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ツイ廃ファンタジア  作者: 赤い牛
1/1

プロローグ(1)

VRの方で詰まったので見なかったことにして新しいの書きました。申し訳ございません。


 [153]芋ヘイへ

     @Kamoheihe0416

     高校生ワイ、優雅に睡眠に浸る

  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

  0リツイート 8いいね

  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 [39]マカロンの大魔術師

    @Macaroon's Warlock

    はいはい陰キャ乙陰キャ乙、そんな事よりマカロン買って来いよ陰キャ

 [239]戦術批判皇帝   ↙

     @THE EMPEROR

     君今何してんの?途中抜けは犯罪だよ?マジで殺すよ?ねぇ、ねぇねぇ

 [39]マカロンの大魔術師   ↙

    @Macaroon's Warlock 

    秒レスとかメンヘラかな?話しかけないで欲しいんだけど脳筋術師

 [239]戦術批判皇帝   ↙

     @THE EMPEROR

     着払いでグングニル送りつけるよ覚えてろメルヘンクソ魔術師

 [153]芋ヘイへ   ↙

     @Kamoheihe0416

     喧嘩しないで…

  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 これは、とあるSNSの一部始終だ。

 恐らくはただのゲーム内での喧嘩で、マカロン氏と皇帝陛下がデュオで遊んでいる時に何を思ったのかログアウトしたのだろう。ただそれだけの会話である。

 ソーシャルネットワークサービス“シャベッター”、魔導掲示板、MAINに次いでトップのシェア数を誇る素晴らしきSNSだ。


 それを今、休み時間中に没頭する俺は、石田凡石(いしだ はんせき)。親は凡庸に生きて、石の様に誰にでも馴染みやすい男になって欲しいと願って付けたそうだ。……別にキラキラネームにしろとは言わないが、自分の子供に付ける名前だろうか。路端の石ころになれと言う男になれ、と言っているようにしか見えない名前だろう。

 話が逸れた。独りぼっちの昼休みを過ごしたことがある人ならば分かるであろう机寝たふり、今この防御形態になると周りから


 「あいつマジ陰キャwwww」

 「机舐めてんのかなwwww」

 「汚ッw あだ名机ペロリンにしようぜwwwww」

 「良いね! めっちゃ似合ってるじゃんwww」


 などと聞こえてくるであろう。安心すると良い、八割方妄想だ。

 だが、それが現実になる者も居る。それは勿論―――


 「チッ。……あっ、石ころくんじゃ~ん! ちょっとご飯食べに行かない? 屋上にさ!」


 ご察しの通り、俺である。


 ◆ ◆ ◆


 「【火炎弾(ファイア・バレット)】ォ!」


 屋上の窓際まで追い詰められた俺。目の前にはペン型の小型魔術概念干渉機、分かりやすく言えば魔法の杖だ。人間には知覚できない別次元に干渉して、人を魔術師たらしめる兵器。それが今、自分に向けられている。と言うか今魔術が放たれた、死ぬ。

 熱量を持った目で追える程度の速さの弾丸が自分の目の前までやってくるが、それを避ける事すら出来ない。出来なくて当然、俺は突然の攻撃を避けられるほど反射神経は良くないし、体が硬直するほど一般人なのだ。


 弾丸が直撃し、一瞬で俺の顔が爆炎に包まれた。衝撃でフェンスに叩きつけられたのだが、俺は別にピンピンしている。これはAMBP…A(auto) M(Magic) B(Block) P(Particle) 通称魔術阻害粒子の影響下にある人間に対して、自動で魔術を受けた人間に対しての熱量、その他もろもろを阻害してくれる。

