第四話 リザードマン退治
俺が来た村の入り口と反対の出口から外へ出ると、草原の奥にリザードマンがちらほら見た。
奴らは木製の三又の槍を持っており、鋭く尖っていた。
まずは奴らに気づかれぬよう気配を殺して近寄ると、俺は群れからはぐれていた1匹を目掛けて火球Lv4を撃った。
――キシャァァァァ!
見事リザードマンの肩に命中した火球は硬そうなウロコを焦げさせた。
しかし魔力にステータスを振っていない今、一撃で仕留めることはできなかった。
「くそ! さすがに魔力1じゃこんなもんか!」
俺に気づきリザードマンがこちらに突進してくる。
俺は三又の槍を短剣で受け流そうと構えたが、三又の槍は俺の短剣に当たるとそんなに力を入れなくとも軽く受け流せた。
「おお! やっぱり魔力より物理だな!」
俺は自分のステータス振りに自信を持ちながら、リザードマンの首目掛けて短剣を振り下ろした。
――ザシュッ!
一撃で首を切り落とし、なんなく仕留める。
残りの三体のリザードマンもこちらに気づいたのか、束になって襲い掛かってきた。
「魔法で足止めしつつ、物理攻撃で一匹ずつ仕留めるのが一番いいかな~」
――ゴォォォ! ザシュ! ザシュ!
俺は魔法と剣を巧みに操りながら、止めは全て剣でリザードマンの群れを仕留めることに成功した。
ふと村の方を見ると、白い長髪の女の子がこちらの様子を伺っているのが目の隅に映った。
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日は沈みかけ、あたりは暗くなってきた。
俺は村長にリザードマンを群れを倒したことを告げるために、再び家を訪れた。
「おぉ! 本当にリザードマンを退治してしまうとは、さすが冒険者様じゃ」
「冒険者だなんて、そんな」
照れながら村長の誉め言葉に言葉を返す。
俺は半日前まで鍛冶屋だったんだ。
急に冒険者と呼ばれ、なんだか不思議な気持ちになる。
「村を助けてくれたせめてものお礼じゃ。今晩は是非うちに泊まっていっておくれ」
そうえいば俺はこれから泊まるところもないことに気が付いた。
せっかく向こうからこう言ってくれているんだ、ここは甘えることにしよう。
その晩、俺は村長とドロシー三人で食事をすることになった
「とても美味しいですね! 村長は料理が得意なんですか?」
今晩のメニューはシチューだった。
ゴロゴロとしたジャガイモに色鮮やかな野菜たちが湯気を立てている。
「いんや、これはドロシーが作ったものじゃ。リーン殿がリザードマンを退治するところを村から見ておってのぉ。それを見たドロシーは私が作るときかんかったんじゃ」
「お、おじい! 言うな!」
ドロシーは照れくさそうに頬を赤らめながら村長の肩をバシバシと叩いていた。
少しは機嫌がよくなってくれたのだろうか、最初のブスっとした表情ではなく穏やかで優しそうな顔をしていた。
「そういえば、その恰好で寒くないのか」
「あ、あはは。これにはちょっと事情があって……」
俺は事の発端は言わずに、ごまかした。
あまり人にべらべらと話すことでもないと思ったからだ。
「ふむ……なら明日村の仕立て屋に行ってみると言い。私が話をつけておく。そこでいい服を仕立ててもらいなさい」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
さすが主人公スキルだ。
全てが上手くいっていると思った。
この調子でいけば、近い未来仲間も現れるのではないかと期待に胸を膨らませた。
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俺は風呂を借りた後、客室に案内されふかふかの布団で夜を明かすことができた。
気持ちよく窓から差し込む陽光を顔に浴びながら、乗っている布切れをどかした。
「ふぁ~! よく寝た~! 今日は仕立て屋に行くんだっけか」
俺は昨日、村長に仕立て屋に行けと言われた事を思い出し早々と準備を終え部屋を出た。
「村長、おはようございます」
「おぉおはよう。元気そうな顔だ」
「……おはよう」
村長に加え、今日はドロシーも挨拶してくれた。
今日のドロシーは昨日と違い、魔法使いのような白い上下が繋がったローブを着ていた。
丈が短いので目のやり場に少し困る。
俺は着々と物語が進んでいることに安心しつつ、仕立て屋に向かう為に村長の家を後にした。