01 盗賊と王子サマ
あたしの名前はアメリアだ。
と言っても、本名じゃないけど。
盗賊やってるから、偽名なんだよ。
で、今日はちょっとデカい事あったから、日記に書いとく。
あたしは自分が住んでいる国の王様にケンカを売った。
まあ、直接たんか切ったというわけじゃなく間接的にだけどな。
育ててもらった孤児院のために金が必要になって、そんで王城に忍び込んだんだ。
相棒のチャイと相談して、入念に潜入ルートを調査したからうまくいくと思ってたんだ。
実際に見張りには一人も見つからなかったから、ついてると思ったんだよ。
情報屋にも高い金だして、城の中の兵士の配置図とか、教えてもらったし。
だから、さっさと宝物庫に行って、お宝ゲットしてとんずらするつもりだったのに、そこに先客がいたんだ。
宝物庫で争っている二つの人影。
一人はあたしと同じ同業者。
もう一人はへっぴり腰のこの国の王子サマ、クランベルン・ディ・マナトリアスだった。
「これはお前なんかに渡すわけにはいかないんだ。大勢の命がかかっている。僕の命に代えても、ここから持ち出させるわけにはいかない!」
漁夫の利を狙おうと思って、観察してたのに、王子サマがあまりに必死こいて大剣振り回してるもんだから、つい手ぇ出しちまったじゃねーか。
「王族なんて、豪華なイスにふんぞり返ってるばかりと思ってたが、少しは骨のある人間もいるみてーだなっ!」
双剣をふりまわして、得意の剣術で盗賊の相手をするんだけど、残念な事に敵の方が圧倒的に強かった。
そいつは、盗賊のザーフィスは隙を見て宝物を奪い、すたこらさっさと逃げちまったってわけだ。