 尚、衝撃等は阻害してくれないので普通に痛い、頭割れそう。


 「いつも黙ってばっかで、マジでウザいわお前。皆言ってるぜ、あの落ちこぼれ、クラスの汚点、協調性がない~ってな!」


 出た、皆言ってる。自分の意見を持つことのできないクズめ。来世はミジンコにでも生まれ変われ。

 そんな事を思っていると、目の前の不良さん―――Aと名付けよう、Aはもう一度、ペン型の杖を向けてきた。


 「どうせお前は何も言わねえんだ。言う勇気もねぇ。サンドバッグになってろ落ちこぼれ―――陽の第二式、土の第一式、流の第三式、堕ちろ。【熱流砂(ねつりゅうさ)】!」


 詠唱が終わると同時に屋上から少し砂が漏れる。これを見た誰かが自分を助けに来てくれるのではないかと淡い期待を持ったが、よく考えると絶対ない。ここはB棟、言ってしまえば俺より落ちこぼれのクラスが集まる教室だ。A棟最底辺の俺は、何時でも周りの人間から疎まれているから。

 熱砂は器用に俺を流し、何も出来ない俺をフェンスに括り付ける。見事なまでの干渉力の高さだ。若干腕がジンジンしてきた。


 今言うべき事ではないかもしれないが、自分は人と面を向かって話すことが出来ない。具体的には喉から何も出なくなる、良くあるだろう。流石に命の危機を感じて、その封印を外し何の謝罪かも分からない謝罪をしようと思った所で―――カラン、と音が鳴った。


 おや、視界がゆっくりと下がって浮遊感を感じる。何故か俺に纏わりついてる砂がゆっくりと解放されていく。今、目の前の彼を見ると何故か()()()()()()()()()()()。当然手から干渉機は離れている。

 無詠唱の練習をしてなかったからこうなったのか、と思ったがそれも違った。屋上の入り口のくもった窓から何かが一瞬光った。そして、丁度視界がA君とすれ違った時に、彼の顔は笑っていたのだ。


 阻害されながら魔術を使用し続けたことでの干渉力の低下の線も疑ったが、それも違かった。これは確実な殺人事―――。


 最後に俺の目に映ったのは、偶然手から離れたスマホに表示された4月16日の文字。そういえば今日は誕生日だったか。弟はどうしているだろうか、祝う準備でもしてくれているだろうか?

 そういえば最近よそよそしかったな。弟と言っても俺とは3分しか離れていないのだが、でも弟はB棟の方に言ってしまった。そして俺は周りから疎まれる可哀想な男になってしまった。

 ああ、こんな事になるならば、俺もB棟の方が良かったなァ―――。


 ◆ ◆ ◆


 3日前、僕は死んだ。

 交通事故だ。

 僕達兄弟は出来損ないで、公務員の父とランカー魔術師の母から生まれたとは思えない出来の子供だった。でも、昔兄さんと約束したのに、約束したのに―――。


 アイツだけ、一般的に言う上級クラスに受かった。


 母は大層喜んだ。凡人の兄の努力が実ったのだと。


 父は怒った。イカサマをしたのだと。


 母は軍人では無いが、戦争経験者の為、偉く現実的だった。


 「勝てば良いのよ」、と。


 父は警察だから、何もかもに厳しい人だった。だが、息子を信じないことはなかった。


 「何故こんな事をした!」、と。


 信じていたはずの父も、楽観的な母も、結局は兄を信じていなかったのだろう。それは僕もだった。兄が父に引っ叩かれた分、僕はほくそ笑んだ。


 「たった三分の悪知恵でズルをするからこうなるんだ」って。


 そう思っていた矢先、交通事故にあった。死因は運転手の居眠りだと、その場で会った『神様』に聞いた。それで、彼に聞いたのだ、僕はどうなるんです…って。彼は言った、正常の輪廻に巻き込まれるはずが、君の魂は重過ぎる。前世の“呪い”のせいで正常に転生することが出来なくなってしまったのだと。


 神様は言った。君には、素晴らしい才能をあげよう。時間は死ぬ前の日に巻き戻してやるからあとは君の好きに生きろ、と。


 そして僕は生き返った。この、【幻影御業(ファントムミラクル)】を持って―――。

 僕は復讐する。この干渉を断ち切る力を持って、兄に、父に復讐する。そして世界を取って、世界に見せつけるのだ、僕―――俺自身を!


