第一話 追放
俺はリーン・シュベルク。
ここアルス村で生まれ育ち、父親の鍛冶手伝いをしている。
この世界では16歳になるとステータス鑑定を受け、職業スキルを会得することができる。
そして俺は今日この日、晴れて16歳となった。
今日も父バーン・シュベルクの手伝いをしながら、俺はステータス鑑定の儀を楽しみに待っていた。
「リーンよ、お前も今日で16歳だな。いよいよステータス鑑定の時だ。私たちにたった一人しかいない希望だ。期待しているぞ」
父は今日も鉄をハンマーで叩きながら俺に言う。
俺はこの家でたった一人の子供。母は俺を生んだ時に死んでしまった。
そんな父は俺にかなりの期待を寄せていた。
なぜならこの村はかなりの田舎で、使えるジョブはそこまで多くないからだ。
父のジョブは鍛冶屋で、俺にも鍛冶に使えるジョブを望んでいるようだ。
「うん、そうだね。僕もいっぱい父さんの手伝いをしたんだ。きっと鍛冶屋に通ずる何かが手に入るよ」
この世界では16歳になるまでの経験でジョブが決まることが多い。
そんな俺は生まれてずっと、父の仕事を見て手伝いをしてきた。
まず間違いなく鍛冶に使えるジョブが手に入るだろうと思っていた。
「よし、今日はもういい。役場に行ってステータス鑑定を受けてきなさい」
「わかった! 行ってくる!」
俺は手伝いを途中でやめ、急いで村の役場へと足を運んだ。
「おおリーン。お前も今日で16歳だな。おめでとう。ささ、こっちへおいで」
役場に入るや否や、役場のおじいちゃんが俺に言った。
この村はかなり人が少ない。だから村の人々はみんな知り合いだ。
だからこそ、こんなところで変なジョブを引いてしまったら村中に広まってしまう。
「ありがとう。父さんの仕事を手伝えるジョブだといいなぁ」
「お前のことはみーんな知っておる。大丈夫じゃよ」
役場にいる皆が安心しきった表情で俺のステータス鑑定を見守っていた。
ここでは水色のキラキラとした水晶に手をかざすことで、ステータスの鑑定が出来る。
そこに出た情報を茶色いステータス表の魔法用紙に記入し、俺たちはそれを肌身離さず持つこととなる。
その紙を使って今後スキルなども習得していくシステムだ。
「じゃ、じゃぁいくよ」
俺はそうおじいちゃんに言うと、水晶に右手をかざした。
すると眩い光が役場全体を包み込む。
「お、おぉ……こんなに眩しいのは珍しいのう。もしかしたらバーンよりも凄い鍛冶屋になれるかもしれんの」
そう長い白ひげを撫でながら言うと、俺のステータス鑑定が終わったのか水晶の光がおさまった。
「おじいちゃん! なんて書いてある!?」
「はて……《主人公》……と書いてあるのぉ。なんじゃこれは……」
水晶の中にはそれぞれのステータスに加え、ジョブの欄に主人公との文字があった。
間違いなく鍛冶屋に通ずるものではないことは皆分かった。
「え、なんだよそれ……何に使えるんだ?」
俺はおじいちゃんからステータス表を貰い、父さんに報告しに行くことにした。
「なんなんだこのジョブは! 何の役にも立たないじゃないか!」
俺はステータス表を父に見せると今まで見たことが無いような顔で激怒した。
「くそ……お前を何のためにここまで育てたと思っている! こんな訳の分からないジョブになるなんて……」
父さんは頭に手を当てうなだれている。
何のために育てたというのはどういうことだろうか。俺は父さんに愛されていなかったんだろうか。
「で、でもこれからも父さんの鍛冶を手伝えるよ! だから、そんなに怒らないでよ」
「黙れ! 俺はお前が鍛冶スキルを手に入れられるようにとここまで育ててきたんだ! そんな訳の分からないジョブならお前なんていらん! 出て行け!」
俺の言葉に耳を傾けることもなく、父さんは俺を家の出口へと追いやった。
「ま、待ってよ! 何かの役に立てるように俺頑張るか――」
「もうお前の顔など見たくもない! お前はシュベルクの名を名乗るな! この村から出ていくんだぞ!」
――バタン!
父さんは俺の言葉を最後まで聞くことなく、扉を閉め施錠した。
周りを見渡すと村人たちは俺を避けるように皆家へと入っていった。
「な、なんで……なんで俺がこんな目に……」
閑散とした村を俺はとぼとぼと離れていくしかなかった。
こうしてリーン・シュベルクはアルス村を追放された。
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