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二人きりの戦い

ゼンゼロ、学マス、ブルアカ、DBスパゼロ、スト6……。


この世には楽しいゲームが多すぎる……!!

 〜〜〜〜〜〜


「なるほど、貴殿らの事情は把握した。それではこれより我ら北方防衛軍に助力していただくという認識でよろしいか?」


 休憩後、前線基地の作戦隊長のもとへ向かい、手渡した領主の手紙を読み終えると彼はそう訊ねてきた。

「はい。オレたちはそのためにこの場所に来たんです」


「そう言っていただけると心強い。それにしてもオルデム討伐から三日しか経っていないというのに、よくぞこの地まで……それだけ急ぐ理由があったということかな?」


 オレの返答に隊長はさらに質問してきた。オレたちは魔族の策略によってここに飛ばされてしまったのだが、それを伏せている現状ではこの移動速度に疑問を抱くのは無理もないだろう。


 しかしその疑問も想定済みだ。

「その通りです。オレたちは魔族四天王の二人を倒しました。王都を中心に広く敷かれた魔族の包囲網には二つの穴が空いたことになります」


「もう魔族側には包囲網を狭めてゆく作戦は不可能になり、南北の四天王とその配下によってこの王国を侵略するならば……取れる手段は多くないか……」


「はい。おそらく南北の魔王軍は同時に攻勢を強め、勇者パーティに選択を迫るつもりだったと考えています」

「北と南、どちらの魔王軍と相対あいたいするか。いや、こうして二手に分かれて行動させること自体が目的か……?」


 作戦隊長が顎に手をやり、うーむとうなり出す。

「魔王軍の思惑がどうであれ、どちらか一方だけを守れば他方の前線都市は制圧される。前線に集中した一般兵を片付けてしまえば、あとは周辺の村に駐屯するわずかな兵を順番に潰すだけで、王都までの道は簡単にできてしまう……」


「呪装を持つ魔将軍や四天王を止められるのは希望ホープ持ちだけです。これまで前線を維持できていた要因は魔族が闘争を好む種族であり、この戦いを遊びだと認識していたからに過ぎません」


「俺たちの脅威が魔族側に知れ渡った今、遊んでる余裕がないと判断したヤツらはすぐに行動に移すだろうぜ……です」


 またもや年上にタメ口をきこうとしたガラドを睨みつけ、不細工ぶさいくな語尾を付け足させた。すると隊長がガラドを見る。


「ふむ……堅苦しいのは無しにしよう。ガラド殿、ミリア殿。もとより私は君たちの上官ではないし、それに魔族四天王を二人も打倒した王国の英雄たちに対して、敬意を払うべきは私の方なのだから」


 笑みを浮かべながら話しかけてきた隊長に、ガラドはニカッと歯を見せて笑みを返した。

「いやーそう言ってくれると助かるぜ! 隊長、これからよろしくな!」


 こうやってすぐさま笑顔を見せて、相手に親近感を抱かせるのがガラドという人柄だ。もちろん良いところではあるが、少しばかり無遠慮なのも事実。

 オレはため息を吐きつつ、言葉を発する。


「はぁ……まあこの前線の指揮官が言うなら、オレがあーだこーだ言っても意味ねえか。隊長さん、世話になります」

「ああ。それではこれから今日の作戦についての話をしよう……」


 〜〜〜〜〜〜


 それから少し経って、オレたちは戦場に到着した。オレの手には氷で作り出した槍が握られている。

「ガラド、作戦はわかってるな?」

「おうよ! 敵陣に突っ込んで暴れりゃいいんだろ? いつも通りにな」


 オレが問いかけガラドが答える。

 こうやって簡潔にすると馬鹿の考えた作戦のようだが、実際これが一番効果的だ。


 オレたちは防衛軍……というか一般兵との連携ができない。正確には、できなくもないが長年ともに戦ってきたわけではないので連携の練度が低いと言った方がいいか。


 例えばオレたちが無理に防衛軍の動きに合わせると、あっちに手を貸し、こっちを助けてという具合にてんてこ舞いになるだろうし、逆にオレたちに一般兵が合わせることは不可能。実力差がありすぎる。


 つまるところ、こうして希望ホープ持ちと一般兵は切り離して動いた方が効率的なのだ。今までもそうしてきた。


「まあ程々にな、オレたちの目的は忘れんなよ?」

「任せろ! 暴れまくって、四天王を引きずり出すんだろ?」


「正解。花丸やるぞ」


 勇者パーティの分断は四天王キリアナとその配下によって仕掛けられた罠だ。ここにいる四天王がアイツであろうとなかろうと分断の情報はきっと知れ渡っているだろう。だがこっちも魔王軍の動きは読めている。


 ヤツらは攻勢を強め、今日中にでも前線都市を落とすつもりだ。その証拠にこの三日で防衛線の消耗は思ったよりも進んでいて、今後も魔王軍の侵攻を防ぎ続けるのは難しいだろうと思うほどだった。


 一般兵で魔王軍の侵攻を妨げること自体が、砂上の楼閣のようなもの。こちらに地の利があって、魔王軍が戦いを楽しむためにわざと長引かせている、という二つの要素があって初めて成り立つ延命処置。


 しかしもうヤツらにはそうする余裕はなく、ここ最近は一般兵の死傷者も増加傾向にあるそうだ。つまり今日、四天王を戦場に引きずり出し、討ち倒すことができなければ苦しい状況は変わらないということ。


