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「ふむ、なるほど。じゃあ僕たちが来る前に四天王のキリアナを撤退させ、気が付いたら女の人になっていた……と?」


「まあ、簡単に言えばそういうことだな……」

 リーナが男性の左手のケガを治している間に男だけで、いや今のオレは女だったな……まあとにかくシドニスとガラドとオレの3人で状況を確認していた。


「うーん、あの濃密な魔力の気配が消えた現状を鑑みて、君が四天王クラスの魔族を撤退にまで追い込んだことは信じられるけど、君がミリアだってことは……正直信じがたいと思うよ」


(いやそうだよなぁ……オレも未だに実感が湧かねえからなぁ)

 オレ自身、一体全体いつから女の体に変わっていたのかが皆目見当もつかない。

 キリアナと戦っていた時もケガ人を見つけた時も必死になっていて、自身の変化に気付くこともできなかった。


「いや、だが俺が親友の匂いを間違えるわけがねえ。コイツはミリアだ。俺の鼻がそう言ってる」

 オレが少しばかり落ち込んでいると、ガラドが助け舟を出してくれる。

 狼人族や犬人族に劣るとはいえ、虎人族の鼻も常人のものとは比べられないほどに優れている。


 ましてや研ぎ澄まされた戦士の感覚は、同じ虎人族の中でも群を抜いている。ガラドの鋭敏な感覚によって状況を有利にできた戦闘もあったくらいだ。


 しかしそれでも決定的な証拠とは思えないようで、シドニスはまだ悩んでいる。

「……それじゃあ僕かリーナに関することで、人に知られていないような情報とかは出せるかな? もしそれが僕の記憶と一致すれば信じられると思うんだ」


 しばし悩んだのち、シドニスがそんな提案してきた。どうやらあと一押しみたいだ。

(とはいえ人には知られていないようなこと……かぁ)


 勇者パーティーは民衆に対しての露出が多い。それは各地で魔族と戦い、ことごとく勝利をもたらしてきたことも相まって多くの人々がオレたちに興味を持つからだ。

 ゆえにパーティー内でしか知らないようなことといえば、かなりプライベートな情報になってしまうわけで。


 かといってここで黙ってしまえばシドニスからの信頼は得られない。

(……はぁ、しょうがねえか)


「シドニスはリーナから貰った物を全部グランドバックに入れて持ち歩いている。お気に入りはガキの頃に」

「オーケーわかった君は間違いなくミリアだ僕としたことが君を疑うなんてどうかしてたよ」


 言うや否やシドニスはオレの言葉を遮るように肩を掴んでくる。

 どうやら信じてもらえたようだ。コイツの脂汗がなによりもそのことを証明してくれている。


 果てしなく申し訳ない気持ちになってしまうが、こんな条件を出してきたシドニスの自業自得でもある。ここはなにも言わずにいてやるのが優しさだろう。


 そんなやりとりをしているとケガの治療が終わったのか、リーナが声をかけてきた。


「ちょっとシド君、ガラド! 女の子を囲んでなんの話をしてるの? もう少し離れても会話はできるでしょ!」

 赤髪のお嬢様は少々ご立腹のご様子だ。


 どうやら自分の仲間が見知らぬ女を威圧しているように見えたのだろう。まあ今の状況を見ればそう思うのも無理はない。


 するとシドニスは弁明する様にリーナに話しかける。

「ああいや! 違うんだリーナ! この人はミリアなんだ」


「はい? この人がミリア君って……そんな訳ないじゃない。第一、性別が違うわ」

「いやでもほら、ミリアと同じ服を着ているし、髪型も髪色も一致しているんだ」


「ミリア君のことが好きで同じ格好をしてるだけの女の子って可能性があるし、決定的なものじゃないと思うわ」

 不器用なシドニスでは口が達者なリーナを説得することはできない。


 なんとなく察してはいたが流石にシドニスが可哀想になってきたのか、ガラドが助言する。

「そんなに否定するなら自分で確かめてみろ。少なくとも俺とシドニスはそのことを信じてるからな」


「えっ! じゃあ二人ともこの話に納得してるの!?」

「ああ」

「おう」


 二人の迷いのない返答に、流石のリーナも疑う気持ちを薄めたのか「うーん」と唸りだす。

 しばらくしてから、オレに対して余所余所しい敬語で訊ねてくる。


「……それじゃあ、私たちしか知らない魔族四天王のケルメとオルデムの呪装を答えられますか? もし当たってたら信じられると思います」


 するとリーナの質問を聞いたシドニスが、その手があったかと言わんばかりに頭に手を当てる。

 後悔するシドニスに心の中でどんまいと言ってから、オレは口を開いた。


「ケルメの呪装は脚部装甲の《死閃脚しせんきゃく》。オルデムはでけえハンマーの形をした《火葬鎚かそうつい》だろ? アイツらのは格が違ったよな」


「うそ……? 当たってるわ……え、じゃあほんとにミリア君なの?」

 驚きを隠せない様子でオレの顔を覗き見るリーナからは敬語は抜け落ちている。


 そんな彼女にオレは笑って、

「ああ本当だ。とりあえずそこのオッサンどうにかしてからゆっくり話そうぜ?」

 と返した。


 その後オレたちはすっかりケガの治った男性を起こし、話をつけた。

 幸いなことに左手にはなんの異常も見られず、状況を説明するとオレとリーナに感謝の言葉をしこたま伝えてきた。


 最新式の魔動車を所有している点やその身なりから、かなり裕福なのだろうことは理解できるがそれがキリアナの襲撃を受けた理由とは考えづらい。

 当の本人も全く心当たりはなく突然襲われたと言っており、キリアナの行動理由は分からずじまいだった。


 奴の言動から察するに、単純に嗜虐心を満たすためだけの行動だったという線も大いにあり得る。後でコイツらには伝えておこう。


 その後、男性はオレたちにもう一度感謝を述べてから町へと向かった。

 残ったオレたちは一度宿に戻ってから状況を再確認することにした。

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