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ゲーマー4人組  作者: 鬼雨
日本人は休まない。
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神様はときに優しくときに理不尽である。

第2章、スタート!




 世の中、苦労することはいくらでもある。

 高校2年のおれで言えば、勉強が代表例だし、親元を離れて暮らしているから、1人暮しも大変だ。

 しかし、おれの場合は少し違った。

 おれには頼れる親友が3人もいる。それも住んでる部屋も隣同士の幼馴染みの親友だ。一緒に同じRPGゲームでチームを組んでランキングを狙ったりもしたし、おれは一応そのチームのリーダーを任せられてる。

 料理の得意な奴が作った飯をみんなで1つの部屋に集まってテレビを見ながら食べたりもする。

 こんな楽しい生活がいつまでも続くと思っていたが、終わりは早かった。


「もう半年か……」


 住んでいるアパートの近くの道路に花束を置き、手を合わせる。

 半年前、涼太郎がここで死んだ。死因は雷による感電死。

 運が悪かったとしか言いようのない。

 病院へ運ばれたがほぼ即死だったらしく、おれたちはそのころ、学校でやる事をやっていた。

 葬式もあげたし、遺品整理も終わった。

 急な事で頭が追いつかなかったせいか、泣く暇が無かった。当時はただ、ぼーっとしながら、やる事をやっていた。

 年も跨いだが、未だに実感が無い。

 空成は、


「僕らが誰か着いていれば……」


 とずっと後悔していたが、最近は落ち着いた。

 

「そんなの、言い出したらキリが無い。きっとこれがあいつの運命だったんだ」

 

 と湊人に言われてからは、3人とも、そうやってなにかを言うことは無くなった。

 それからは、あの世にいる涼太郎に笑われないように生きる事を目標に頑張っている。

 今日は、実家からの仕送りの日で、お金を下ろしに銀行に来た。

 涼太郎が死んでから、周りが灰色に見えてしまう。

 杖をついた老人も、子供連れの母親も、窓口の人まで、みんなくすんで見える。

 奥のATMからお金を引き出し、帰ろうとしたところで、事は起こった。

 パァン!という耳を貫く大きな音。


「金を詰めろ!」


 それに続く怒声。強盗だ。

 その場にいた人はみんな1カ所に集められて人質にされた。

 無論、おれも例外では無い。


「早くしろ!」


 強盗は、銃で銀行員を脅し、バッグに金を詰めさせている。

 銀行員は、机下のボタンを押そうとしたが、それに気づいた強盗は容赦なく銃を撃った。


「ふざけたマネしてんじゃねぇ!」


 こいつ……人を殺すことに躊躇やためらいが一切ない。

 銃は……リボルバーじゃなくて、オートマチックってことは、海外からの違法ルートか?となると、そうとう計画的にやっているに違いない。

 日本の警察が扱う銃は基本リボルバーなので、警察から盗んだ銃ではないということだ。

 しかし、強盗はかなりイラついて、焦っている様子だ。ちょっとしたことでキレかねない。

 そんなところで、近くの子供が今にも泣き出しそうになっていた。

 親が必死で落ち着かせようとしているが、パッと見、3歳くらいの子供には無理がある。


「うるせえな! 黙らせろ!」


 その声で子供が泣き出してしまった。

 瞬間、銃口が子供を捉える。体が勝手に動き、おれは子供を庇った。

 乾いた2回の銃声音。

 

「グッ……!」


 背中に痛みが走る。

 人質の悲鳴が遠くで聞こえた。意識が朦朧として、まぶたが重くなる。

 しかし、なぜか怖くは無かった。

 子供を庇った自分が誇らしいのか、はたまた、涼太郎のところに行くのが良いのかは分からないが、おれの心は、


「死にたくない」


 よりも、


「連れてくなら一瞬にしてくれよ」


 と思っていた。




 気がつくと、暗い空間だった。

 自分が何をしたのかははっきり覚えているし、自分が何者かもわかる。

 となると、ここはあの世か?

 こんな真っ暗で何もないところがあの世なら、天国を考えた奴は、そうとう頭がイってるな。

 すると、暗闇から女性が現れた。

 

風間かざま しょうさんですね?」


「え、えぇ……」


「私はルーと言います。あなた方の世界でいうところの、神様です」


「は、はぁ……」


 病院では無さそうだし……背中の痛みはないし……死んだのなら割とありそうな話だけど……怪しすぎるだろ。


「まあ、彼と似た反応ですね。前はもっと喜ぶ人もいたのですが……」


「彼?」


「茨 涼太郎さんです。ご存知でしょう?」


「涼太郎が!? 会ったことあるのか!?」


「正確には私ではありません。私の後輩がですが、彼のことは存じていますよ」


 自分の中で信じそうになるが、装っている可能性もあるか……


「まずは色々と説明しなければなりませんね。結論から申し上げると、茨 涼太郎さんは生きています」


「なに!? そんなバカな……」


「もちろん理由があります。彼が死んだ原因の雷、あれは、こちら側の不手際によるものでして、本来、彼はあそこで死ぬはずではありませんでした」


「まてまて、不手際って、あんた何者なんだ?」


「神様です」


 ルーという女性が指を鳴らすと、周りが明るくなり、床や天井が宇宙みたいに星でいっぱいになり、下には青い地球があった。


「信じられるわけが……」


「そうですねー。なんと説明したら良いやら。まず、涼太郎さんは、あなたのいた世界と別の世界、いわゆる、異世界で生きています」


「アニメとかにある、アレか?」


「ええ、というのも、この“世界”というものは、無数にありまして、あなたのいたところもその内の1つです。そうですねー。1本の樹木を想像してみてください。1番太い幹の部分が私たち神の世界で、そこから無数に生えている葉っぱが1つの“世界”なのです」