 ◆ ◆ ◆


 「で、これ見てどう思った?」


 俺の目の前に立つ、男なのか女なのか分からない自称大魔術師は、移された映像を指さしてそう言った。


 屋上から落下した後、消える事の無い浮遊感に違和感を覚えて地面を見ると、ベットに直撃した(?)。そこのベッドで座っていた男こそ、この大魔術師、マカロンことアンブロシウス君だ。そう、大魔術師マカロン、シャベッターの彼である。

 自称大魔術師である彼は、世界がなんか変な干渉を受けたという事で、寝起きツイ廃からちょっとだけ働き者の大魔術師になったらしい。その干渉をしてきた何かが、弟に変な、プププ…【幻影御業(ファントムミラクル)】…フフフフフフ…。うん、【幻影御業(ファントムミラクル)】を持って復讐しようとした結果、俺はなんやかんやで死んだらしい。

 俺は上手く殺されたのか、と言うところでシャベッターで懇意にしてやってる芋ヘイへこと俺が死にかけている所を発見したらしい。

 彼はオフ会になったね、と雌堕ちさせたくなる顔で言ってきたが、俺は何を言わなかった。無敵の精神である。


 さて、どうするか。残念ながら俺はただの凡人だ。今の弟の様に絶対の力を持つわけでもない、干渉力も中の上でA君にすらボコにされる。今戻れば弟は確実に俺を殺しに来るだろう。


 それでも、成さなければならない。肉親を止めずして何が兄だ、何が人間だ。


 俺はこの巨大なベッドから立ち上がった。

 モコモコして立ちづらかったが、気合で降りた。アンブロシウス君がこちらをとぼけた様な顔をしながら見つめてきた。可愛い。


 「何処へ行くんだい?」

 「外へ」


 驚くほど小さな声が出た。だが、喋ることは出来た。アンブロシウス君が子供だったという事もあって何とか喋ることが出来た。

 その言葉を聞いた彼は、こちらを嘲笑する様に嫌らしい笑みでこちらを見つめながら言った。


 「止めるって言うの? 無理だよ本当に。無謀な行為ってのは自殺と変わらないんだぜ。知ってたかい?」


 空間転移すらこなす彼が何者かなんて知る由もない。彼はただのネッ友であり、一友人である面しか知らない。その謎の塊であるアンブロシウス君ですら不可能と言った。それも嘲笑付きで。


 「だが、行かねばならん」

 「強情だね」

 「道理は知らんが、しなければならない事もある」


 そう、俺が言い切ると彼の笑みは嘲笑から優し気な物に変わる。


 「へぇ~っ。そっかー! ……まあ、ゴミ掃除もめんどくさかったし、丁度良いよね



 で、方法は?」


 「む」


 そう言われると何も言えなくなる。俺は弟を止めなければならない。父が死ぬ前に、母が死ぬ前に、弟が、罪を重ねる前に。

 何も言わなくなった時、アンブロシウス君はジトっとした目でこちらを見てきた。


 「ない。ないよね、そりゃあ。君の弟みたいにレアな前世を持つ訳でもなく、前世から100万代さかのぼっても君は凡庸な人間だ」


 俺は100万代さかのぼっても凡人なのか。知ってた、と言いたいが実は期待していた。弟が凄いんだから俺も凄いもんだと思っていたからなんか出来るんじゃないかと思ってたのを全否定してくれるアンブロシウス君、流石。


 「だけど、君にしか無いものがある」


 彼はそう言いながら、一緒に落ちてきていた筈の俺のスマホを空に浮かびあげる。

 そこに移ったのは、シャベッターだった。


 …シャベッター…?確かにその縁は俺だけの物だろう。お陰で俺も生きているし、アンブロシウス君とも出会えた。

 勝手に画面が動き、表示されたのは俺のフォロワー。たった8人の数少ない人数だが、全員と欠かさず常にリプを送るし、多くても全員と会話できないからこれが丁度良いのだ。


 「君には、不思議な縁がある。僕も、彼女も、あいつも……()()だって。皆が皆でロクでなし共だけど、君が助けを求めれば、何かしてくれるかもしれないね」


 スマホがくるくると回って手元まで飛んできた。それを片手で掴んで、アンブロシウス君に一礼する。


 「へん。他の奴に言われたからやっただけさ。あと、アンブロシウスってのも古めかしくて気に入らなくなった。()()はマーリン、マーリンと呼べ。……それじゃあね!」

 

