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第八話 ミッション

 俺たち三人は傭兵に捕まった後、そのままこの都市の最深部であるスフィア家の城へと連れてこられた。


 都市のど真ん中にあるこの城はかなりの防衛設備で、もしドラゴンが空から襲ってきてもあそこにある大きな対空砲であっさりと撃ち落せてしまいそうだった。


 それ以外にも大量の防衛設備が城の周りに張り巡らされている中、俺たちは傭兵に囲まれながら進まされていた。



「誤解ですって! 俺たちはそこのお嬢さんとは何の繋がりもありません!」


「そうだ! その女が私たちの所に走ってきたんだぞ!」


 俺たち二人の必死の弁明は傭兵の心に刺さらず、背中を押されて歩かされた。


「とりあえず歩け。カルネス様がお前達の協力を得て共に逃げ回ったと言っている」


 傭兵は淡々とそう言った。


 くそ! あの女嘘つきやがったな!

 一緒に捕まって歩かされているカルネスの方を見ると、舌を出して()()()()といった様子でこちらを見ていた。

 絶対にあとで仕返ししてやろうと心に誓った。




  ▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼




 あれから城の中を進み一番豪華な扉をくぐると、赤い絨毯が敷かれた豪華な王室へと連れてこられた。

 奥には赤いマントに身を包み、黄金の大きな盾を椅子にたてかけ座っているダンディな男が豪華な椅子に座っている。

 恐らくこれがこの都市のボスだろう。

 俺たちは三人横一列に並び整列した。


「おお! カルネス! ようやく戻ったか、心配しておったぞ」


「もう! あたしはダンジョンに行きたいだけなの! なんで許してくれないのよ」


 カルネスはその男にそう言うと、横にあった黄金の盾を片手で持ち上げ、床にドシンと落としカルネスを黙らせた。


「ならん。お前ひとりでは圧倒的に力量不足だ。ダンジョンには魔物が多く住みついている。そんなところへ一人では行かせられん」


 首を横に振りつつ、カルネスの要求を否定した。



「そして旅の者。私はこのガンリグオンを治めるスフィア家のルーフレッド・スフィアと言う。カルネスからはお前たちと共に協力して逃げ回ったと聞いているが、それは本当か?」


 この都市の領主であるルーフレッド・カルネスは俺の方を向き、問いかけた。

 その目は疑いも混じっているが、なぜか優しい目をしていた。


「い、いえ! 私はこの都市に来たばかりです。たまたまカルネスさんが俺たちの所に走ってきただけで……」


 俺がそう言うとルーフレッドは頭の手を当て、またかといった様子でうなだれた。


「カルネス、お前また嘘を付いてるな」


 カルネスの方を見ると、明後日の方を向きながら口笛を吹いている。

 しかし音はならず、空気が漏れる音がしているだけだった。



「はぁ……旅の者、すまなかった。カルネスは外に出たいが故こうやってよく街の者を巻き込むのだ。恐らく君たちには何の罪もないだろう」


「よ、よかったなリーン!」


 ドロシーは半泣きになって俺の裾を掴んできてきた。

 犯罪者になるのがよっぽど怖かったんだろう。


 村を出て最初の町でいきなり犯罪者になんてなったらあまりに可哀そうだ。



「う、嘘じゃないもん! リーンたちが、一人じゃだめなら俺たちも一緒についていってやるって言ってくれたもん!」


 横でカルネスが地団太を踏みながらまたとんでもないことを言った。


 でもまてよ……もしかしてこれって、また新しい仲間が手に入るミッションなのではないだろうか。

 俺は自分のジョブをもう一度考えながら、もし主人公ならこういう時どうするのが正解なのかと考えた。


 そして俺はこの話に乗っかることにした。



「ふむ、リーンというのか。リーン殿よ、それは本当か?」


 ルーフレッドは再び俺の方へと視線を向け、解答を待っている。


 俺はここで肯定すれば、三人でダンジョンに向かうことになると確信していた。



「はい、もしカルネスさんが一人で不安だと言うのならば、私がお供いたします。一度ダンジョンに出向いて満足してもらえればカルネスさんもこれ以上騒ぎを起こすこともなくなるのではないでしょうか」


「リ、リーン!? 私たちは檻の中に入るのは嫌だぞ!?」


 俺はそう答えた。

 ドロシーはせっかく見逃してもらえたのにまた余計なことを言ってみたいな表情で俺の方を見ている。

 カルネスは俺の答えに手を合わせながら小さくジャンプして喜んでいた。

 

 しかしこれで俺たち三人でダンジョンに出向き、あわよくばカルネスが仲間になってくれるだろうと踏んでいた。


「ふむ、そうか……」


 ルーフレッドは深く唸り、そしてゆっくりと盾を持ちながら椅子から腰を上げた。



――シュンッ!



 その瞬間、ものすごいスピードで盾を構え、俺の方へと突進してきた。

 俺はルーフレッドの予想外の行動に少し出遅れたが、なんとか短剣を出して対応することが出来た。



――ガイイィィィン!



 王室に金属同士がぶつかる鈍い音が響き渡る。

 傍にいた傭兵たちも驚いた様子で、数テンポ遅れて槍を構えだす。



「ふむ、少しはやるようだな」


 ルーフレッドはそう言うと、盾を床におろしバックステップで椅子へと戻った。

 俺は今、試されたんだろうか。


「だ、大丈夫かリーン!?」


 ドロシーは俺の事を心配していた。


「見たところ、へなちょこの冒険者というわけでもあるまい。お前たちが近場のダンジョンへと出向くことをここに許可する。カルネス、行ってきなさい」


 ルーフレッドは穏やかな口調でそう言った。

 俺は認められたのだ。


「ほんと!? やった~! リーン、よろしくね!」


 今度は大きくジャンプしながら全身で喜びを表現していた。

 きっと素直でいい子なんだろう。俺はそう感じていた。



「こ、ここから出られるのか?」


 ドロシーはそんなことはどうでもよさそうに、早くこの城から出たいと思っているようだ。


「じゃ、行こうか」


 俺はそんなドロシーとカルネスを引き連れ、城を後にした。


 そして俺たちは早速、最初のダンジョンへと向かうことになった。





 

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