田が用意したのか?」


 だとしても、6人が席を外していたのはわずか5分程度だ。その間にここまでしっかり用意をするのは狙っても難しくはないだろうか。それに、朝食が用意されているということは、柳田は今この館にいるというのか。だとしたらなぜ自分たちの前に姿を見せない?


 けれど食堂で起こった異変はそれだけではないことに、聖理は気づく。さっきまでは何もなかった食堂の壁に、手紙が画鋲でとめられている。


 聖理は壁へと駆け寄り、手紙を手に取って中身を確認する。

内容は拍子抜けするほどシンプルなもので、大きな字で一文だけが書かれていた。




   『閉ざされた地下室の鍵を見つけ出せ』




 聖理に続いて手紙を確認した他の5人も怪訝な顔をする。この、『閉ざされた地下室』というのは、先程見に行った地下室のことで間違いないだろう。そして、扉が開かなかったのは鍵がかかっているからで、その鍵がどこかに隠されている。それを見つけ出せ、ということらしい。


 要求されていることの内容はいたって単純で、理解できる。だが、こんなことを自分たちにさせようとする理由はなんだろうか。そもそもこれは一体、誰によって仕組まれたことなのだろう。


 食堂を何とも形容しがたい空気が襲う。それを打ち破ったのは龍之介の声だった。


 「とにかく、柳田がいないんじゃ話を聞く奴もいないし、各自家の方に連絡を取ろう。それで今の状況を説明した上で、どういった経緯で今回俺たちがここに呼ばれたのか、改めて訊いてみよう。こんな訳のわからないとこに来てるってことは、お前たちも詳しい話は聞いてないんだろ?」


 他のメンバー(家出中の杏奈を除く)がほぼ同時に頷く。そう、何も納得のいく説明はされていない。あの、言い出したら止まらない孝宏の思いつきで、拒否することはできなくて、仕方がないから付き合ってあげた。ただそれだけのこと。


 それなのに、いつになったら終わるのかも定かではないミッションとやら。ここでの案内を務めるはずの人物は行方不明。その上、ここへ来るのに利用した車まで消えたとなれば、もはや事件だ。(人が1人消えているだけでも十分、事件であるはずだが)


 そもそも、柳田の姿が見当たらない今、目の前に用意された朝食すらもあやしい。食べても大丈夫なのだろうか?


 それに、このままずっとここにいては、食料や生活必需品も底をつく。ミッションや、例の謎の課題のことがあっても、外に出るか、外部と連絡を取らねばならないだろう。


 言い出した龍之介は当然で、昨夜帰るのを躊躇していたメンバーも、流石にこの意見には反対しないらしい。


 各々、外部と連絡を取ろうとスマホをいじり出す。聖理も父に電話をしようとするが、何度やっても繋がらない。ならばとメールの方も試してみたが、こちらもうまくいかない。どうやら他のメンバーも同じようだった。



 「何でだよ⁉︎これじゃあ外からの助けは来ないじゃないか!」

 


 龍之介は誰に向けたらいいのかわからない怒りをスマホにぶつけるかのように、手の中のそれに向かって叫ぶ。そして食堂を出て、どこかへ行こうとする。


 「どこへ行くんですか⁉︎」


 そんな彼を奏多の呼びかけが止める。


 「駅だよ。ここに来た時に使った。無人だったけど、ここにい続けるよりはマシだろ。待てば1人くらい誰かと会えるかもしれないし、探せば公衆電話もあるかもしれない。どちらにせよずっとここでくるかどうかもわからない助けを待つよりは可能性があるだろ」


 たしかにその通りだ。けれど、その駅はここから車で1時間以上かかっていた。それを徒歩で行くとなるとどれ程の時間がかかるか…。


 奏多もその意見には納得したが、今1人で行動するのは心配だから自分も行くと言い出し、龍之介と奏多の2人で外部との連絡を試みて駅へと向かうことになった。


 玄関で彼らを見送り、どうか2人が助けを呼んで無事に帰ってこれますようにと祈る。


 そんな大変な時にこんなことを考えるのはどうかと自分でも思うが、聖理はその間もずっと考えていた。









(地下室の鍵はどこにあるんだろう?ー)







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