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ゲーマー4人組  作者: 鬼雨
大和魂は異世界受けする
33/45

奇跡は起こる時は起こる。

前回学んだこと

ドラゴンの首は意外と伸びる




 そんなつもりはなかった。

 私はただ、ロボルさんのやられた分を返すだけのつもりだった。

 しかし、ドラゴンは私を標的にした。すると、恐怖で体が硬直して、動けなくなった。蛇に睨まれたカエルの気分だった。

 次の瞬間、体が曲がり、宙を舞う。

 お腹に来る痛み、そして着地したときのショックで我に帰った。

 そして私は、その瞬間を見てしまった。

 大好きな人が、食べられる瞬間を。


「あ……あ……あ…」


 何も考えられなくなった。

 私のせいで彼が死んだ。私が彼を殺した。 

 声も出なくなった。現実を認めたくなかった。

 私はその場で動けなくなり、ただその後を見ていることしか出来なかった。

 

「グォォォォォォ!」


 少しして、ドラゴンが苦しみ出した。

 すると、みるみるうちにドラゴンの大きな体が痩せていき、ついに倒れた。

 周りは歓喜の渦に満ちた。

 私を除いて……

 私はそのまま意識を手放してしまった。



「一体何をしたらこんなことになるの!?」


 それは俺が聞きたい。

 リョウタロウが食べられたと思ったら、ドラゴンが倒れて、腹の中から真っ赤に染まったリョウタロウが出てきて……俺のトカゲ脳でも処理が追いつかない。

 俺はリョウタロウを引っこ抜き、大急ぎで教会に向かった。

 教会のシスターに大急ぎで治療してもらう。


「全身火傷に、右足に風穴って……」


 次の瞬間リョウタロウが何かを吐き出した。治療をするシスター達が悲鳴を上げる。

 吐き出したものから少し煙が上がっている。

 

「中まで焼けてるの!?」


 それからは席を外すように言われて見ていないから分からないが、今日の中で1番の重傷であることは分かった。




 だんだんと意識がはっきりしてくる。

 ゆっくりと目を開けると、知らない天井がそこにはあった。

 少し体を動かすと、全身に痛みが走った。

 その上、まともに身動きが出来ないほどに包帯で巻かれている。

 俺は……生きているのか?まあ、痛いんだから生きてるんだろうけど……

 少しずつ、記憶が蘇ってくる。

 食べられたこと、誰かに起こされたこと、ドラゴンを“喰った”こと……

 

「目が覚めた?」


 視線をずらすと、1人の修道女がいた。


「体動かさないで。まだ治ってないから。あたしカルメン。あんたのことはエヴリーヌから聞いてるから安心して」


 「あいつの知り合いなのか?」と、聞こうとしたが、口も動かない。舌が辛うじて動くくらいだ。

 俺は生き残った。名も知らない“友達”のお陰で。




 目が覚めてからしばらく経ち、包帯も少しづつ取れ、上半身は大分良くなった。

 喋れるし、体を起こせる。

 それまではひたすらじっとしているだけだったから、素直に嬉しいな。

 しかしまだ下半身はダメだ。

 聞いた話だと、右の太腿に風穴が空いていたらしい。ドラゴンに噛みつかれたときのものだろう。噛み合わせが悪かったせいで、千切れなかったのだ。お陰で食べられてしまった。

 しかし、足に穴が空いても治せるって魔法凄いな。触るとまだ痛むが、穴は塞がっているのが分かる。

 さらに、腹の中まで火傷していたらしい。

 なんでも、食べられた際にドラゴンの強烈な胃酸を大量に飲んだらしい。搬送された時に吐き出したが、口から胃まで結構爛れていたらしく、もう少し遅かったら死んでいたと言われた。

 なんでも、魔法で防護されていたから、そこまで深刻ではなかったようだ。

 きっと、あの“友達”がやってくれたのだろう。

 それはそれとして、先日、みんなが面会に来た。みんな無事だったらしく、怪我をしたのは俺だけらしい。

 蹴り飛ばしたことをディアナに謝ろうと思っていたが、まだ面会には1度も来ていない。


「リョウタロウが怪我したことの責任を感じているんだ」


 エヴリーヌから話を聞いて分かった。きっと、俺がこうなったのを自分のせいにしているんだろう。

 1度ゆっくり話さないとな。

 こうなったのは俺の甘さが原因だ。彼女は悪くない。

 しかし、みんなが無事だったこととか、良いニュースばかりでもなく、悪いニュースもあった。

 実は、あの襲撃で、新築の家が半壊したらしい。

 とりあえず、家具も何も入れる前だったから良かったが、建て直すのにしばらくかかるらしい。

 というのも、他に直さなきゃならないものがいっぱいあるからだ。

 

 


 さらに日にちは経って、松葉杖で歩けるようになり、今はリハビリ中だ。

 魔法のお陰で完全に回復できそうだ。

 エヴリーヌが口利きしてくれて、カルメンが付きっきりで見てくれている。

 彼女は、エヴリーヌの学校での友人で、カミラとよく3人で連んでいたらしい。

 そして、一時的に小鹿亭への帰宅が許された。


「ただいま〜」


『お帰りー!』


 なんだかすごく久しぶりな感じだ。しかし、ディアナの姿が見えない。


「部屋に篭ってるんだ」


 フェリクスに言われて、ディアナの部屋に行く。


「入るぞ」


 ディアナはベッドで蹲っていた。

 俺は、ディアナの横に座った。


「前みたいにお迎えしてくれないんだな」


「私には……そんな資格……」


「気にするな。怪我したのは俺だからな。俺が甘かったんだ。それより、お腹大丈夫だったか? 結構強めに蹴って、悪かったな」


「そんなことよりも!」


 起き上がったディアナの目には涙が浮かんでいた。


「確かに、感情的になって、突っ込んだのは悪い。でも、そこから助けて怪我したのは俺の自己責任だ。お前のせいじゃない」


「でも……」


「結果的に倒せたんだから良いだろ。そうでなくちゃ、もっと被害が出てたかもしれないし」


「ごめんなさい……」


 ディアナは鼻をすすりながら、涙声で謝った。


「謝られてもなぁ……」


 すると、ディアナが俺に抱きついてきた。

 もう抑えられないのだろう。

 ディアナは声を上げて泣き出した。


「よしよし。怖かったな」


 どうして良いか分からず、親戚の子供をあやすみたいに頭を撫でる。

 すると、より一層大声で泣き出した。


「どうすりゃいいんだよ……」


誰だって心底怖い時は泣いていいんだ。

大人は泣いちゃダメなんて法律はどこの世界にもないんだからな。


 

次回、ドラゴン族

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