仲間と
「そ、それで!? 二人はどこまで行っちゃったの!?」
オレとガラドの話をすると、時間と共に興奮してきたリーナが鼻息荒く続きを促してくる。
「と、特になんもねえって。ガラドは「無理に今すぐ返事しろってわけじゃない」っつって……」
「あれで意外と冷静というか、がっつくタイプじゃないのねガラドって……」
行くところまで行っちゃったのかと思ったのに……と残念そうに呟くリーナ。
行くとこってどこだよとツッコミを入れようかと思ったが、オレは引き際を見誤ることはない。黙っておこう。
「んで、オレの方はこれで全部だぞ。今度はリーナが洗いざらい話す番だ」
そろそろ攻守交代の時間だ。リーナとシドニスの方にも、なんらかの進展があって当然のはず。
なにせこいつらは傍目から見てもわかるほどに両想いなのだから。二人きりの時間が、それを後押ししてくれてもなんらおかしくない。
期待を込めてオレが身を乗り出したが……リーナの反応は悲しげな表情のみだった。
「え……まさか、二人きりだったのに何にもなかった訳……ないよな?」
「ふふふ……そのまさかだって言ったら、笑う?」
「いや笑えるか! 泣くわ逆に!」
どうやらオレの期待をはるかに下回る旅路だったらしい。
「わ、私だってなんにもしなかったわけじゃないの。手……とか繋いでみたり、節約だから一緒の部屋を取ろうとか言ったのに……」
「全部不発に終わった……ってことか?」
オレの予想に、リーナは頷くだけで返答した。
マジかよシドニス……いや、真面目な男だってのは知ってたが、それを超えてクソ真面目だったってことか。
あいつがリーナのことを好きなのはオレもガラドも気付いてる。だからこそもどかしい。
二人とも生まれも育ちも良いせいか、奥手で真面目で踏み込まない。
その性格は世間的には美徳ではあるが……こういう浮いた話をする時には大きな障害となってしまう。なんとも焦ったいのが本音だ。
「っていうか! 私たちが遅れてるとかじゃないから! 雪月ちゃんの方が早すぎるだけだから!」
「まあオレの場合は本当に色々起こりすぎて、そのついでにガラドとの関係性が一気に変わっただけっつうか……」
リーナの反応に、オレは頬を掻きつつ目を逸らす。
「よ、余裕……? 互いに想いを共有して、好きって言ってもらえた女の余裕なの……?」
こいつはいったい何に対して戦慄してんだ。
「クッ……私の知らない間に、雪月ちゃんはガラドに女にされたのね……?」
「お前その言い方やばいぞ」
こいつはいったいどんな教育受けてきたんだ。親を呼べ親を。
「まあ冗談はこれくらいにして、羨ましいのは本音よ。だって雪月ちゃん……幸せなんでしょ?」
ほんと、わかりやすいわよ? と、にやけ顔をオレに向けてくる。
「は、はあ? 幸せって……まだ返事もできてねえっつうの……」
言いながら、口角が上がってしまうのを感じてしまう。クソ、なんとかなんねえのかこの表情筋。
「はあ〜……良いなぁ。私もシド君と両想いになれたら……」
そういやこいつらは傍目から見ても両想いなのに、互いにその自覚がないんだよな。恋は盲目というやつだろうか。
「まあいいわ、そろそろ戻りましょう? シド君たちと合流して、騎士団長と作戦会議しなくちゃいけないし」
「近衛騎士団か……もしかして、一緒に魔王討伐に向かうのか?」
「さあ? でもあり得ない話じゃないかもね」
オレたちが近づくと、二人の会話が聞こえてくる。
「そうか、シドニスも色々考えてん……いや、考えなきゃなんねえ立場ってことか」
「君たちの方が色々あり過ぎて混乱するんだけど……それで、雪月とはどうするつもりだい?」
「へー、私も聞きたいかも! ガラドと雪月ちゃんのこと」
赤髪のお嬢様はその会話に加わった。茶化すつもりかこいつ。
「リーナはオレから聞いただろうが」
とツッコミを入れると、リーナから不満の声が上がってくる。
「別に良いじゃない? 恋バナは何度聞いても。ね? シド君」
「僕に振られても……さて、大体僕らの情報交換もできただろうし、騎士団長に報告しに行こうか」
みんな真面目ね。とため息混じりに呟くリーナを連れて、オレたちは移動を開始した。