 手を振る彼に振り返そうとして、二度目の浮遊感を感じる。このショタ、何も言わずに落としやがったな。


 …そして俺は、そのまま無言で落ちていった。


 ◆ ◆ ◆


 「うっわぁ、クッソシュールだなぁ」


 その少年―――実年齢からすればもはや両手では数えきれないほどの年を重ねる少年は、無言のまま地に堕ちた青年を見て、これからの運命を感じ取った。

 この世界に干渉してきた者は、もはや自分の世界に閉じ込められた。先手で軽く処理してやったので割と楽ちんだった。

 問題は、残る40万人の転生者。彼らは、外界からの干渉者の被害を受け、再誕した者達だ。ここから先の事を思考に吹けようとして―――。


 彼の頭に槍が突き刺さった。


 「産地直送グングニル、ただいまお届けに参りましたよ。死んでねクソガキ」


 まばらに広がる世界線に置いて、彼女は単一の生命体である。その御前では獅子ですら臆してただの猫になり下がる。長く伸びた艶めく赤髪とその眼帯を合わせても丸わかり美貌を持つ、それはそれは美しい女性だった。


 「平等な悪が世界にばら撒かれたけど、全く。君ほどの悪も滅多に存在しないよ」


 物言わぬ躯と化した筈の大魔術師アンブロシウス―――マーリンは、槍が刺さったまま女性をドブでも見たかのような視線で見やり、その姿に苦虫を嚙み潰したように、純粋に引いた。

 血塗れだったのだ、女性は。


 「元はと言えば貴方が逃げ出したのが悪いよ。実に愚かしいねクソガキ。本来ならば私が出張る程でもないハズなのに、それで、これはどういう料簡なの? こっちの世界に我らが盟友を紛れ込ませるなんて、クソガキらしくない短慮な考えだね」


 「クソガキクソガキうっさいよ、脳筋。…それに、あれはオレだけの案件じゃない。もはや第四次世界大戦は目前だ。君が槍を投げれば全てが終わる? 馬鹿にするな。()()()()()6()0()()()はオレが火消ししたが、後はもう社会的地位を持つ奴らばっかだ、お前には、何もできないよ」


 マーリンは女性にそう言い放つと、女性は少し考えるように無言になる。マーリンはてっきり激憤して300回は殺されるかと思ったが、思ったより冷静だったらしい。

 彼女は少し考えてマーリンを馬鹿にするかのように、にへらぁと嫌らしい笑みを浮かべて、下品と言えるほどくつくつと笑い出す。


 「…何が面白いんだい?」


 「いやぁ、随分と面白くてね、やっぱり君は最高に愚かしい。

 ……何も出来ない? 違うね、間違っているよ。何もしないだけなんだよね。彼は思うだろう、何を救うのか、何をすればいいのか。楽器は私達だ。演奏は彼が成す、そこから始まるのが愚かしい定めの幻想曲(ファンタジア)―――ッ! それを、ただ待ち続けるだけだよ」


 恍惚とした表情で狂喜を語る彼女は、もはや世界を見て居なかった。それを察したマーリンも、もはや彼女を見ることはしなかった。


 「未来視…ね。うーん、こいつはやっぱりここで殺した方が良いんじゃないかなぁ~?」


 「暫くは眠るとするよ、暫しの休息さ。さてと…」


 いつの間にかマーリンの後ろに立っていた女性は、槍をおもむろに掴んでマーリンの背中を蹴り飛ばす。無事、槍はすっぽ抜けて無事じゃないのはマーリンだけになった。


 「絶対、仕返しするからなぁ…!」


 上半身の無くなった少年は、どこから出たか分からない低い声で、彼女への恨み節を呟いた。



    

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