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ゲーマー4人組  作者: 鬼雨
大和魂は異世界受けする
20/45

異世界にも隠れた名店はある。

前回学んだこと

ディアナに酒はダメだ。




 ディアナの酔っ払い事件の翌日、案の定、女性2人は2日酔いでダウンした。


「うぅ……」


「あ、頭がぁ……」


 ディアナの酒癖は知らなかったので、意外性抜群だったが、エヴリーヌさ、国の王女が酒に対して考えが甘いってどうなのよ?

 

「リョウタロウ、俺が2人を見ておくから、お前は用事行ってこい」


「いいのか?」


「勿論。そのためにこの街に来たんだろ?」


 フェリクスは相変わらず大人だ。

 2日酔いバカ2人をフェリクスに任せ、俺はロボルと共に、ドワーフの街に出た。

 しかし、ドワーフは酒にも強いんだな。

 朝から店先で飲んでるやつもいれば、昨日から飲んでるやつも居る。

 それはそうと、鍛冶屋だ。

 この牙を良く加工してくれる鍛冶屋を探さなきゃならない。

 実は、フベルトからある程度情報は仕入れている。

 なんでも、このドワーフの街で、かつて1番の腕を持つと言われていた人で、名前はヨルクというらしい。

 しかし、彼はある時、突然、鍛冶をしなくなったらしい。街にはいるらしいので、練り歩いて探してみる。

 ドワーフの街の中でも、鍛冶屋が固まっている所と、住宅街が固まっている所と、ある程度分かれているため、探す範囲はそこまで広くはない。


 1時間ほど経っただろうか。ようやく目当ての場所を見つけた。

 そこは、鍛冶屋の区画の中でも、かなり端っこの方で、ひっそりと存在していた。


「ごめんくださーい」


 中に入ってみると、外見通り、中も質素というか、こじんまりしている。


「はいはい。どちら様かな?」


 すると、おくから髭の多い老人が出てきた。


「あなたが、ヨルクさん?」


「いかにも。それを聞くということは、貴方の目的は鍛治の依頼かな?」


「え、えぇ」


「済まないが、ワシはもう歳でね。とても鍛冶が出来る体では無いんじゃ」


 なるほど、年老いてしまったということか。それならば仕方ないな。

 お年寄りは労わる。

 両親からの教えだ。


「じゃあ、変わりと言ってはあれだけど、こいつを上手く扱えるところを紹介してくれないか?」


 そう言って俺は、ロボルの親の牙を見せた。

 かつては街1番の鍛冶屋だったのだから、それくらいは知っていると思った。


「これは……どこで?」


「え……あぁ、こいつの親のものでな。残ったのがそれだけだったんだ」


 そう言ってロボルを抱える。

 って重っ!いつの間にこんな重くなったんだ!?この間まで普通に抱っこ出来たぞ!?


「そうですか……これは、かなり多くの記憶を持っている……」


「分かるんですか?」


「えぇ。長年鍛冶をやっていると、その分多くの素材に出会いましたから。しかし、これはワシの人生でも1番の上物かもしれませんなぁ……」


 ヨルクさんは、牙を撫でながら、牙から何かを感じ取っているようだった。


「こちらからお願いするのも失礼かもしれませんが。この牙、うちで扱わせてくれないでしょうか?」


「え?しかし、鍛冶は……もう……」


「ええ、ですから私ではなく、私の弟子に、作らせては貰えないでしょうか」


 そういうと、ヨルクさんは、奥の方に声をかけた。すると、1人の少女が出てきた。

 ヨルクさんと同じドワーフの少女だ。彼女は出てきて、こちらに一礼した。

 鍛治仕事をしているのか、体は煤で汚れていたりするが、それだけ精進しているということなのだろう。


「コリンナ、挨拶しなさい」


「はい。コリンナです。よ、よろしくお願いします」


「この子に、これを使わせて欲しいのです。勿論、腕は保証します。私の最初で最後の弟子ですから」


「お師匠様、まだ、私は……」


 ヨルクさんはこう言っているが、当の本人は、あまり賛成ではないらしい。


「教えることは全て教えた。あとは、コリンナが自分を認めるだけじゃよ」


「っ……」


 なるほど、腕はあるが自信がないと言うわけか。


「わかりました。これをお預けします」


「え?」


「そうですか。ありがとうございます」


 俺の言葉にコリンナは戸惑った。


「待ってください。私は、まだ……」


「昔街1番と言われたヨルクさんの弟子なんだろう?それなら安心して預けられる」


 俺はコリンナに牙を渡した。


「だから、これを頼む」


 コリンナは戸惑って、ヨルクさんの方を向いた。

 ヨルクさんは、そんなコリンナに向かって、ただ、何も言わずに頷いた。

 それで、コリンナも決心したようだ。


「わかりました。全力で作らせていただきます!」


 その後、俺と、ヨルクさん、コリンナの3人で、どんなものを作るかを考え、ある程度のイメージが出来た。

 その後、コリンナは牙を持って鍛冶場へ持っていき、作業に入った。


「最初で最後の弟子だから。ですか」


 俺はヨルクさんに聞いた。


「えぇ、実は、コリンナには、両親がいないんです。早くに亡くしていて。それで、友人だった私が引き取ると、私の鍛治仕事に興味を持ちましてね。丁度引退を考えていたので、ここに移って、コリンナに鍛冶を教えたんです。あぁ、見えて、もう23なんですよ?」


「え!?同い年くらいかと……」


 俺今17だぞ……6歳も違うのか……


「ハッハッハ。ドワーフとはそういうものなのですよ。それに、あんまり世の中を知らずに生きてきましたから。少し内気な性格でしてね」


 そんな話をして、その日は終わった。

 完成には、しばらくかかるらしく、泊まっている宿を教え、完成したら呼んでもらうことにした。

 あの牙が、どんな武器になるか楽しみだ。ある程度のイメージを決めたとはいえ、どうなるかは分からない。なんだかドキドキする。


今日、ヨルクさんに出会って、どんな生き物も、老いには勝てないのだと、改めて思った。

ロボルの親は、一体幾つだったのだろうか。

……考えるのやめよう









次回、試し斬り

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