 これまでも二度、前線に加わるという経験をしたが、ここまで切羽詰まった状況は初めてだった。

 だがそれは向こうにとっても同じこと。ケルメやオルデムの討伐を経て、魔王軍に余裕がなくなっている証拠でもある。


 そう、ここに立つ兵士たちもきっとオレと同じことを予想しているはずだ。


 今日、この前線の命運が決まると。


 そうこうしてるうちに、魔族の軍勢が遠くに見えてくる。と同時に監視塔の拡声器から耳をつんざく笛の音が響き渡る。


『魔王軍が防衛線に接近中! 各員配置につき迎撃せよ!』

 笛の音が終わると、続いて隊長の声が聞こえた。

 言い終わるよりも早く、兵士たちは行動を開始する。


 重歩兵隊が大盾を構え、その後ろで魔導部隊が図式魔法を発動する。放たれる魔法は水や氷、それらは狙い通りに先頭に魔族の群れに直撃するが、効果は薄い。


 これには理由がある。魔族はドワーフの如き頑強な肉体を持っているからだ。強靭な体は攻撃魔法を無効化とまではいかなくとも、ある程度耐え凌ぐことができる。


 それに加え、獣人族のような身体能力も備えており、ダメ押しにエルフと同程度の魔力量ときた。白兵戦においてのアドバンテージを持つだけでも脅威なのに、呪装という切り札を持つ精鋭も少ないとはいえ存在する。


 まるで戦うために生まれてきたような種族だ。人族の一般兵三人でようやく一人を相手にできると言われているのが現状。前線が押されるのはむしろ当然といえる。

 しかしそんな種族間の力量差を覆す存在がいる。


「よっしゃ行くぜーーー!!」

「ヤツらの足を凍らせる。全員殴ってぶっ倒せ!」

「任せとけ!」


 それがオレたちのような希望ホープ持ちだ。

 短い会話を済ませ、敵陣に突っ込む。はたから見れば自殺志願者かただの馬鹿だ。事実、複数の魔族はニヤリと笑みを浮かべて、手に持つ武器を振りかぶった。


 しかしそれこそ愚かな間違いだ。オレは音もなく視界内の敵の足を凍らせ、一瞬の隙を作る。

 そう、一瞬だ。わずかに意識が逸れるだけ。だがそれで充分だった。


「「オラァ!」」

 オレが槍を振るい、突き刺し、振り下ろす。ガラドが拳を突き、回し蹴りを放ち、肘鉄ひじてつを喰らわせる。


 一息のうちに十人ほどの魔族が地面に倒れ込むと、たまらず周囲の敵はたじろいだ。


「さて……死にてえヤツから、かかってこい!」

「それ悪役のセリフじゃねえかなガラド……」


 そこから先は、一方的なものだった。

 ガラドが拳を握れば一人倒れ、蹴りを見舞えば二人倒れる。


 ならばとオレに襲いかかるヤツはもれなく首を突き刺してしまいだ。近寄る隙すら与えない。

 《氷王の両眼(アイス・アイズ)》で足と地面をくっつけるように凍らせると、ほんの少しだけ意識を逸らすことができる。


 そりゃそうだ。左右や前後に動こうとしたのに一切動けないんだから正常な反応だろう。だがその一瞬が命取りだ。オレはそれを見逃すほど馬鹿でもなけりゃ、優しくもない。


 あるいはガラドのように、凍りついた足ごと地面を踏み砕くようなヤツがいれば、この戦法も通じなかっただろうが、それは普通の魔族兵には無茶な話だ。できるとすれば呪装持ちだけだろう。


 そんな惨状を目にした敵の中には逃げ出すヤツもある程度いたが、オレはそれを追いかけはしなかった。オレたちの目的は四天王を引きずり出し、それを倒すこと。誰かが報告してくれなきゃ意味はない。

 ガラドは背を向けるヤツを追い討ちしないし、作戦は順調だった。



 しばらく戦っていると、周囲の魔族がにわかに後退り、オレたちに話しかけるヤツが現れる。

「なんだぁ……ずいぶん好き勝手暴れてるヤツがいるなぁ〜〜?」


「おっと、ようやくお出ましかよ。名乗りは要るか? 魔将軍サマ」

 雰囲気でわかる……これは強者の気配だ。だが四天王ほどのプレッシャーは感じない。オレは魔将軍と断定して話しかけると、ヤツは舐めるような視線を送ってきやがった。


「ほう? こりゃまたいい女だな〜……ま、たまには敵兵をさらってやるのも悪かねえかぁ〜〜」

 ねっとりとした喋り方で、舐め回すような視線。気色悪いことこの上ない。まさか戦場に身を置きながら、こんな発言をするゲスに出くわすとは思ってもみなかった。


 魔族は戦闘を好み、粗野な性格のヤツが多い。これまで倒してきた魔族の中にもこういった思考回路のヤツもいたかもしれないが、少なくとも魔将軍以上の実力をもつ魔族にはいなかった。


 つーかこっちの話は一切聞いちゃいねえなコイツ。明らかにオレらをみくびってやがる。舐めた態度も気に入らねえ。

「なんだコイツきもちわりいな……こういう手合いが一番嫌いだぜ、なあガラ……」


 ドゴッ!!

 硬質な金属をぶっ叩く音が響く。


 オレが言い終えるよりも早く、虎の前脚は振るわれていた。

「ごばぁ!? ……っの野郎〜〜なんだってんだよぉ。おいらはその女に用があるってのによぉ〜〜!!」


 ヤツの鎧に大きな凹みがつく。いつのまにか《獣王の拳(ビースト・フィスト)》を発動していたガラドが、額に青筋を浮かべながら答えた。


「テメエの用事なんざ知るか。かかってこいゲボカス。その臭え口も開けねえようにグチャグチャにしてやるからよ」


 いつものおおらかで快活な話し方はどこへやら。

 本気でキレたガラドの姿がそこにはあった。


「おいおい珍しいな……」

 発言の後、オレは親友をキレさせた魔将軍の末路を悟るのだった。

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