「じゃあ枝は?」


「枝は、いわば一定数の世界を統括する神様のいるところ、想像しやすくするなら、幹が本社、枝が部署と言ったところでしょうか。あなた方のいた世界の枝には、ゼウスやアマテラスなんかがいますね」


「枝は神話の元になった神様のいるところで、さらにその源流に幹の神様の世界がある……スケールデカいな……」


「我々神にも生活がありますから。そして、我々神は、様々な世界を監視し、お互いが干渉しないようにしているのです」


「じゃあ、たまに聞くタイムトラベラーや、ないはずの硬貨とかも?」


「私たちの監視をすり抜けた別世界の物ですね」


 正直上手いこと乗せられている感じがするけど……この女性以外に人……神様いないしな……


「それで、涼太郎の件は?」


「我々神は、世界を監視しているのですが、その監視の方法は、テレビモニターで見ているだけのパート制でして」


「パート制なのか……」


「はい。その時の担当の神が、モニターしながらコーラを飲もうとしたところ、炭酸が目に入り、モニターに衝突、その影響で、涼太郎さんが死んでしまうという結果になってしまったのです」


「うわぁ……」


「もちろん、彼女は今も罰として始末書三昧ですし、減給なども喰らっています」


「生活ってそんなリアルなのか……」


「神の世界もあなた方とそこら辺はあまり変わりませんから。カフェに行ったり、家で寛いだり」


 おれの中で神というものがゲシュタルト崩壊を起こし始めた。


「それで、生きているっていうのは?」


「涼太郎さんは、こちらの不手際で亡くなったため、その保証として、現在、異世界に転移し、第2の人生を歩んでいます」


「そうなのか……」


「そして、その異世界では、年を越すときに、我々神に1つお願いをするのが風習でして、その際彼は、「翔さんや親友の皆さんにまた会いたい」と願い、やや強引ながら、こうしてお招きしたということです」


「ん? てことはおれが撃たれたのはそっちのやったことなのか?」


「はい。私たちも悩んだのですが、結論として、あなた方を1度殺し、涼太郎さんのいる異世界に転移させることにしました」


「つまり、また会えるのか?」


「はい。もちろんです」


 嬉しいが、両親が心配だ。

 親はこのこと知らないんだからな……正直複雑な気持ちだ。


「でも、後戻り出来ないよな」


「我々が身勝手なのも承知しているのですが、彼が転移するときにあまりにも謙虚だったので、それくらいは叶えなければ保証が足りないだろうという結論にいたり……」


「謙虚って?」


 すると、ルーは1冊の辞書みたいなのを出した。


「転移する世界のルールブックみたいなものです。向こうにはあなた方のゲームのようにステータスがありまして、涼太郎さんは、ぶっ飛んだステータスを設定しなかった。ということです」


 おれはルールブックを読み、向こうの世界についてある程度理解したが、全くあいつらしいな。強くてニューゲームを嫌うところは。


「それで? 涼太郎はどんなスキルで行ったんだ?」


「こちらになります」


 そこには涼太郎のステータスが書かれていて、スキルも記されていた。


「何これ?【隠秘】、【3次元機動】、【魔力探知】、【短剣】、【暗視】、【鍵開け】、【消音】、【俊足】、【気配遮断】って、盗賊かアサシンかよ」


 そこには無法者と言わんばかりのスキルが名を連ねていた。


「常時効果の【俊足】とかはさておき、【気配遮断】って、殺る気に満ち溢れてやがる」


「なんでも、やったことがないキャラ構成だからだと……」


「はぁ……一体どんな生活してんだよ……」


 するとルーは指を鳴らし、おれのステータスの設定の準備をした。


「では、そろそろ始めましょうか」


「分かった」


 そうしておれは自分のステータスを設定し、持っていくものを決め、準備を済ませた。


「では、これでよろしいですか?」


「あぁ。これくらいがちょうどいい」


「分かりました。では、今から転移させます」


 すると、足元に魔法陣が浮かび、光出した。


「あ! そうだ! 1つ頼んでいいか?」


「なんでしょう?」


「そのコーラ飲もうとした神、1発殴っといてくれ」


 するとルーはニコッと笑った。


「えぇ、承りました」


 そして、魔法陣がさらに光り、目の前が真っ白になった。



次回、第2の男の第2の人生

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